90 / 125
最後の夜会 1
しおりを挟む
白い結婚まで残り約1ヶ月。
伯爵家を出た後に住む予定の邸は、すでにリフォームを終わらせて家具も配置済み。
邸のすぐ裏には、邸で働く使用人達の寮があって、その寮も綺麗にリフォームしておいたからバッチリ。
邸で働く使用人は、お父様とお母様がすでに手配してくれていた。実家のベネット家の使用人の他に、新しく人を雇い入れるらしい。
これでマイホームの準備は整ったから、伯爵家にある私の荷物をバレないように少しずつ運び出すことに決めた。
苺ジャムの加工場の工事は始まったし、ジャムや高級ジュースを入れる瓶は、お洒落なデザインの瓶を特注で頼んである。現地の責任者と、ジャム作りの経験者を数名採用したし、パートで雇うおばちゃん達は領民から雇うことに決めた。ここまでくれば、あとは何とかなりそうだ。
そして今夜は国王陛下の誕生祭の夜会の日。
数日前からメイド達に磨かれ、今朝は早起きまでして最後の仕上げをされた私は、強制参加の夜会の準備を終えて、出発の時間を迎えた。
「奥様。旦那様が玄関ホールでお待ちになっております。」
「今行くわ。」
ふふ…。伯爵様と夫婦として参加する夜会は、今夜が最後になるわね。
玄関ホールで待ってくれていた伯爵様と一緒に馬車に乗り込む鬼嫁。
「エレノア、今日は久しぶりに君と2人きりで夜会に行けることを嬉しく思っている。
これからはエレノアのエスコートは必ず私がするようにしたいし、次の夜会は私から君にドレスをプレゼントさせて欲しい。」
は…?
「伯爵様。2人きりでいる時にまで、仲良し夫婦を演じなくても大丈夫です。
プレゼントも私には必要ありませんわ。」
「仲良し夫婦など演じてない!
私はただ君を大切にしたいと思っているだけだ。」
今更何言ってんの?
鬼嫁の血が騒いで、色々と言い返してやりたいところだけど、今から夜会に行くのに雰囲気を悪くしたくないし…。今は我慢よ、我慢!
「お気持ちだけ頂いておきますわ。」
「今更だと思っているか…。」
ええ。その通り!
言葉を返すことも面倒な鬼嫁は、聞こえていないフリをして、ひたすら窓の外を眺めることにした。
お互い無言のまま、馬車は王宮に到着する。
伯爵様にエスコートされて大広間に入るが、今日も視線が痛い。
伯爵様とアブスが離縁して、初めての王宮の夜会だからかな。こんな状態で私が白い結婚で伯爵家を出て行ったなんて噂になったら、お騒がせ伯爵家だと思われてしまうな…。
「エレノア。今日はあの女との離縁のことで、また嫌なことを言われるかもしれない。
私は今日はずっとエレノアの側にいるようにするが…。本当に悪いな。」
「いえ。伯爵様が1番お辛い立場なのは理解しておりますので、気になさらないで下さい。」
どうせ来月には、私との白い結婚でまた色々言われるんだから、退場したアブスのことなんかいつまでも気にしていられないのよ。
社交の場でいつも必ずと言っていいほど嫌味を言って絡んでくる、あのいけ好かないエイベル伯爵令嬢は、王子殿下が排除してくれたしね。
王宮の夜会で嫌なことを言われたりしたら、また友人の王子殿下に相談という名目でチクるつもりでいるし。
「エレノア、ありがとう。
私の妻が君で良かったと本当に思っているんだ。」
うっ!鬼嫁のご機嫌取りのためにそんな事を言っているのだろうけど、あんまりそういうことを言われると、少しだけ心が痛むような気がする…。
いや、絆されないわよ。
私は大切な結婚初夜の日、この男に頭の中に向かって除草剤を撒かれたんだから!
