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また、乙女ゲームですか
第四話 可能性は高いでしょう
しおりを挟むーー聖教会。
成り立ちはとても古く、神から遣わされた聖人が神の命により作った教会だと言われてます。
魔物を完全悪とし、民の命を護る討伐だとしても、魔物と関わった時点で、穢れ人とされ迫害されます。理不尽ですよね。山脈を越えた先の国では、死刑もあるとか……。考えられませんわ。私たちは彼らを誇りと思いますけどね。
なので当然、我が国を含む諸外国とは考え方がまるっきり違います。正反対ですね。故に、聖教会を国教とは見做しておりませんし、聖教会の教会は一つも存在していませんわ。
とはいえ、魔の森に面していない国、あるいは離れている国に対しては影響力が多少はあると言わざる得ませんが。主に、山脈を越えた向こう側の国になりますので、こちら側は聖教会にとって完全な敵地になりますね。
そんな敵地に単身で、まぁ護衛はいますが、それも一介のシスターが布教のために留学する。どんな馬鹿な人間でも、疑いますわ。何か裏があるんじゃないかって。
勿論、私も疑ってますよ。その事とは別に、ちょっと引っ掛かることもあるんですよね。
「スミス」
いつもの執務室を兼ねた作業室で、私は資料を読む手を止めスミスを呼びました。
「はい。お呼びでしょうか?」
資料を机に置くと、タイミングを見計ったように紅茶が運ばれて来ました。ほんとに、良く出来た侍女たちです。
「聖教会って、神から遣わされた聖人によって作られたのですよね」
「はい。そう聞いておりますが」
「……私の考え過ぎかもしれないけど、神から遣わされた聖人って、【落ち人】なのでは。
それもお母様のように、神によって連れて来られた者のような気がしてならないのです」
というか、そうとしか考えられませんわ。
「……確かに。十分考えられますね」
でしょ。スミスが同意してくれると、自信が湧いてきますわ。お母様に訊けば一発で分かりますけどね。おそらく知っているでしょうから。長く生きてらっしゃいますから。ん……長く生きているのはお祖父様も同じでは? もしかして、知ってらっしゃるかもしれませんね。でもその前に、お母様に相談しないと。また拗ねてしまいますわ。
聖教会のこともそうですが、別の件でもお母様に協力してもらわないと……
「……セリア様?」
考え込んでしまった私を心配して、スミスが私の名前を呼びます。
「スミス。……ここから先は、あくまで想像の域を出ない話ですけど、シスターが【落ち人】の可能性はありませんか?」
やってることが、あまりにもエレノアと符合し過ぎてますもの。ましてや、【落ち人】との繋がりが強い聖教会の出身。確率は高くありませんか。どうしても、考え過ぎとは思えないのです。
「…………」
無言は肯定。
「色々な逆境、苛めを乗り越えて、恋を成熟させる。それも、高位の貴族たちと。
その点もよく似てますよね。まるで、シスターは物語の主人公のようですわ」
ならば、やはり私は、悪役令嬢の役どころでしょうか。エレノアの時と同じく。とても不本意ですわ。グチグチと文句を言ってても仕方ありませけど。
まぁ取り敢えず、お母様に相談してみましょうか。話はそれからですね。
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