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魔王の言い分

魔王と執事と人質と酒。3

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「僕からも質問していい?」

サイファは指を一本立てる。綺麗な指してるなぁ。

「なに」

「レミィちゃんはどうして勇者じゃダメなの?」

「一回ちゃんと恋愛してみたい。恋愛結婚に憧れてるの」

「うあぁ。ずいぶんと可愛い理由が出てきちゃったなぁ。きゅんきゅんする~」

耽美な顔とエロボイスできゅんきゅん言うな。


「答えになってない。恋愛対象外の理由を聞いているんだろ」

刺すような口調でフェンリルが言う。

しかしこれを言うのは悪口みたいで嫌だなぁ。悪口にならない言い方、ないかな。


「……ハルは情けないんだけど、やればできる。だけど、最後に手を抜くっていうか、詰めの甘いところがあるのよね。性格が優しいからかな。じゃあなんでも言うこと聞くのかっていうと、変なところ頑固だし。難しいんだ」


これが私の幼馴染に対する総評だ。

それに加えて、たびたび私の邪魔をされている気がする。

あの日だって、こっちに最後までリードさせた挙句、やめろと言っても最後の最後に中へ……いや、これは具体的に思い出すのをやめよう。ちゃんと生理も来たのだ。

ただ、あのときに子供ができていたら……ドライには割りきれないだろう。

何よりも問題なのは、こういうところだ。


「「あー……」」

反応が重なった。

魔王軍と戦っていてもそうなのか。最前線だと格好よく見えるものなのかもな。


フェンリルはぐっと身を乗り出す。

「そういうところも含めてお前ならコントロールできるはずだ。だから嫁になってやれ。きっとうまくいくぞ。な?」

「やだ!」

「わがまま言うなよ。そんなお花畑なこと言ってなぁ、夢から覚めたときに悲惨だぞ。慣れ親しんだ相手の方が安心だって」

間に挟まれたサイファは腕を組んで、苦虫を噛み潰したように曖昧に笑った。

「いやぁ……我が友、我が執事ながら、クッッッソつまらないこと言うね……君だってまだ未婚のくせに」

「俺は独身主義だ」

魔王様を見るフェンリルの視線は、まるで『お前のせいだよ』と言っているようだった。

好きになった子、みんな持ってかれちゃったんだろうな……。

残念なことに、多分、サイファは特に悪気とかない。まさに魔王。
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