お花畑の住人のエレノアも、お花畑に咲いていた沢山の花達もみんな死んだんだからね。
この結婚は後悔しかなかったんだから。
時期が来たら、私はさっさと出ていくんだからね。
そんなことを考えていたら、夜会が始まっていたようだ。
国王陛下に誕生祭のお祝いをお伝えした後に、乾杯してダンスが始まる。
「エレノア、今日は私とダンスをしてくれるか?」
「はい。喜んで。」
夫婦最後のダンスが始まる…。
伯爵家を出た後に住む予定の邸は、すでにリフォームを終わらせて家具も配置済み。
邸のすぐ裏には、邸で働く使用人達の寮があって、その寮も綺麗にリフォームしておいたからバッチリ。
邸で働く使用人は、お父様とお母様がすでに手配してくれていた。実家のベネット家の使用人の他に、新しく人を雇い入れるらしい。
これでマイホームの準備は整ったから、伯爵家にある私の荷物をバレないように少しずつ運び出すことに決めた。
苺ジャムの加工場の工事は始まったし、ジャムや高級ジュースを入れる瓶は、お洒落なデザインの瓶を特注で頼んである。現地の責任者と、ジャム作りの経験者を数名採用したし、パートで雇うおばちゃん達は領民から雇うことに決めた。ここまでくれば、あとは何とかなりそうだ。
そして今夜は国王陛下の誕生祭の夜会の日。
数日前からメイド達に磨かれ、今朝は早起きまでして最後の仕上げをされた私は、強制参加の夜会の準備を終えて、出発の時間を迎えた。
「奥様。旦那様が玄関ホールでお待ちになっております。」
「今行くわ。」
ふふ…。伯爵様と夫婦として参加する夜会は、今夜が最後になるわね。
玄関ホールで待ってくれていた伯爵様と一緒に馬車に乗り込む鬼嫁。
「エレノア、今日は久しぶりに君と2人きりで夜会に行けることを嬉しく思っている。
これからはエレノアのエスコートは必ず私がするようにしたいし、次の夜会は私から君にドレスをプレゼントさせて欲しい。」
は…?
「伯爵様。2人きりでいる時にまで、仲良し夫婦を演じなくても大丈夫です。
プレゼントも私には必要ありませんわ。」
「仲良し夫婦など演じてない!
私はただ君を大切にしたいと思っているだけだ。」
今更何言ってんの?
鬼嫁の血が騒いで、色々と言い返してやりたいところだけど、今から夜会に行くのに雰囲気を悪くしたくないし…。今は我慢よ、我慢!
「お気持ちだけ頂いておきますわ。」
「今更だと思っているか…。」
ええ。その通り!
言葉を返すことも面倒な鬼嫁は、聞こえていないフリをして、ひたすら窓の外を眺めることにした。
お互い無言のまま、馬車は王宮に到着する。
伯爵様にエスコートされて大広間に入るが、今日も視線が痛い。
伯爵様とアブスが離縁して、初めての王宮の夜会だからかな。こんな状態で私が白い結婚で伯爵家を出て行ったなんて噂になったら、お騒がせ伯爵家だと思われてしまうな…。
「エレノア。今日はあの女との離縁のことで、また嫌なことを言われるかもしれない。
私は今日はずっとエレノアの側にいるようにするが…。本当に悪いな。」
「いえ。伯爵様が1番お辛い立場なのは理解しておりますので、気になさらないで下さい。」
どうせ来月には、私との白い結婚でまた色々言われるんだから、退場したアブスのことなんかいつまでも気にしていられないのよ。
社交の場でいつも必ずと言っていいほど嫌味を言って絡んでくる、あのいけ好かないエイベル伯爵令嬢は、王子殿下が排除してくれたしね。
王宮の夜会で嫌なことを言われたりしたら、また友人の王子殿下に相談という名目でチクるつもりでいるし。
「エレノア、ありがとう。
私の妻が君で良かったと本当に思っているんだ。」
うっ!鬼嫁のご機嫌取りのためにそんな事を言っているのだろうけど、あんまりそういうことを言われると、少しだけ心が痛むような気がする…。
いや、絆されないわよ。
私は大切な結婚初夜の日、この男に頭の中に向かって除草剤を撒かれたんだから!
お花畑の住人のエレノアも、お花畑に咲いていた沢山の花達もみんな死んだんだからね。
この結婚は後悔しかなかったんだから。
時期が来たら、私はさっさと出ていくんだからね。
そんなことを考えていたら、夜会が始まっていたようだ。
国王陛下に誕生祭のお祝いをお伝えした後に、乾杯してダンスが始まる。
「エレノア、今日は私とダンスをしてくれるか?」
「はい。喜んで。」
夫婦最後のダンスが始まる…。
213
あなたにおすすめの小説
【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ!
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる