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勇者と再会
勇者と対面。3
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「やめてやれ!!」
フェンリルが割って入ってくれた。後ろから私の手と腰を掴んで、べりっと引きはがす。そのまま抱きめられるみたいに取り押さえられた。
あ、これいい……あとはフェンリルがなんとかしてくれるだろうし、怒るのやめよ……。
「連れがポカンとしてるだろ!少しはしおらしくしろ!」
言われてみると、勇者のハーレム要員は私たちのやり取りをポカンとして見ていた。
……というには、いささか憎しみが織り混ぜられているけれど。それだけハルは道中まともだったということだ。
「お前……レミィに気安くベタベタするな!これは俺たちのコミュニケーションなんだよ!」
ハルが私の腰に回るフェンリルの腕を掴んだ。サンドイッチされてしまった。さすがに暑苦しい。
「そんな歪んだコミュニケーションがあるか!だからお前は俺に余計なこと言われるんだ!」
本当にな!大きく頷く。
しかしこの二人、微妙に精神の次元、近くない……?言い合いのレベルが対等というか。
ううーん……性格が似てるとは思わないけど、男の子をハル基準で選んでいる部分はあったのかもしれない……。
「そんな暴力女のどこがいいんですか!?魔王に抱かれた不潔な女のどこがっ!」
「そうだ!魔王様が狙って落とせなかった女はいない!諦めろ!その女の気持ちは魔王様のものだ!」
名前のわかんない金髪美女と、ヘルイーズがハルを説得しようと声を張り上げた。
……まあ、普通に考えたらそうなるだろうな。
「くっくっく……」と、サイファはなぜか悪役の忍び笑いをこぼす。
「皆様、買い被りすぎです。今回ばかりは惚れた上に落とせなかった。惨敗でした」
「えっ!?」
ヘルイーズがマジで驚いてた。私を見る目から敵意が引いていく。軽い女への軽蔑もあったのだろう。
「……本当に寝取ってないのか?」
ハルも『標的は魔王』と思い込んでいたのだろう。
「はい。彼女との友情に誓い、この身の潔白を証明します」
胸に手を当てて頬笑むサイファ。
確かにものすごく友情は感じている。でも、胡散臭ぇ~!端から見たら言い訳にしか見えねぇ~!顔とオーラが悪い!
「ヘルちゃんは勇者の女というだけで俄然燃えるタイプだって言ってたぞ……抱いてからポイ捨てするクズだって……」
「ヘル、僕のことなんだと思ってるの?」
素を出すな。
ヘルイーズがそっと視線をそらした。
もしかすると、仕事上は認めているけど人間性は嫌いとか、そういうことなのかも。
「会ってみてやっぱり、そういう顔してた……くそっ、レミィは顔のいい男に弱いんだよ!お前なんかに……!」
魔王の信頼性のなさ故か、ハルは腰の剣に手をかける。フェンリルがスッと動き出すのが見えた。
「待て待て待て!」
私は慌ててハルの前に飛び出した。
無意味に暴力沙汰にしたくない。何よりも私の言うことはきちんと聞いてくれるのだ。最終的には自分に都合のいい解釈になるけど。
「そもそも!私はハルの婚約者じゃない!寝取るもなにもないんだけど!」
「えっ」
金髪の美女がぎょっとして口を押さえた。度ごとにのろけていると聞いていたから、ばっちり刷り込まれていたのだろうな……。
「なんでハルはそんな嘘をついたの?」
詰め寄って見上げると、ハルの視線がそれた。後ろめたさはあるみたいで、大きな目が少し曇る。ごまかすような曖昧な笑みが浮かんだ。
「嘘なんて……レミィが俺以外と結婚し辛くなるかな~って」
フェンリルは「クズだ!こいつクズだ!」とドン引きしていた。完全に素に戻っていた。
フェンリルが割って入ってくれた。後ろから私の手と腰を掴んで、べりっと引きはがす。そのまま抱きめられるみたいに取り押さえられた。
あ、これいい……あとはフェンリルがなんとかしてくれるだろうし、怒るのやめよ……。
「連れがポカンとしてるだろ!少しはしおらしくしろ!」
言われてみると、勇者のハーレム要員は私たちのやり取りをポカンとして見ていた。
……というには、いささか憎しみが織り混ぜられているけれど。それだけハルは道中まともだったということだ。
「お前……レミィに気安くベタベタするな!これは俺たちのコミュニケーションなんだよ!」
ハルが私の腰に回るフェンリルの腕を掴んだ。サンドイッチされてしまった。さすがに暑苦しい。
「そんな歪んだコミュニケーションがあるか!だからお前は俺に余計なこと言われるんだ!」
本当にな!大きく頷く。
しかしこの二人、微妙に精神の次元、近くない……?言い合いのレベルが対等というか。
ううーん……性格が似てるとは思わないけど、男の子をハル基準で選んでいる部分はあったのかもしれない……。
「そんな暴力女のどこがいいんですか!?魔王に抱かれた不潔な女のどこがっ!」
「そうだ!魔王様が狙って落とせなかった女はいない!諦めろ!その女の気持ちは魔王様のものだ!」
名前のわかんない金髪美女と、ヘルイーズがハルを説得しようと声を張り上げた。
……まあ、普通に考えたらそうなるだろうな。
「くっくっく……」と、サイファはなぜか悪役の忍び笑いをこぼす。
「皆様、買い被りすぎです。今回ばかりは惚れた上に落とせなかった。惨敗でした」
「えっ!?」
ヘルイーズがマジで驚いてた。私を見る目から敵意が引いていく。軽い女への軽蔑もあったのだろう。
「……本当に寝取ってないのか?」
ハルも『標的は魔王』と思い込んでいたのだろう。
「はい。彼女との友情に誓い、この身の潔白を証明します」
胸に手を当てて頬笑むサイファ。
確かにものすごく友情は感じている。でも、胡散臭ぇ~!端から見たら言い訳にしか見えねぇ~!顔とオーラが悪い!
「ヘルちゃんは勇者の女というだけで俄然燃えるタイプだって言ってたぞ……抱いてからポイ捨てするクズだって……」
「ヘル、僕のことなんだと思ってるの?」
素を出すな。
ヘルイーズがそっと視線をそらした。
もしかすると、仕事上は認めているけど人間性は嫌いとか、そういうことなのかも。
「会ってみてやっぱり、そういう顔してた……くそっ、レミィは顔のいい男に弱いんだよ!お前なんかに……!」
魔王の信頼性のなさ故か、ハルは腰の剣に手をかける。フェンリルがスッと動き出すのが見えた。
「待て待て待て!」
私は慌ててハルの前に飛び出した。
無意味に暴力沙汰にしたくない。何よりも私の言うことはきちんと聞いてくれるのだ。最終的には自分に都合のいい解釈になるけど。
「そもそも!私はハルの婚約者じゃない!寝取るもなにもないんだけど!」
「えっ」
金髪の美女がぎょっとして口を押さえた。度ごとにのろけていると聞いていたから、ばっちり刷り込まれていたのだろうな……。
「なんでハルはそんな嘘をついたの?」
詰め寄って見上げると、ハルの視線がそれた。後ろめたさはあるみたいで、大きな目が少し曇る。ごまかすような曖昧な笑みが浮かんだ。
「嘘なんて……レミィが俺以外と結婚し辛くなるかな~って」
フェンリルは「クズだ!こいつクズだ!」とドン引きしていた。完全に素に戻っていた。
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