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「リチャード、じゃあ僕帰るね。大事な用事があったんだ。」
「そうか。お父上によろしく。」
「うん。あ、君も元気でね。ルナくんだっけ?」
「…ルエです。」
「そうそう。ルエだった。じゃあね。」
数日滞在し二人をつけまわしていたサーシャが急に帰ると言って荷物をまとめ出した。不思議なことにあんなに不機嫌だったのに今日は上機嫌だ。
リチャードたちは玄関まで見送る。荷物を持ったノーマンとニーナはサーシャの後を馬車までついて行った。
「やっと帰った…。」
大きなため息を吐きながらリチャードが疲れたような顔をした。
「ルエ、ごめんな。サーシャが言ったことは気にしなくていい。」
「はい。」
「そろそろお茶にしよう。今日のおやつは何だろうね。」
「昨日はプディングとモンブランでしたね。」
二人は仲良くリビングに戻った。
ちょうどお茶の準備が出来ており、シフォンケーキとカシスのムースが用意されている。それを見たルエは目を輝かせた。
「ふふふ。おいでルエ。」
リチャードはルエの手を引いて並んで座り紅茶に砂糖を入れたりケーキのフォークを並べたりして支度をし始める。
「ありがとうございます。僕がやります。」
「良いんだ。私にやらせて?ルエの嬉しそうな顔を見られて幸せだよ。」
ルエのこめかみや頬にちゅっちゅっと音を立ててキスをする。それから二人で仲良く食べ始めた。
「旦那様はまたルエ様を連れて仕事に行かれたわ。」
「ああ。ルエ様が休む暇がないな。この間、旦那様には何となくは伝えたんだがな。」
リチャードは街の方に仕事で出かけていた。そんな時は必ずルエを連れて行くのだ。屋敷にいるときも一日中べったりくっついている。ノーマンはルエの身体のことを心配していた。オメガなのであまり体力がないはずなのだ。
「まぁでもルエ様も幸せそうですし。これでクロフォード家も安泰ね。」
「そうだな。」
ノーマンはほんの数ヶ月前の二人を思い出す。リチャードは頑なにルエに会うこともせずいつも固い表情で黙々と仕事をしていた。ルエはせっかく嫁いできてくれたのにいつも寂しそうだった。それが今は二人は本当に仲良く過ごしており幸せそうだ。屋敷の中にはいつも二人の笑い声が聞こえる。そしてルエの大好きな甘い菓子の匂いで満ちていた。クロフォード家にやっと訪れた『幸せ』だ。
「そろそろルエ様は発情期じゃないかしら?」
ニーナがカレンダーを見ながら呟いた。
そうだ。そろそろルエの発情期だ。きっと二人で篭って過ごすだろう。快適に過ごせるようノーマンたちも準備をしなければならない。
「そろそろ準備が必要だな。」
「ええ。」
そう言ってカレンダーをもう一度見た。
ノーマンは掃除のためにルエの部屋に入る。そろそろ本格的に寒くなるためルエに暖かい洋服が必要だ。
発情期も来るので暖かい寝巻きやシーツを新調しなければならない。
きっとリチャードは金に糸目をつけずルエに新しい服をたくさん贈るだろう。今でも毎日のようにルエに贈り物をしている。
ルエはいつも断っているがリチャードが勝手に買ってしまうのだ。
「ルエの様の衣装部屋の整理をしないと。」
ルエの衣装部屋に入るとそこはたくさんの洋服、宝石類であふれていた。リチャードがいかにルエにぞっこんなのかが分かる。
その部屋の隅を見ると小さな山がある。それはルエが北の棟に居たときに作った『巣』だ。
部屋を移す際にリチャードが処分しようとするとルエが大泣きしてしまったのを思い出した。
ゴミに見えるがルエにとっては大事な宝物だ。リチャードに相手にされなかったときにこれを心の拠り所にしていたのだ。
大泣きするルエにリチャードがものすごく動揺して土下座して謝ったり宥めたりしていた。
