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何もかもがデカーイ

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 我々はボルボさんという巨人の家に今、お邪魔させて頂いております。
 このお宅、非常に大きくていらっしゃる! 
 まずテーブルですが、自分の目に映るのは巨大な柱に見える皿やコップ。
 椅子などもありますが椅子として認識するのには時間が掛かります。
 時折窓辺から吹く風はまるで突風のよう。
 実に良い吹き抜けですね。湿気対策も万全なのでしょう。
 彼は私たちのために、料理を提供してくれました。
 それが……「いーやーーー! こんなの食べるの絶対いーやーーー!」
「あわわわわ……虫のまる焼き……」
「うっ……もう帰して! 本当に帰して!」
「ボルボパイセン。こいつぁー食えねーでさぁ……」
「ニャ……犬も食わないとはこのことニャ! ニャゴハーーッハッハッハッハ!」
「そうだか? 美味いだぞ。栄養も満点だべ」
「栄養は満点でも精神値が底値に落ちますよ、コレ……」

 むしゃむしゃとグロい何かを平らげるボルボパイセン。
 うっ……吐き気が……。

「贅沢を言える立場じゃないのですが、穀物か果物はないのでしょうか?」
「あるだが、お客人もてなすのにそんなのでいいだか?」
「いいんですいいんです。何せ俺たちはただの客人。美味しいーお米とか、美味しいー
もち米とか、美味しいー小麦がもらえるだけで十分満足です!」
「そしたらこれでどうだ?」
 
 どかんと一個、巨大な何かをテーブルに置くボルボパイセン。
 これはもしかして……ジャガイモ!? 
 確かにジャガイモっぽい顔をしてらっしゃるけどジャガイモ? 
 いや、そうじゃなかったです。ボルボパイセンはジャガイモを作ってるの? 
 ということは……これは! コロッケパンが造れる可能性が出来たってことだよね?
 うぇーい! どうにか栽培方法を聞きたい。
 しかしこのジャガイモ、大きすぎます。

「あのーボルボパイセン。こいつはジャガイモって奴じゃないですか? これってどう
やって育ててるんです?」
「おらの畑で取れただ。茹でて食うと美味いんだべ」
「ほうほう。実は俺、こいつをもっともっと美味しくする料理方法を知ってるんですよ」
「そうだべか? お前さんは犬っころなのに料理出来るだか?」
「ええ。こいつの使用用途は多種多様。出来ればこの種を幾何か頂戴出来ないでしょうか?」
「いいだよ。帰りに持っていくだ」

 どさりと置かれた巨大な袋。
 ……もしかして種まででかいんじゃ。

「もうちょっと小さいの、あったりします?」
「幾つか入ってるだよ。好きなもの持っていくだ。それより美味い料理方法、教えてくれねえだか?」

 俺はボルボパイセンに料理方法を伝授し……そして出て来た料理がきました! 
 その名はジャガ焼き。すり下ろした芋に鳥類の卵を混ぜてグチャグチャにして焼く! 
 ジャガイモの奴がいい感じに焼けた匂いが食欲をくすぐります。
 これにはたまらずサルサさんや地雷もぎゅるぎゅるとお腹を鳴らしました。
 しかし、犬ってジャガイモとか玉ねぎ食べれないんじゃ……って俺は犬じゃない! 

 ……意を決して頂いてみると、何とも素晴らしいジャガイモ。
 こいつを食うと芋っぽくなれるのか。
 
「美味いだな、これ。いいこと教えてもらっただ。そうか、茹でて柔らかくして崩して焼き上げる
だけで美味くなるんだな」
「ええ。このままだとジャガイモで終わってしまいそうなので、農作業場か何かを少し見学させて
欲しいのです」
「分かった。お嬢さんたちはどうするだか?」
「パス。もうお腹一杯だわ……」
「凄い食べ応えでした。食べたら眠くなりましたぁ……」
「ふっふっふ。どうやら芋の虜になったようだな、ジャガ娘たちよ!」
「誰がジャガ娘よ!」
「俺の国では芋に取り憑かれた娘をそう呼ぶのだ! グハハハハ!」
「ニャトルもジャガ娘って奴になったニャ? でもちょっと強そうな響きニャ」
「そいつの意味は田舎っぽい娘という意味に他ならない! あえて言おう! 芋娘であると! あわわ
呪文を詠唱するのは止めていただきたいです!」
「んじゃシロンだけ連れてくだよ。今日は泊っていくといいだ」

 俺はボルボパイセンの肩に乗せてもらうと、畑を見させてもらいました。
 そこには色とりどりな野菜……だけじゃなくて色んなものが吊るされてました……。
 しかし色とりどりの野菜はどれも美しい! 
 唐辛子っぽいのもありますし、茄子っぽいのもあります。
 野菜として認識するには遠くから見ないとなりません。
 それほどに一つ一つがデカイ。
 特に目を引いたのが……トウモコロシっぽいやつ。
 まさに撲殺出来るコロシ道具と化す大きさです。
 お邪魔そうなタクシーがいればメイコンボ完成だったんですけどね。
 いや何の暗号かは一部の人にしか分からないものでした。
 しかしこんな大きなもの、皮だって向けやしません。

「どうだか。おらの畑は」
「凄すぎて自分がちっぽけな存在であると改めて認識しました」
「おらたちは体大きいから、これだけ育てても直ぐ無くなっちまうだよ」
「ボルボパイセンは此処でずっと一人なんですか?」
「いんや、たまに魔族の子やらが取引にくるだよ」
「はっ!? 思い出した。ハラペーニャという魔族がもしかしたら取引したがるかも」
「魔族のお客さんだか? 遠くの魔族さんは来たことねえから、会ってみたいだな」
「では早速戻って猫に頼んでみましょう!」

 一度部屋まで戻ると、眠ってる猫の尻尾を踏みつけて起こします。
 当然引っかかれる俺。
 猫踏んじゃったはこういうときにやるものなのです! いたたたたっ! 

「気持ちよく眠ってるときに一体何ニャ!」
「あれだ。あれを出してくれ。あれが欲しいんだ」
「アレって何ニャ? ニャトルのサインが欲しいニャ?」
「それはただのゴミ。いや、落書きでも五ボッチで売却出来るか?」
「ボッチって何ニャ……またシロンの可笑しな言動が出たニャ……」
「あれだよ! ハラペーニャとかいう取ってつけたような魔族のことだ」
「ハラペーニャ? そういえば全くこれっぽっちも覚えてなかったニャ」

 渋々と二足で立ち上がると、前足を上にあげて踊り出すニャトル。
 すると……【シャキーン】
 
 な、何でレベルが上がったんだ! 
 終わりのポーズで慢心の笑みを浮かべ見下された!? ぐぬぬ、おのれ猫め! 

 その影響で、眠っていたサルサさんたちも目を覚ましました。

「あら。久しぶりに呼んだのね、あの食いしん坊」
「食いしん坊じゃなくて喰魔だそうです」
「あんなの呼んでどうするの?」
「いや、ここのでかい食べ物食わせたら……とってもいいことが起こると思いませんか?」
「確かに……取引材料としては良さそうね。でかしたわシロン」
「へっへっへ。お代官様程じゃありませんよ……」
「何よお代官様って」
「ガメツイ奴らの代名詞です」
「誰がガメツイのよ!」

 続くよ! 
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