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怒らせたのは私だけど、まさか暴力まで振るってくるとはね。
でもなんだか滑稽すぎて笑えて来る。図星だから、こんなに怒るのよね。本当に馬鹿みたい。
「いいからさっさと書け! いいか、お前には横領の罪もあるんだぞ」
「してもいないのにですか?」
「そんなもんはいくらでも作れる。お前が作った書類はこっちにあるんだからな」
ああ、本当に馬鹿ね。なーんにも知らないのだな、この人は。
「私が処理した書類などないですけど?」
「なんだって!」
「だって私はただの婚約者ですよ。そんな身分の者が勝手にこの家の書類をどうにか出来るわけがないではないですか」
「だが実際にお前が処理していただろう」
「私はただお手伝いをしていただけです。すべて終わらせたあと、署名捺印はあなたのお母様のお仕事でしたよ?」
この家の書類には一切私の名前はない。むしろ私が携わったという証拠も基本はない。
当たり前だろう。結婚して家に入ったわけでもない赤の他人に、家の仕事を任せていただなんて。その家の恥でしかないもの。
「ない書類なのに、どうやって横領しるんですかねー」
「!」
慌てたように自分の机に駆け寄り、散乱する書類にアレンは目を通した。何枚も、何枚も。
確認したところで、私のサインなどどこにもないのに。そんな簡単なことすら、今更気づくだなんて。どれだけ仕事サボってたのよ。
「そ、それならどうするんですのアレン様」
「うるさい! だいたいシーラ、お前がちゃんとやってくれたらこんなことにはならなかったんだ。金を使うばかりで、なんにも役に立たない」
「なんですって。わ、わたしはあなたの子を妊娠してるんですよ。それなのに、どうして仕事なんて出来るんですか」
「嫁になるなら当たり前だろう」
「それはアレン様の仕事ではないですか。それに知っているんですわよ。わたし以外の女にも手を出していることも。そんな時間がおありでしたら、仕事でも出来るではないですか」
あーあ。とうとう内輪揉めし始めたし。
こんなの分かっていた結果じゃないの。浪費しか興味がないシーラと、遊ぶことしか興味のないアレン。
どう頑張ったって上手く行くわけないのに。でも、こんなことは私たちを巻き込まないでやってよね。
痛くて痛くて、息をするのがやっとだし。それに何より、ユノンたちは平気なのかもこんな状況ですら気になる。
うん。なんだか頭が痛い。いや、重いって感じかな。考えすぎて、くらくらする。
「もう何でもいい、とにかくお前はここにサインしろ! あとから理由なんて考えてやる。何もかもうまくいかなくなったのはお前のせいなのだからな! 絶対にその責任は取らせてやる」
息を巻きながら、大きなお足音を立ててアレンが近づいてくる。
全部のことを棚に上げて、どうしても私のせいにしたいみたいね。そんなことをしても何も変わらないのに。
「あーあ、今日は楽しみな日だったのに……。こんな馬鹿たちに振り回されて、せっかく贈ってもらったドレスはボロボロだし……。予約していたお店も、時間を過ぎてしまったわ。本当に、何もかもが無駄すぎる」
「今なんて言ったんだ、オリビア!」
ぶつぶつとこぼした言葉が聞こえたのか、うずくまる私の目の前で立ち止まったアレンがさらに大きな声を上げた。
「馬鹿に邪魔された時間が無駄すぎるって言ったんです!」
「オリビアお前は!」
アレンが私の髪を掴み、そのまま持ち上げる。
「つっっっっっっ」
声にならない悲鳴を上げながらも、私はアレンを睨みつけた。
「どんなに暴力を振るわれたって、どんなに罵倒されたって。私はもう、思い通りになんてなりませんから。あなたたちがどう思おうと、私には私にとって不要なモノなど必要ない!」
「貴様ぁ!!」
アレンが腕を振り上げたのと同時に、大きな音が聞こえてきた。まるで扉を破壊するような音にその場の全員が固まった。
