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「気を付けて帰ってくれ、オリビア。手紙は君宛とご両親宛にすぐ届けよう」
「ありがとうございますマルク様」
「あの、お嬢様。本日はどちらにお帰りになられますか?」
申し訳なさそうにユノンが口を開いた。そっか、それがあったんだ。
マルクが手紙を届けてくれたって、私があの家に戻らなければ意味がないんだったわ。
あーでもどうしようかな。今日はこんな予定じゃなかったから、本当だったら今日帰ってから荷物をまとめて明日領地に向かうつもりだったのに。
でも今帰ったら、怒り狂うシーラに纏わりつかれ、お父様たちも絶対にうるさそうなのよね。
「んーーーーーー。どうしよう、ユノン」
「もしかしなくても、状況が変わった感じですか?」
「うん……かなり」
ユノンの顔が『だろうと思いました』っと言っていた。まぁ多くを今言わなくても、なんとなくこの短さだけで伝わるのがいいのよね。
でも本当に困ったわね。
「帰るところがないのかい?」
「いえマルク様。ただ今日のこの感じで家に帰ってしまうと、妹だけではなくアレン様まで家に押しかけられたら怖いかなと思って」
「ああ、あの元馬鹿婚約者か」
「「ぶっ」」
「ぶ?」
私とユノンが同時に吹き出したものの、急いで何もなかったような顔をしてやり過ごす。
「変な音がしましたね~。なんでしょうね~」
だってマルクにまで馬鹿婚約者呼ばわりされるアレンってさぁ。いい気味だわ。この国の宰相様に目を付けられちゃって、さぞ生きにくくなるんじゃないかしらね。
でも絶対に私からもガツンとやり返してやるんだから、覚悟しておきなさいよね。
「まあ音はいいさ。でもそうだな。急に乗り込まれて君に何かあったら俺も不安だ」
「そうですね……。予定より早いですが、今日このままこの馬車で私の領地に向かいますわ。荷物が持ち出せなかったことは少し困りますが、まぁなんとかなると思いますし」
「そうか……。でも安全を考えたらそれがいいかもしれないな。オリビア、君の領地というのは」
「国境近くにあるフェーン領という小さな村があるところですわ。大したものは何もないのですが、祖父母が残してくれた小さな屋敷もありますし。一応使用人の手配もしてありますので」
「フェーン領か。小さな土地だったな、あそこは」
「はい。本当に小さな村が一つあるだけですわ。でも、とても良い領民たちがおりますので不便なく過ごせると思います」
「そうか。それならば屋敷に戻るよりは安心だな。明日にでもそちらに遣いを寄こそう」
遣いって、ああ、わざわざあんな遠い領地にまで手紙を届けてくれるってことなのね。王都からだとうちの領地まで半日以上かかるから、なんだか申し訳ないわね。
「お心遣い感謝いたします」
「では、とにかく道中気を付けてくれ」
「はいマルク様」
にこやかに微笑むと、マルクは少しだけ名残惜しそうな顔をする。
「ではまた」
「ああ、ではまたなオリビア」
そしてユノンが乗り馬車のドアを閉めると、馬車はゆっくりと領地に向かって走り出した。
「ありがとうございますマルク様」
「あの、お嬢様。本日はどちらにお帰りになられますか?」
申し訳なさそうにユノンが口を開いた。そっか、それがあったんだ。
マルクが手紙を届けてくれたって、私があの家に戻らなければ意味がないんだったわ。
あーでもどうしようかな。今日はこんな予定じゃなかったから、本当だったら今日帰ってから荷物をまとめて明日領地に向かうつもりだったのに。
でも今帰ったら、怒り狂うシーラに纏わりつかれ、お父様たちも絶対にうるさそうなのよね。
「んーーーーーー。どうしよう、ユノン」
「もしかしなくても、状況が変わった感じですか?」
「うん……かなり」
ユノンの顔が『だろうと思いました』っと言っていた。まぁ多くを今言わなくても、なんとなくこの短さだけで伝わるのがいいのよね。
でも本当に困ったわね。
「帰るところがないのかい?」
「いえマルク様。ただ今日のこの感じで家に帰ってしまうと、妹だけではなくアレン様まで家に押しかけられたら怖いかなと思って」
「ああ、あの元馬鹿婚約者か」
「「ぶっ」」
「ぶ?」
私とユノンが同時に吹き出したものの、急いで何もなかったような顔をしてやり過ごす。
「変な音がしましたね~。なんでしょうね~」
だってマルクにまで馬鹿婚約者呼ばわりされるアレンってさぁ。いい気味だわ。この国の宰相様に目を付けられちゃって、さぞ生きにくくなるんじゃないかしらね。
でも絶対に私からもガツンとやり返してやるんだから、覚悟しておきなさいよね。
「まあ音はいいさ。でもそうだな。急に乗り込まれて君に何かあったら俺も不安だ」
「そうですね……。予定より早いですが、今日このままこの馬車で私の領地に向かいますわ。荷物が持ち出せなかったことは少し困りますが、まぁなんとかなると思いますし」
「そうか……。でも安全を考えたらそれがいいかもしれないな。オリビア、君の領地というのは」
「国境近くにあるフェーン領という小さな村があるところですわ。大したものは何もないのですが、祖父母が残してくれた小さな屋敷もありますし。一応使用人の手配もしてありますので」
「フェーン領か。小さな土地だったな、あそこは」
「はい。本当に小さな村が一つあるだけですわ。でも、とても良い領民たちがおりますので不便なく過ごせると思います」
「そうか。それならば屋敷に戻るよりは安心だな。明日にでもそちらに遣いを寄こそう」
遣いって、ああ、わざわざあんな遠い領地にまで手紙を届けてくれるってことなのね。王都からだとうちの領地まで半日以上かかるから、なんだか申し訳ないわね。
「お心遣い感謝いたします」
「では、とにかく道中気を付けてくれ」
「はいマルク様」
にこやかに微笑むと、マルクは少しだけ名残惜しそうな顔をする。
「ではまた」
「ああ、ではまたなオリビア」
そしてユノンが乗り馬車のドアを閉めると、馬車はゆっくりと領地に向かって走り出した。
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