君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

文字の大きさ
89 / 125

パートナーとして

しおりを挟む
 見た目小娘、中身はアラフォーおばちゃんのエレノアです。

 今日はロジャース伯爵領に来ています。
 勿論、愛のない旦那様と一緒に。


 いちごの加工場を建設する候補地を、領主代行をしているパーカー様が見つけてくれたので、私達はその場所を確認しに領地にやって来たのだ。


「エレノア、あそこの土地がカイルが加工場を建てるのに勧めていた場所だ。」

 その場所は、ちょうど住宅地と畑の間にある平坦な土地だった。
 見た感じは悪くなさそうだ。道が狭くはないから馬車で乗り入れするのに問題はなさそうだし、近くに決壊しそうな大きな川があるわけでもないし、土砂崩れが起きそうな山があるわけでもない。
 
「いい土地ですね。広くて平坦ですし。」

「元々は使っていなかった畑だったようだ。」

「では、私の方は加工場の建設をするために、本格的に動こうと思います。
 伯爵様、ありがとうございました。」

「エレノアが気に入ってくれたなら、カイルも喜ぶだろう。」


 その後は、整地した畑やパーカー様が植えてくれたレモンの木を見せてもらった。

 農家が既に育てていた苺の試食もさせてもらった。
 うーん…。やっぱり品種改良が進んでいた前世で食べた苺の方が、甘くて美味しかった気がする。
 不味くはないけど、この世界の苺はそのまま食べるよりもジャムにした方が無難ね。



 今夜も伯爵領にお泊まりだ。


 胡散臭い笑顔のパーカー様が、また夫婦の部屋に案内してくれる。
 ハァー。家庭内別居だから部屋を分けて欲しいと話をしたいくらいだわ。


「エレノア…。今夜は…、その…。」


 部屋の中で2人きりになった私に、伯爵様がモジモジと何かを言っている。


「今、お茶を運んで来てくれるらしいですから、少しお待ち下さいませ。」

「あ、そうだな…。」


 その後、お茶とフルーツが運ばれてくる。
 無言でお茶を飲み干す鬼嫁。そして、そんな私をチラチラと見ている伯爵様。

「伯爵様、何か私に話でもあるのでしょうか?」

「……話と言うほどではない。」

「そうですか。分かりました。」


 ならば結構。無理に聞き出す必要はないわね。

「いや、やはり…。その…。」


 ハッキリしろ!


「言いたいことがあるなら、ハッキリと言って頂けると助かりますが。」

「今夜は……、その…、2人で一緒に寝たい。私達は夫婦なのだし。」


 そんな恥ずかしそうに俯きながら言わないでよ。

 閨のことを言っているの?
 お飾りの妻にそこまで求めるか?最近、図々しくない?


「今夜は一緒の部屋で寝ますわ。それでよろしいですね?」

「エレノアは、またソファーで寝るとか言うのだろう?」

「ええ、勿論ですわ。」

「私達は夫婦なのだから、一緒のベッドで休むくらいは許して欲しい。」


 伯爵様はこの結婚の始まりに自分が何を言ったのかを忘れてしまったのね。
 ふぅー。久しぶりにあのセリフを言ってやるか。


「〝私は君を愛するつもりはない。結婚はしたが、伯爵家のために愛のない結婚をしただけだ。私から愛されたいとも思うな。〟私にそう言ったのは伯爵様です。
 結婚生活の初日に、伯爵様からそのように言われましたので、私は貴方からの愛は求めずに今までやってきました。
 初夜にそう話されたので、私との初夜を拒否されたのだと思いましたし、今後私と伯爵様は閨を共にしないのだと判断しました。
 もしそういうことをしたいと考えるならば、伯爵様が本当に愛する人となさって下さい。
 伯爵家の跡取りが必要なことは理解しておりますので、私は伯爵様が愛人や第二夫人を持つことには反対致しませんわ。」

 
 鬼嫁にそんな泣きそうな表情をしてもムダよ…

 泣きたいのはこの私だったんだから!
 あんなことを結婚初夜に言われたせいで、頭の中のお花畑は一瞬にして枯れてしまったんだからね。

 
「………本当に悪かった。」

「いえ。分かって下さるのならいいのです。
 私達は本物の夫婦にはなれませんでしたが、共同の事業をするパートナーとしては、仲良くやっていきましょうね。」

「それは分かっている…。」



 その日の夜も、私はさっさとソファーに横になって寝てしまった。




 その後、王都に戻った私は、加工場の建設計画や、加工場の責任者探しなどで忙しい日々を過ごすことになる。

 気がつくと、白い結婚を申請出来る日でもある、2度目の結婚記念日まであと1ヶ月になっていた。


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ! ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

処理中です...