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貴方の傍らで
第十一話 その気持ち悪い笑み止めてくれませんか
しおりを挟む「ーーなんてことがあったんですよ、シオン様。ルーク隊長を出し抜くなんて、凄いと思いませんか?」
若返ったシオン様は眠り続けています。そんなシオン様に、いつもと同様話し掛けます。姿形が変わってもシオン様ですからね。今回報告するのは、勿論、休憩時間で見た映像のことですわ。
シオン様の隣に潜り込み、太い腕を抱き締めながら話し続けます。でも返ってくるのは沈黙だけ。せめて、ピクリとでも動いてくれたなら、反応してくれたのなら……そう希望してしまう自分がいます。身勝手ですよね。そんな自分がとても嫌になります。
一番大変なのは私ではなく、シオン様なのに……戦っているのもシオン様なのに……ほんとに私は駄目ですわね。
心から、私はシオン様が目覚めると信じています。
お祖父様も「間もなく目が覚めるだろうと」と言ってくれました。若返りが止まったからですわ。言われたのは、二週間前ですけどね。でも、その言葉にどんなに救われたか。
それでも、ふと……不安が過ります。最悪なことを考えてしまいます。その考えを追い払おうと強く目を瞑ります。だけど消えません。
そんな時、私はシオン様の体温をより身近に感じたくなるのです。体全体で縋り付きたくなるのです。
今もそうです。
自然と抱き締める手に力が入ります。
まだ眠るのは早いけど、このまま眠りにつくのもたまにはいいですよね。
目を閉じた時でした。コンコン。誰かがドアをノックしています。
こんな時間に誰? お祖母様かしら?
「はい。今、開けます」
私はベッドから抜け出すとドアを開けました。
「お、お母様!?」
尋ねて来たのはお母様でした。まさか、お母様が尋ねて来るとは思っていませんでしたわ。もし尋ねて来たとしても、ドアをノックするとは思いませんでした。驚きです。
室内に招き入れると、私の目の下を優しく指の腹で撫でます。
「隈……少し薄くなったわね」
お母様なりに心配してくれてたようです。シオン様が眠ってしまった時も、取り乱していたそうですから。
「ええ。仕事が一つ減りましたから」
「ほんと、アークが来てくれてよかったわ」
泣きそうな笑みです。心配を掛けていたんだと心から思います。原因はお母様ですけどね。お母様なりに責任を感じていたみたいですけど。
それはそうと、お母様は私を心配してここまで来てくれたのですか? あっ、もしかして完成したのですか!?
お父様が言っていたことを思い出しました。
「ええ。完成したわ。間に合ってよかったわ」
そう言って見せてくれたのは小さな耳飾りでした。ブレスレットか指輪を想像していたから、意外でした。正直にそう言うと、
「だって、指輪は駄目でしょ。義理の母親が息子に贈ったら。それが魔法具でも。ブレスレットもギリアウトね。ネックレスも考えたけど、落とす可能性もあるからね。そう考えたら、耳飾りが妥当でしょ」
それが普通ですか? 特に気にもしませんが。だって、シオン様を護るものでしょ。指輪でもブレスレットでも構いません。ちゃんと機能してくれたら。でもまぁ、気遣いはありがたく受け取っときますわ。
「そういうものですか……」
「セリアって……まぁいいわ。早速着けるわね」
そう言うと、お母様がシオン様に近付き耳を触ろうとします。
「待って!!」
反射的でした。耳を触ろうとしたお母様の手を掴んでいました。自分の行動に吃驚です。
そんな私を、お母様は何とも言えない気持ち悪い笑顔をしながら「へぇ~~セリアがね」と呟きました。勿論手は引っ込めてます。
その笑顔に、何故か無性に腹が立ちます。
「気持ち悪い笑み、止めてくれませんか」
ムスッとしながらそう言うと、お母様は「はい。はい」と素直に手を退けてくれました。
☆☆☆
第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。
タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。
少し古い作品ですが、親子愛がテーマになってます。
気楽に読めますので、是非どうぞ(。•̀ᴗ-)✧
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