石を売る女の意思 ――後にダイヤモンドクイーンと呼ばれる女の威信――

「それは石ころだ。価値などない」

貴族貴婦人御用達のアクセサリーショップを営む侯爵令嬢ジェニュイン・オーセンティックは、
婚約者フォージェリから突如、詐欺師呼ばわりされ、公開の場で婚約破棄を突きつけられる。
理由はただ一つ――
彼女が“河原で拾った石”をガラスとして売っているというものだった。

だが、それは無知ゆえの断罪に過ぎなかった。
ジェニュインが売っていたのは、審美眼を持つ者にしか見抜けない天然ガラス。
鑑定によって事実が明らかになった時、恥をかいたのは彼女ではなく、彼女を嘲笑した側だった。

やがてジェニュインは「ただの石」を正直に売り始める。
宝石ではない、だが確かに希少で美しい石。
説明も誇張もせず、価値を偽らずに売り続けた結果、
見くびっていた者たちは次々と“選ばれない側”へと転落していく。

そして彼女は気づく。
この世界では、ダイヤモンドが「硬いだけの価値のない石」とされていることに。

前世の知識をもとに、独占採掘権を取得し、
“ダイヤモンドでダイヤモンドを磨く”という発想で、
石の価値そのものを覆したジェニュイン。

宝石市場は再編され、
王家でさえ彼女の存在を無視できなくなっていく。

だが彼女は、王にならない。
支配も、命令も、称号も求めない。

ただ、残る価値の形を示し続けるだけ。

――後に「ダイヤモンドクイーン」と呼ばれる女の、
静かで揺るがぬ“意思”の物語。


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