ノーマン以外の使用人はあんなリチャードを見るの初めてで皆驚いていた。
「これは触ってはダメだ。」
そう呟いて『巣』を避けながら掃除を始めた。
「よう!ノーマン。リチャードはいるか?」
「ギルバート様、お久しぶりです。旦那様なら居りますよ。仕事中でございます。」
ギルバートが久しぶりにクロフォード邸を訪れた。
リチャードは相変わらず仕事部屋にルエを連れて行き、ルエをそばに置いて仕事をしている。
そろそろ休憩のはずだが…。
「二人はどうだ?リチャードはルエを泣かせたりしてないだろうな?」
「え?あ、まぁ…その、」
仲が良すぎて困るくらいだ。
今日も一緒にいる。
どちらかと言うとリチャードがルエから離れないのだ。ノーマンが見張っていないとリチャードが一日中ルエとイチャイチャしたがって大変なのだ。しばらくすれば落ちつくかと思っていたが日に日に酷くなっている。
「まさか…!リチャードのやつ、またルエを泣かせているのか!」
口籠ったノーマンの様子を見てギルバートが勘違いしたようだ。怒った顔でリチャードの仕事部屋に走って行ってしまった。
「あ!ギルバート様、違います…」
慌ててノーマンが追いかけるが、ギルバートには聞こえていずもの凄い勢いでリチャードの元に向かってしまった。
「おい!リチャード!!」
ノックもせずギルバートは勢いよく仕事を部屋の扉を開けた。
「うわっ!」
「何だ!!」
いきなり開いた扉に二人は驚いている。
「え?えぇ?」
しかしそれ以上に驚いているのはギルバートだ。
上半身裸のリチャードがルエの上に覆い被さっており、ルエの服もほとんど脱げていた。
その二人のあられもない姿にギルバートは唖然と立ち尽くしてしまった。
「ギル!何だ!扉を閉めろ。ルエを見るな!」
「やだっ!ギル様…」
リチャードが大騒ぎして我に帰ったギルバートが慌てて部屋から出て扉を閉めた。
扉の外には一足遅かったノーマンが何とも言えない顔でギルバートを見つめていた。
「そうか。お父上によろしく。」
「うん。あ、君も元気でね。ルナくんだっけ?」
「…ルエです。」
「そうそう。ルエだった。じゃあね。」
数日滞在し二人をつけまわしていたサーシャが急に帰ると言って荷物をまとめ出した。不思議なことにあんなに不機嫌だったのに今日は上機嫌だ。
リチャードたちは玄関まで見送る。荷物を持ったノーマンとニーナはサーシャの後を馬車までついて行った。
「やっと帰った…。」
大きなため息を吐きながらリチャードが疲れたような顔をした。
「ルエ、ごめんな。サーシャが言ったことは気にしなくていい。」
「はい。」
「そろそろお茶にしよう。今日のおやつは何だろうね。」
「昨日はプディングとモンブランでしたね。」
二人は仲良くリビングに戻った。
ちょうどお茶の準備が出来ており、シフォンケーキとカシスのムースが用意されている。それを見たルエは目を輝かせた。
「ふふふ。おいでルエ。」
リチャードはルエの手を引いて並んで座り紅茶に砂糖を入れたりケーキのフォークを並べたりして支度をし始める。
「ありがとうございます。僕がやります。」
「良いんだ。私にやらせて?ルエの嬉しそうな顔を見られて幸せだよ。」
ルエのこめかみや頬にちゅっちゅっと音を立ててキスをする。それから二人で仲良く食べ始めた。
「旦那様はまたルエ様を連れて仕事に行かれたわ。」
「ああ。ルエ様が休む暇がないな。この間、旦那様には何となくは伝えたんだがな。」
リチャードは街の方に仕事で出かけていた。そんな時は必ずルエを連れて行くのだ。屋敷にいるときも一日中べったりくっついている。ノーマンはルエの身体のことを心配していた。オメガなのであまり体力がないはずなのだ。
「まぁでもルエ様も幸せそうですし。これでクロフォード家も安泰ね。」
「そうだな。」
