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あばよ! ですわ!1
しおりを挟む貴族では情報戦が基本だ。
流行、名産、婚姻、事業、様々な情報を救い上げて資金の大きな流れを作り出す。
うちの領地は高級食材と素材の宝庫だから、あんまり商売にはガツガツしていない。
この前、アビスボア(高級黒魔猪)の角煮はとても好評だったわ。スタミナ満点! コラーゲンたっぷり! ちょっと体が大きくて角が長い以外は普通の猪なのよね。
ローゼス様は「それ……騎士たちが一生に一度は倒してみたい魔物」と泣きながら食べていた。
大袈裟な。泣くほどおいしかったのかしら?
「婿入りする家なので、少々調べましたが二重戸籍なんですよ。ルビアナとタチアナ、そしてそのセシリアは。
マルベリーとしての戸籍の正統性も疑わしく、他領地も関わっている為に調査に時間が掛かりました。
ルビアナはダニエルと結婚する前にすでにモーリッツ男爵と結婚をしています。そしてモーリッツ男爵と婚姻関係が続いており、ダニエルと重婚している形となっています。
タチアナは十中八九、時期的にモーリッツ男爵の娘。セシリアが生まれた当時は、複数の男性と関係を持っていたようですので定かではありませんが……
それはまあ、領主であり当主としての権利を悪用したダニエルにも責任はありますが、のうのうと血の繋がらないタチアナとセシリアを養って溺愛しているあたり本当の胤が誰も知らないのでしょう」
二重戸籍で、しかも偽造戸籍。ルビアナの虚偽が大きな原因だろうけど……
ということは、マルベリーとしての戸籍はハナから嘘だったってことか。へー。
本当の戸籍はモーリッツ男爵のところ、マルベリー家としてのものは偽造戸籍の婚姻と嫡子認定ですものね。
ハルステッドの戸籍は領主や集落を取りまとめる長の申請により作成される。
ただ、平民の戸籍は貴族程きっちり管理されていないのよね。
もしルビアナがモーリッツ家とのことを黙っていて、うちの糞親父が未整備戸籍だと思って作って貴族の妻として召し上げたのならそういうことが起きる。
養女にするにもクロード様の口ぶりから、糞親父は既にマルベリー伯爵当主としての権限を振るうのは難しそう。
「う、嘘よ! 私は貴族よ! 平民じゃないわ! 伯爵家の娘よ!」
真っ青のセシリアは必死に否定する。
いや、クロード様もいってるけどうちの糞親父入り婿だし。
だけれど、クロードは聞き分けのない駄犬を見るような目でため息をついた。
「貴女はエチェカリーナ様の娘ではない以上、マルベリー伯爵家を名乗る資格はありません。
奇跡が起こってぎりぎりダニエルの実家である子爵の姓は名乗れるかもしれませんが、今までの狼藉を水に流す条件は貴族籍の剥奪。
貴族を名乗ればベアトリーゼが必死に取り成した恩赦が取り消され、制裁を食らいますよ。
恐らく、モーリッツ男爵も失踪したルビアナも、ぎりぎり娘かもしれないタチアナも、どこの胤とも知れない貴女も庇い養う気はないでしょう。
私だって、散々妻となる婚約者を蔑ろにしていた泥棒達と住む気などありません」
「お父様がいるわ! お父様はまだマルベリー伯爵だもの!」
「ええ、ですがそれはベアトリーゼが成人するまでです。さっきも言ったでしょう。
ベアトリーゼはもう十八になっていますので、ダニエルは爵位を彼女かその伴侶に譲らなければなりません。
それまでの期限付きの爵位なのですから。
もう少し仕事が減れば、もっと早く私が爵位を継いで追い出したのですが……
貴女がたの埃が多すぎて、こんなにも時間が経ってしまった」
どんだけやらかし多かったんだ、糞親父たちは。
私も使用人たちと色々根回ししてたけどさ……きっとクロード様はもっと広範囲にわたって調べていたのだろう。
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