婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ

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第15話 王宮の異変

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第15話 王宮の異変

王宮。

いつもなら朝から活気に満ちているはずの場所だった。

貴族の馬車。

商人の使者。

役人たちの行き来。

だが今日の空気は違う。

どこか重い。

ざわついている。

財務局の廊下を、数人の役人が慌てて走っていた。

「まだ届かないのか!」

「来ていません!」

「どうなっている!」

扉が開き、財務卿ラドフォードが怒鳴る。

「報告!」

若い役人が震える声で言った。

「王都税収の送金が」

「届いておりません」

ラドフォードの眉が吊り上がる。

「遅延か?」

役人は首を振る。

「違います」

「送金そのものが」

「停止されています」

沈黙。

ラドフォードの顔色が変わる。

「……誰が止めた」

役人は答える。

「ヴァレリオン銀行です」

部屋の空気が凍る。

ラドフォードは椅子に手をついた。

「まさか」

別の役人が言う。

「それだけではありません」

「軍の装備発注も」

「支払いが停止されました」

ラドフォードが顔を上げる。

「軍も?」

役人は頷く。

「兵糧の納入も止まっています」

ラドフォードの額に汗が滲む。

これは。

単なる銀行問題ではない。

王国の血流。

それが止まり始めている。

その頃。

王太子の執務室。

ユリウス王太子は椅子に座り、退屈そうに足を組んでいた。

向かいにはヴァネッサ。

そしてヴェルナー伯爵。

二人とも顔色が悪い。

王太子は苛立っていた。

「だから」

「銀行が何だと言うんだ」

ヴェルナーは必死だった。

「殿下」

「王都の流通が止まり始めています」

王太子は笑った。

「大げさだ」

ヴァネッサが言う。

「本当です」

「我が家の口座も凍結されました」

王太子は眉をひそめる。

「誰がそんなことを」

ヴェルナーが言った。

「カリスタです」

王太子の表情が一瞬止まる。

「……あの女か」

そして鼻で笑った。

「ただの公爵令嬢だろう」

ヴェルナーは声を荒げる。

「違います!」

「ヴァレリオン家です!」

王太子は肩をすくめた。

「公爵家なら王家の臣下だ」

「命令すればいい」

その時。

扉が勢いよく開いた。

近衛兵が慌てて入る。

「殿下!」

王太子は顔をしかめる。

「何だ」

近衛兵は言う。

「財務卿が至急面会を求めております」

王太子は面倒そうに言った。

「後にしろ」

近衛兵は首を振る。

「緊急です」

王太子は舌打ちした。

「入れろ」

すぐにラドフォード財務卿が入ってくる。

息が荒い。

王太子は呆れたように言う。

「朝から騒がしいな」

ラドフォードは一礼した。

「殿下」

「非常事態です」

王太子は笑う。

「また金の話か」

ラドフォードは真剣だった。

「王家の口座が」

一瞬、言葉を止める。

そして。

「凍結されました」

部屋が静まり返る。

王太子はゆっくり言う。

「……誰が」

ラドフォードは答えた。

「ヴァレリオン銀行です」

ヴェルナーが顔を覆う。

ヴァネッサは震える。

王太子はしばらく黙っていた。

そして。

ゆっくり笑う。

「面白い」

ラドフォードは驚く。

王太子は立ち上がった。

「なら呼べ」

「カリスタ・ヴァレリオンを」

その目は怒っていた。

「王家に逆らった代償を」

「教えてやる」

その時だった。

執務室の外が騒がしくなる。

扉が再び開く。

近衛兵が青ざめていた。

「殿下……!」

王太子は苛立つ。

「今度は何だ」

近衛兵は言う。

「ヴァレリオン公爵家の使者が」

「王宮に到着しました」

王太子は笑った。

「ちょうどいい」

「呼びつける手間が省けた」

だが。

近衛兵は言葉を続ける。

「それと」

一瞬、躊躇う。

「……帝国の皇太子殿下も」

王太子の笑顔が止まった。

「……何?」

近衛兵は言う。

「アルヴァルド皇太子が」

「同行しております」

部屋の空気が。

一瞬で変わった。
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