ノーマンはほんの数ヶ月前の二人を思い出す。リチャードは頑なにルエに会うこともせずいつも固い表情で黙々と仕事をしていた。ルエはせっかく嫁いできてくれたのにいつも寂しそうだった。それが今は二人は本当に仲良く過ごしており幸せそうだ。屋敷の中にはいつも二人の笑い声が聞こえる。そしてルエの大好きな甘い菓子の匂いで満ちていた。クロフォード家にやっと訪れた『幸せ』だ。
「そろそろルエ様は発情期じゃないかしら?」
ニーナがカレンダーを見ながら呟いた。
そうだ。そろそろルエの発情期だ。きっと二人で篭って過ごすだろう。快適に過ごせるようノーマンたちも準備をしなければならない。
「そろそろ準備が必要だな。」
「ええ。」
そう言ってカレンダーをもう一度見た。
ノーマンは掃除のためにルエの部屋に入る。そろそろ本格的に寒くなるためルエに暖かい洋服が必要だ。
発情期も来るので暖かい寝巻きやシーツを新調しなければならない。
きっとリチャードは金に糸目をつけずルエに新しい服をたくさん贈るだろう。今でも毎日のようにルエに贈り物をしている。
ルエはいつも断っているがリチャードが勝手に買ってしまうのだ。
「ルエの様の衣装部屋の整理をしないと。」
ルエの衣装部屋に入るとそこはたくさんの洋服、宝石類であふれていた。リチャードがいかにルエにぞっこんなのかが分かる。
その部屋の隅を見ると小さな山がある。それはルエが北の棟に居たときに作った『巣』だ。
部屋を移す際にリチャードが処分しようとするとルエが大泣きしてしまったのを思い出した。
ゴミに見えるがルエにとっては大事な宝物だ。リチャードに相手にされなかったときにこれを心の拠り所にしていたのだ。
大泣きするルエにリチャードがものすごく動揺して土下座して謝ったり宥めたりしていた。
ノーマン以外の使用人はあんなリチャードを見るの初めてで皆驚いていた。
「これは触ってはダメだ。」
そう呟いて『巣』を避けながら掃除を始めた。
「よう!ノーマン。リチャードはいるか?」
「ギルバート様、お久しぶりです。旦那様なら居りますよ。仕事中でございます。」
ギルバートが久しぶりにクロフォード邸を訪れた。
リチャードは相変わらず仕事部屋にルエを連れて行き、ルエをそばに置いて仕事をしている。
そろそろ休憩のはずだが…。
「二人はどうだ?リチャードはルエを泣かせたりしてないだろうな?」
「え?あ、まぁ…その、」
仲が良すぎて困るくらいだ。
今日も一緒にいる。
どちらかと言うとリチャードがルエから離れないのだ。ノーマンが見張っていないとリチャードが一日中ルエとイチャイチャしたがって大変なのだ。しばらくすれば落ちつくかと思っていたが日に日に酷くなっている。
「まさか…!リチャードのやつ、またルエを泣かせているのか!」
口籠ったノーマンの様子を見てギルバートが勘違いしたようだ。怒った顔でリチャードの仕事部屋に走って行ってしまった。
「あ!ギルバート様、違います…」
慌ててノーマンが追いかけるが、ギルバートには聞こえていずもの凄い勢いでリチャードの元に向かってしまった。
「おい!リチャード!!」
ノックもせずギルバートは勢いよく仕事を部屋の扉を開けた。
「うわっ!」
「何だ!!」
いきなり開いた扉に二人は驚いている。
「え?えぇ?」
しかしそれ以上に驚いているのはギルバートだ。
上半身裸のリチャードがルエの上に覆い被さっており、ルエの服もほとんど脱げていた。
その二人のあられもない姿にギルバートは唖然と立ち尽くしてしまった。
「ギル!何だ!扉を閉めろ。ルエを見るな!」
「やだっ!ギル様…」
リチャードが大騒ぎして我に帰ったギルバートが慌てて部屋から出て扉を閉めた。
扉の外には一足遅かったノーマンが何とも言えない顔でギルバートを見つめていた。
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