でもなんだか滑稽すぎて笑えて来る。図星だから、こんなに怒るのよね。本当に馬鹿みたい。
「いいからさっさと書け! いいか、お前には横領の罪もあるんだぞ」
「してもいないのにですか?」
「そんなもんはいくらでも作れる。お前が作った書類はこっちにあるんだからな」
ああ、本当に馬鹿ね。なーんにも知らないのだな、この人は。
「私が処理した書類などないですけど?」
「なんだって!」
「だって私はただの婚約者ですよ。そんな身分の者が勝手にこの家の書類をどうにか出来るわけがないではないですか」
「だが実際にお前が処理していただろう」
「私はただお手伝いをしていただけです。すべて終わらせたあと、署名捺印はあなたのお母様のお仕事でしたよ?」
この家の書類には一切私の名前はない。むしろ私が携わったという証拠も基本はない。
当たり前だろう。結婚して家に入ったわけでもない赤の他人に、家の仕事を任せていただなんて。その家の恥でしかないもの。
「ない書類なのに、どうやって横領しるんですかねー」
「!」
慌てたように自分の机に駆け寄り、散乱する書類にアレンは目を通した。何枚も、何枚も。
確認したところで、私のサインなどどこにもないのに。そんな簡単なことすら、今更気づくだなんて。どれだけ仕事サボってたのよ。
「そ、それならどうするんですのアレン様」
「うるさい! だいたいシーラ、お前がちゃんとやってくれたらこんなことにはならなかったんだ。金を使うばかりで、なんにも役に立たない」
「なんですって。わ、わたしはあなたの子を妊娠してるんですよ。それなのに、どうして仕事なんて出来るんですか」
「嫁になるなら当たり前だろう」
「それはアレン様の仕事ではないですか。それに知っているんですわよ。わたし以外の女にも手を出していることも。そんな時間がおありでしたら、仕事でも出来るではないですか」
あーあ。とうとう内輪揉めし始めたし。
こんなの分かっていた結果じゃないの。浪費しか興味がないシーラと、遊ぶことしか興味のないアレン。
どう頑張ったって上手く行くわけないのに。でも、こんなことは私たちを巻き込まないでやってよね。
痛くて痛くて、息をするのがやっとだし。それに何より、ユノンたちは平気なのかもこんな状況ですら気になる。
うん。なんだか頭が痛い。いや、重いって感じかな。考えすぎて、くらくらする。
「もう何でもいい、とにかくお前はここにサインしろ! あとから理由なんて考えてやる。何もかもうまくいかなくなったのはお前のせいなのだからな! 絶対にその責任は取らせてやる」
息を巻きながら、大きなお足音を立ててアレンが近づいてくる。
全部のことを棚に上げて、どうしても私のせいにしたいみたいね。そんなことをしても何も変わらないのに。
「あーあ、今日は楽しみな日だったのに……。こんな馬鹿たちに振り回されて、せっかく贈ってもらったドレスはボロボロだし……。予約していたお店も、時間を過ぎてしまったわ。本当に、何もかもが無駄すぎる」
「今なんて言ったんだ、オリビア!」
ぶつぶつとこぼした言葉が聞こえたのか、うずくまる私の目の前で立ち止まったアレンがさらに大きな声を上げた。
「馬鹿に邪魔された時間が無駄すぎるって言ったんです!」
「オリビアお前は!」
アレンが私の髪を掴み、そのまま持ち上げる。
「つっっっっっっ」
声にならない悲鳴を上げながらも、私はアレンを睨みつけた。
「どんなに暴力を振るわれたって、どんなに罵倒されたって。私はもう、思い通りになんてなりませんから。あなたたちがどう思おうと、私には私にとって不要なモノなど必要ない!」
「貴様ぁ!!」
アレンが腕を振り上げたのと同時に、大きな音が聞こえてきた。まるで扉を破壊するような音にその場の全員が固まった。
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