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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

美味しいお茶を飲む時は楽しいことを考えないとね

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「意外でしたわ。カイン殿下が何もしてこなかったことに」

 いつもと同じ様に王妃教育の後のお茶会で、私は殿下にそう話し掛けた。勿論、オルガ様のことだ。

「ほんとは手は出したかったが、これでも分別はあるからな。さすがに、家庭内の問題には手は出せないだろ」

 家庭内の問題じゃなかったら、手を出してたわけね。分かってはいたけど、やっぱり引くわ。

「……で、アイツは首の皮一枚繋がった状態か。一年後が楽しみだな」

 黙ってお茶を飲んでいる私を見ながら、心底楽しそうに話す殿下。

 黒いオーラがだだ漏れね。隠そうともしてないわ。それにしても、本当に楽しそうね……どっちに転んでも、オルガ様の前途は多難ね。まぁ同情はしないけど。

 お父様は息子に一年の猶予を与えた。

 私がそれを知ったのは翌日だったけどね。ユズに忠誠を誓われた後、私は退席したから。なので、この後どうなったのかは皆から聞いた。主にクライシスからだけど。

 翌日の早朝、私が起きる前に、お父様はオルガ様を領地に送ったそうだ。グリードの名前を名乗ることを許さずにね。

 つまりこれからの一年、オルガ様は平民の兵士として魔物討伐の部隊に身を置くことになる。一から鍛え直すそうだ。

 その間は、当然学園は休学。

 一つでも問題を起こせば、即廃嫡。例え一年頑張っても、お父様が出した試験に通らなければ、やっぱり廃嫡だそうだ。厳しいね。ていうか、どんな問題を出したんだろう。そっちが気になるわ。

 お父様曰く、まだ成人前だったから、もう一度チャンスを与えることにしたらしい。お母様は即廃嫡って騒いだそうだけど。結局は、お父様の提案に折れたそうだ。まぁ代わりに、魔法攻撃の的にされたらしい。

 それはそれで、恐怖よね。まだ殴られる方が何十倍もマシじゃない。お母様を怒らさないようにしなきゃね。……オルガ様。領地に行く前に、絶対複数回心が折られてるよね、きっと。

「楽しみなのは、カイン殿下だけでしょう。私はどちらでもいいですけど……でも、もし廃嫡になったら、お父様もお母様も悲しむわ。それは嫌だわ」

 ほんと、どっちでもいい。初めから、深く関わりを持とうとは思っていないから。個人的にはね。ただ……もし廃嫡になったら、お父様もお母様も悲しむと思う。二人のことだから、表には出さないだろうけど。やっぱり、自分の子供だもん。悲しんで当たり前だよ。

「マリエールは本当に優しいな。そう言うところがいいんだが……アイツが廃嫡になるかならないかは、本人の頑張り次第だろ」

 私が優しいかは別として、私的にはあまり関わりを持ちたくはない相手だけどね。

 オルガ様が学園からいなくなっても、この件は沈静化しないだろう。当事者がいないところで、たぶん外野が騒ぎ出す筈。今までの彼女の行動がそれを物語ってるしね。気味悪いのは、彼女のお兄様よね。接点が殆どないから彼のことは知らないけど、ケーキ屋さんでは不気味だと感じた。まぁ、接点がないから放っておくしかないけどね。

 そんなことを考えながら飲んでると、お茶が苦く感じた。やっぱり、美味しいお茶を飲む時は楽しいことを考えないとね。

 その後は意識を切り替え、他愛ない話をする。二杯目のお茶はとても美味しかった。





「…………あれ、絶対何か企んでますよね」

 マリエールが帰った後、優秀な従者で幼馴染のインディーが俺に話し掛けて来た。サクヤはマリエールを送っているのでいない。

「いいんじゃないか。勝つのはマリエールだから」

 俺はあっけらかんに答える。インディーは苦笑しながら同意した。

「でしょうね。まぁ、あの方は最強ですから。目の前にいる貴方でさえ、勝つことは難しいでしょ」と。

「心底惚れてるからな。マリエールしかいらない。他は付属品しかないだろ」

 インディーは呆れた顔をしながらも、それ以上何も言ってはこなかった。

 今言ったのは本音だ。

 自分の地位も。何もかも、俺にとったら、只の付属品だ。利用はするが、邪魔になったら平気で捨てれる。

 欲しいのはマリエールと、マリエールと歩む未来だけだーー。








☆☆☆

 
 第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。

 タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。

 昔の作品です。テーマは〈親子愛〉

 気楽に読めますので、是非(。•̀ᴗ-)✧

 

 
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