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第2章:偽りの仮面と真実の愛
2-4:領内視察と侯爵の意外な一面
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セクション4:領内視察と侯爵の意外な一面
父とエドワードが領地経営や財務の話で盛り上がっている間、私は大人しく耳を傾けていた。話を聞く限り、エドワードには裏表のない論理的思考があると感じられる。だが、それが彼の“人間味”や“感情”の部分にまで当てはまるのかは分からない。もし私との結婚すら、綿密に計算された合理的判断の延長であるならば──そこに愛は存在しなくても、何ら不思議はない。
しかし、その時ふと、エドワードが私に視線を向けた。まるで私が何を考えているのかを見透かすかのような瞳で。
「アマンダ嬢、あなたは領地の事情に興味がありますか? もしよければ、外へご案内しましょう。館の中だけ見ても、これからの暮らしの全貌は分からないでしょうから」
突然振られた言葉に、私は一瞬戸惑う。しかし、驚きはしたものの、領地を実際に見ることでいろいろと理解が深まるのは確かだ。私にとってはありがたい提案であるとも言える。父も「そうだな、アマンダが見たいというのなら」と肯定してくれたので、私は「よろしくお願いします」と素直に応じた。
1. 領内視察と侯爵の意外な一面
クラレンス家の屋敷の外へ出ると、ちょうど昼下がりの柔らかな陽光が降り注いでいた。エドワードは私に歩調を合わせながら、庭を抜けて敷地内の厩舎へ案内してくれる。そこでは黒馬や白馬が整然と飼育されており、きらりと光る毛並みが印象的だった。
「私は普段、領内を回るときは馬に乗るのですが、馬車の方がよろしければそちらを用意しましょうか?」
エドワードが尋ねてくる。乗馬は幼い頃に一通り習ったものの、男性のように頻繁に乗る機会はなかった。スカートの長いドレス姿で乗馬をするのは少し心もとないが……きっとエドワードも、私が“できるかどうか”を試しているわけではないだろう。単純な配慮かもしれない。
「そうですね……ドレスのままでは乗りにくいと思いますし、馬車をお願いできますか?」
「ええ、もちろんです。ご安心ください」
彼が軽く手を振ると、厩舎の係の者が素早く動き出し、あっという間に小型の屋根付き馬車が用意される。どの使用人も無駄のない動きで、領主に対する忠誠と訓練の行き届き具合を感じさせた。
やがて私とエドワードは、その馬車に乗り込んで敷地の門を出る。乗り心地はなめらかで、揺れも最小限に抑えられているようだった。私は窓辺から風景を楽しみながら、自然と会話が増えていく。
「このあたりの村々は、気候が安定していて農業に向いているんです。主要作物としては小麦を中心に、野菜や果物を育て、近隣の町へ卸しています。貿易路にも近く、馬車の往来も盛んですから、商人たちからも重宝されているんですよ」
エドワードは手短に領内の特徴を説明してくれる。その内容は、先ほど父と話していた通り論理的かつ明快で、彼の知識の広さを垣間見た気がする。馬車の窓から見える景色は緑が多く、平和そうに見えるが、彼の計画があってこその安定なのだろうと納得した。
しばらく進んだ先に、小さな村落が見えてくる。畑が広がり、農民らしき人々が作業している姿があちこちに見受けられた。私たちの馬車が通りかかると、彼らは一様に手を止め、頭を下げて挨拶してくれる。
「……皆さん、あなたを見てとても安心したような顔をしていますね」
私はそう言って、村人のほとんどが歓迎の笑みを浮かべていることに気づいた。領主の姿を見て嫌悪する人もいるかもしれないと、どこかで思っていたのだが、ここではそんな様子はない。エドワードは窓の外を見やりながら、静かに言葉を返す。
「私も昔は領民が本当に私を受け入れているのか分からず、不安になることがありました。しかし、こうして彼らが作物を育て、生活を営む姿を見ると、私がしていることが少しでも役に立っているのかなと思えます。……それを私に気取られないよう、皆さま自立心が強いのですがね」
冗談めかした言葉の端々から、確かな愛情と誇りが感じられた。やはり、ただの冷酷な策略家だけではないのかもしれない。少なくとも領民にはしっかりと目を配り、領主としての務めを果たしている。そう考えると、私はほんの少しだけ、彼に対して安堵の気持ちを抱き始めていた。
