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二度目の話

再会

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 お茶会が始まり、一度目の時と同様に赤系のドレスを着た令嬢達が殿下を取り囲んでいた。
 今回もカッコいい王太子殿下は大人気のようだ。

 一度目の時の私は、あの殿下狙いの令嬢達に混ざる気にはならず、美味しそうなスイーツの誘惑に負けて、一人でモグモグと食べていたのよね。
 でも食べている途中で、別行動していたお義兄様に、一人で食べていて目立っているからやめるようにと注意されてしまったのよ。
 確かに、この場で一人で食べまくるのは別の意味で目立つわ。今回はやめよう。


 お義兄様は、学園の友人達を私に紹介してくれた。令息だけでなく、同じクラスだという令嬢達まで。
 一人でいるよりも、グループの中にいると目立たないからって考えなのかしらね。

「まあ!コールマン様の妹君?可愛いわね。
 私達は同じクラスでいつも勉強を教えてもらっているの。」

「あら!こんな可愛い妹君が邸で待っているから、コールマン様はいつも早々と帰ってしまうのね。」

 お義兄様の友人達は気さくな方ばかりのようだった。
 友人達の妹さんを紹介してくれたりして、思った以上に楽しい時間を過ごすことが出来たし、目立つことなくお茶会を終えることが出来たと思っていた。


 


 時間が経ったし、多分この雰囲気の感じだと、もうすぐお開きね。帰る前にトイレに行っておこうかしら。
 お義兄様に花摘みに行くことを伝えて、一人トイレに向かう私。トイレを終え、化粧室を出たところで、誰かに呼び止められる。

「そこの貴女!ちょっとよろしいかしら?」

 ハァー。やはり、一人でいる所を狙って来るのね。

「……。」

 私は無言で声の主の方を見た。
 あ…、やっぱりあなた達ですか…。

「……。」

「私達が声を掛けているのに、挨拶もしてくれないのかしら?」

「王妃殿下に褒められたからって、何か勘違いしているのではなくて。」

「何て礼儀知らずなのかしらね。」

「ぷっ!ふふっ。ふふっ…。」

 私に絡んできた、殿下を狙う赤ドレス軍団の3人の令嬢は、一度目の時と全く変わってなくて、何だか安心してしまった。
 思わず、「お久しぶりー!」って言いたくなってしまった私は、笑いが込み上げてきてしまったのだ。

「え?何で笑っているのかしら?」

「あなた、私達を馬鹿にしているの?」

 自分達よりも年下の令嬢に絡んだのに、私がこんな反応だからイラついているのね。

「馬鹿にしているのは貴女方ではなくて?
 ゴメス伯爵令嬢とグラント伯爵令嬢、侯爵令嬢の私が発言を許してないのに、その態度は何なのです?
 貴女達は格下の身分でありながら、私に挨拶を求めるのですか?貴女達こそ、礼儀知らずですわね。
 後日、コールマン侯爵家からゴメス伯爵家とグラント伯爵家に正式に抗議させて頂きます。」
 
 まさか自分達の名前を、お茶会デビューしたばかりの私が知っているとは思わなかったのだろう。二人は固まってしまった。

「ギロリー侯爵令嬢。うちのコールマン侯爵家は、財政難であるギロリー侯爵家を助けるために、うちの侯爵領の通行料を、ギロリー侯爵家とその商団に限って、五年間、免除してあげています。
 感謝されることはあっても、そのような態度を取られる覚えはありませんわ。それにも関わらず、貴女は私にそのような物言いをなさるのですね?
 貴女のことも両親に報告させて頂きますわ。」

「え…?うちが財政難?」

 知らなかったのね…。
 財政難だから、一族は王太子殿下との婚約で、王家との繋がりを強く望んでいるって有名な話だったと思うけど。

「ハァー。何も知らないのですね。
 こんな所で、私みたいな年下の令嬢なんかに絡んでいる暇があるならば、少しはご自分の将来のために、色々なことを学ばれてはいかがでしょうか?」

 久しぶりの女の戦いがとても新鮮すぎて、生きていることを実感してしまった私。
 そんな私はつい言い過ぎてしまった…。
 
 誰だって自分よりも年下の者から、こんな風に説教じみたことを言われたら面白くはない。
 目の前にいるギロリー侯爵令嬢もそのように感じたらしく…

「何なの…?ちょっと名門だからって!」

 ギロリー侯爵令嬢の手が振り上げられた!

 うわー、殴られる…

「やめないか!!」

 ……誰かが来てくれたようだ。

「三人で年下の御令嬢に絡んで、君たちは恥ずかしいとは思わないのか?
 このことはうちの公爵家から王家に報告させてもらう。殿下の側近と妃候補を探す茶会で、年下の御令嬢を虐めていたとな。」

「ひっ!ブレア様、私達は…」

 ブレア様って言ってるわ…

「私は君たちのやり取りを始めから見ていた。誤魔化しは出来ない。
 今すぐ、ここから去ることだ!」

 赤ドレス軍団の三人は去って行ってしまった…

 うっ…。顔を合わせたくなかったし、もう話すつもりはなかったのに。

「…大丈夫か?」

 無言で下を向く私に、一度目の人生の元夫で、死神認定しているブレア公爵令息が話しかけてきた。

「だ、大丈夫ですわ。助けて下さってありがとうございました。」

 無難にお礼を言う私。笑顔が引きっつってないわよね…?

「顔色が悪いような気がするが、どこか座れる場所で休んだ方がいいか?」

 貴方に関わりたくないだけなのよー。

「い、いえ…。本当に大丈夫ですわ。会場内で義兄が待っておりますので、私はそろそろ戻らせて頂きます。
 本当にありがとうございました。」

「心配だから、君の義兄上の所まで付き添わせてくれ。」

 ひぃー!関わりたくないって空気読んでー。

「お、お気持ちだけ頂戴致しますわ。」

「しかし…」

 その時、私の敬愛する人の声が聞こえた。

「アナ!いつまでも戻らないから、心配したぞ。」

「お…、お義兄様ー!」

「アナ?…どうした?」

 絶対的な存在のお義兄様の顔を見たら、安心してしまい、涙目になる私。

「コールマン侯爵令息の義妹君でしたか。
 実は先程……」

 ブレア公爵令息は義兄にさっきの出来事を説明してくれた。

「アナ…、初めてのお茶会でそんな辛い思いをしたのか。助けてあげられなくて悪かった。
 ブレア公爵令息、私の大切な義妹を助けて下さってありがとうございました。」

「いえ、偶然居合わせただけですので、気になさらず。」

「アナ、泣きそうな顔になっている…
 もう怖くない。私がお前に無礼を働いた女狐どもを倒してやるからな。」

 お義様は私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。

 ブラコンだから嬉しいけど……、この場ではやめてよ。

「お義兄様、このような場でお恥ずかしいですわ。」

「アナが泣きそうな時は、泣き顔が見えないように隠す必要があるだろう?」

「もう!お義兄様ったら。いつまでも私を子供扱いしないで下さいませ!」

「コールマン侯爵令息が義妹君を溺愛していると噂で聞いたことがありますが、本当なのですね。」

 ここでブレア公爵令息が口を開いた。

「アナは私の一番の宝物なのですよ。」

 このお義兄様はシスコンを隠す気はないらしい。

「確かに…。それだけ可愛いらしい義妹君なら、私が義兄だったとしても溺愛してしまうでしょうね。」

 ……この男は何を言ってるの?

 貴方はバーカー子爵令嬢でも溺愛してればいいのよ。





 二度目の人生で初めてのお茶会は、こんな感じで終わった。

 



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