婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ

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第26話 敗北した王太子

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第26話 敗北した王太子

王宮。

王太子の私室。

窓から王都が見える。

煙は消えていた。

市場も。

港も。

すべて元に戻っている。

だが。

ユリウス王太子の心は落ち着かなかった。

机の上には一枚の紙。

謝罪文の写し。

彼はそれを睨んでいた。

「……」

拳が震える。

扉がノックされる。

「入れ」

財務卿ラドフォードが入ってきた。

一礼する。

「殿下」

王太子は振り向かない。

「終わったのか」

ラドフォードは答える。

「すべて正常化しました」

王太子は小さく笑った。

「見事だな」

皮肉だった。

ラドフォードは黙る。

王太子は窓の外を見る。

「市場」

「銀行」

「港」

「全部あの女か」

ラドフォードは静かに答える。

「正確には」

「ヴァレリオン家です」

王太子は言う。

「同じだ」

沈黙。

ラドフォードは少し迷った。

だが。

言う。

「殿下」

王太子は答えない。

ラドフォードは続けた。

「政治は」

「感情ではありません」

王太子は振り向く。

その目は鋭い。

「説教か」

ラドフォードは首を振る。

「事実です」

王太子は机に手をついた。

「私は王太子だ」

ラドフォードは答える。

「はい」

王太子は言う。

「だが」

少し笑う。

「昨日」

「国を止められた」

沈黙。

ラドフォードは否定しない。

王太子はゆっくり言った。

「一人の女に」

ラドフォードは言う。

「違います」

王太子が睨む。

ラドフォードは続けた。

「契約です」

王太子は苦笑する。

「またそれか」

ラドフォードは頷く。

「王国は」

「契約で動いています」

王太子は窓の外を見る。

遠くにヴァレリオン公爵邸の塔が見える。

「……カリスタ」

その名を小さく呟く。

ラドフォードは言った。

「婚約は」

「復活しました」

王太子は笑った。

「復活?」

「形だけだ」

ラドフォードは黙る。

王太子は続けた。

「彼女は」

「私を信用していない」

ラドフォードは答える。

「当然です」

王太子は少し笑った。

「正直だな」

そして。

ゆっくり椅子に座る。

「だが」

ラドフォードが聞く。

「何でしょう」

王太子は言った。

「私は」

「負けた」

沈黙。

ラドフォードは言う。

「国家は守られました」

王太子は首を振る。

「違う」

そして。

静かに言った。

「私は」

「政治で敗北した」

その言葉は重かった。

ラドフォードは何も言えない。

王太子は窓を見た。

王都。

動き続ける街。

昨日。

止まった街。

そして。

それを止めた少女。

王太子は呟いた。

「……恐ろしい女だ」

その時。

扉がノックされる。

「殿下」

近衛兵の声。

王太子は言う。

「何だ」

近衛兵は答えた。

「ヴァレリオン公爵令嬢が」

「謁見を求めています」

王太子は一瞬黙る。

そして。

小さく笑った。

「来たか」

ラドフォードが驚く。

「今ですか」

王太子は言う。

「当然だ」

そして。

立ち上がる。

「戦争の後は」

少し笑う。

「交渉だ」
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