父とエドワードが領地経営や財務の話で盛り上がっている間、私は大人しく耳を傾けていた。話を聞く限り、エドワードには裏表のない論理的思考があると感じられる。だが、それが彼の“人間味”や“感情”の部分にまで当てはまるのかは分からない。もし私との結婚すら、綿密に計算された合理的判断の延長であるならば──そこに愛は存在しなくても、何ら不思議はない。
しかし、その時ふと、エドワードが私に視線を向けた。まるで私が何を考えているのかを見透かすかのような瞳で。
「アマンダ嬢、あなたは領地の事情に興味がありますか? もしよければ、外へご案内しましょう。館の中だけ見ても、これからの暮らしの全貌は分からないでしょうから」
突然振られた言葉に、私は一瞬戸惑う。しかし、驚きはしたものの、領地を実際に見ることでいろいろと理解が深まるのは確かだ。私にとってはありがたい提案であるとも言える。父も「そうだな、アマンダが見たいというのなら」と肯定してくれたので、私は「よろしくお願いします」と素直に応じた。
1. 領内視察と侯爵の意外な一面
クラレンス家の屋敷の外へ出ると、ちょうど昼下がりの柔らかな陽光が降り注いでいた。エドワードは私に歩調を合わせながら、庭を抜けて敷地内の厩舎へ案内してくれる。そこでは黒馬や白馬が整然と飼育されており、きらりと光る毛並みが印象的だった。
「私は普段、領内を回るときは馬に乗るのですが、馬車の方がよろしければそちらを用意しましょうか?」
エドワードが尋ねてくる。乗馬は幼い頃に一通り習ったものの、男性のように頻繁に乗る機会はなかった。スカートの長いドレス姿で乗馬をするのは少し心もとないが……きっとエドワードも、私が“できるかどうか”を試しているわけではないだろう。単純な配慮かもしれない。
「そうですね……ドレスのままでは乗りにくいと思いますし、馬車をお願いできますか?」
「ええ、もちろんです。ご安心ください」
彼が軽く手を振ると、厩舎の係の者が素早く動き出し、あっという間に小型の屋根付き馬車が用意される。どの使用人も無駄のない動きで、領主に対する忠誠と訓練の行き届き具合を感じさせた。
やがて私とエドワードは、その馬車に乗り込んで敷地の門を出る。乗り心地はなめらかで、揺れも最小限に抑えられているようだった。私は窓辺から風景を楽しみながら、自然と会話が増えていく。
「このあたりの村々は、気候が安定していて農業に向いているんです。主要作物としては小麦を中心に、野菜や果物を育て、近隣の町へ卸しています。貿易路にも近く、馬車の往来も盛んですから、商人たちからも重宝されているんですよ」
エドワードは手短に領内の特徴を説明してくれる。その内容は、先ほど父と話していた通り論理的かつ明快で、彼の知識の広さを垣間見た気がする。馬車の窓から見える景色は緑が多く、平和そうに見えるが、彼の計画があってこその安定なのだろうと納得した。
しばらく進んだ先に、小さな村落が見えてくる。畑が広がり、農民らしき人々が作業している姿があちこちに見受けられた。私たちの馬車が通りかかると、彼らは一様に手を止め、頭を下げて挨拶してくれる。
「……皆さん、あなたを見てとても安心したような顔をしていますね」
私はそう言って、村人のほとんどが歓迎の笑みを浮かべていることに気づいた。領主の姿を見て嫌悪する人もいるかもしれないと、どこかで思っていたのだが、ここではそんな様子はない。エドワードは窓の外を見やりながら、静かに言葉を返す。
「私も昔は領民が本当に私を受け入れているのか分からず、不安になることがありました。しかし、こうして彼らが作物を育て、生活を営む姿を見ると、私がしていることが少しでも役に立っているのかなと思えます。……それを私に気取られないよう、皆さま自立心が強いのですがね」
冗談めかした言葉の端々から、確かな愛情と誇りが感じられた。やはり、ただの冷酷な策略家だけではないのかもしれない。少なくとも領民にはしっかりと目を配り、領主としての務めを果たしている。そう考えると、私はほんの少しだけ、彼に対して安堵の気持ちを抱き始めていた。
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