婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ

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第19話 消える信用

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第19話 消える信用

王都の金融街。

朝から銀行の前には人の列ができていた。

貴族。

商人。

地主。

皆、同じ顔をしている。

不安。

恐怖。

苛立ち。

扉が開き、銀行員が外に出る。

「本日の現金引き出しは終了しました」

ざわめきが起きた。

「まだ昼だぞ!」

「金がないのか!」

銀行員は困った顔をする。

「現金輸送が止まっています」

人々が騒ぎ始める。

「どこが止めてる!」

誰かが言う。

「ヴァレリオンだ」

一瞬で静かになった。

ヴァレリオン銀行。

王国最大の銀行。

つまり。

王国の信用の中心だった。

もしその銀行が動かなければ。

他の銀行も動けない。

なぜなら。

ヴァレリオン銀行が。

他の銀行の資金源だからだ。

人々は理解し始めていた。

これはただの銀行問題ではない。

王国の信用そのものが揺らいでいる。

その頃。

王宮。

財務局。

ラドフォード財務卿は机に手をついていた。

「地方銀行は?」

役人が答える。

「王都への送金停止」

「すべてです」

ラドフォードは目を閉じる。

「理由は」

役人は言う。

「ヴァレリオン銀行が」

「王家への信用保証を停止」

部屋が静まり返る。

それはつまり。

王家に金を貸す銀行が。

消えたということだった。

ラドフォードは呟く。

「国家信用が」

「崩れている」

その頃。

王太子の執務室。

ユリウス王太子は怒りで顔を赤くしていた。

「商人ごときが!」

机を叩く。

「王家に逆らうとは!」

ラドフォードは疲れた声で言う。

「商人ではありません」

王太子が睨む。

「何だ」

ラドフォードは言った。

「王国最大の経済家です」

王太子は鼻で笑う。

「だから何だ」

ラドフォードは静かに答える。

「王国の信用は」

「ヴァレリオン家の信用で成り立っています」

沈黙。

王太子は言葉を失う。

それは。

誰も口に出さなかった事実だった。

王国の借金。

軍の支払い。

商人の信用保証。

地方銀行の清算。

その中心は。

ヴァレリオン銀行。

つまり。

カリスタの家だった。

王太子は歯を食いしばる。

「なら」

「交渉すればいい」

ラドフォードは言う。

「謝罪が条件です」

王太子は怒鳴る。

「断る!」

その時。

扉が開く。

近衛兵が入ってきた。

「報告!」

王太子は苛立つ。

「また何だ」

近衛兵は言う。

「北部貴族会議より書状」

ラドフォードが受け取る。

読みながら顔色が変わる。

王太子が聞く。

「何だ」

ラドフォードは言った。

「北部貴族が」

「王家への貸付停止を決定」

王太子は驚く。

「なぜだ」

ラドフォードは答える。

「ヴァレリオン家の信用保証が」

「なくなったため」

沈黙。

つまり。

ヴァレリオン家が保証しない王家には。

誰も金を貸さない。

王太子はついに理解し始めた。

これは。

銀行との争いではない。

王国の信用戦争だ。

その頃。

ヴァレリオン公爵邸。

書斎。

カリスタは書類を眺めていた。

グレイが言う。

「地方銀行」

「すべて連鎖停止しました」

カリスタは頷く。

「当然ね」

グレイは続ける。

「王家の国債」

「価格が半分になりました」

カリスタは紅茶を飲む。

「まだ半日よ」

グレイは少し驚く。

「半日で」

カリスタは言う。

「信用は」

「壊れるのは一瞬」

そして窓の外を見る。

王都の遠く。

銀行街。

長い行列。

人々のざわめき。

恐怖。

カリスタは静かに言った。

「もうすぐ」

グレイが聞く。

「何がです」

カリスタは答えた。

「王太子が」

「謝りに来るわ」

その声は穏やかだった。

だが。

王国の未来は。

その一言にかかっていた。
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