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第13章

第38話 呼び出された。 1

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 次の日の朝……、公王であるヴァンスがこの城に滞在している他国の王子、ジークフリードを呼び出した。

 呼び出された王子は執事を連れ、その呼び出しに応じ貴賓室にやって来た。

 その王子と執事が、ベルガモット家の執事マルスに、案内をされて城の廊下を歩くが、ジークフリード王子付の執事マルナスの方は汗が止まらない。
 ハンカチで汗を拭きなから王子の後を歩いて行く。

(不味いです。酔っていたとは言え、昨夜のこの大バカ王子の暴言の事で、呼び出されて居るのでしょう。しかも王子本人は、なにも覚えていないという。朝…王子を起こして、確認しましたが…全く覚えて居ないそうです。これは……不味いです。私があの場に、駆け付けた時にはもう、暴言を吐いた後だったようで。私が駆け付ける前の、会話は知らない。なので汗が止まらない)

 そして、執事のマルスがヴァンス公王が待つ執務室に二人を招き入れたのだった。

「やあ、ごきげんよう。陛下朝から呼び出しとは、何か急ぎの用ですか?」

 なんとも、上から目線で……実に気分が悪いことだと内心思う。
 それに、昨夜の事の詫びの言葉は無いのか?
 何とも……実に良いご教育が為されたようだ。
 他国の王子……嫌王族とは、こうも慇懃無礼が罷り通るものなのか?

「ごきげんよう、ジークフリード殿下殿。さっ、そこに座ってくれたまへ」
「では、失礼するよ」

 どかりとふてぶてしく座る王子に、腹を立てるヴァンスだが。ここでも平静を装う。
 後ろに控える、宰相のダルトとマルスは若干顔が引き釣っているが。   

「それで?こんな朝早くから呼び出されたのは?(朝早く呼びつけてなんなのだ!朝から執事がなにやら騒いで居たが…。そんな物、気にする事もないだろ?)」
「…では、話を始めようか」
「なにかな?(なんだ?この偉そうな態度は?私は王子だぞ!)」

 そもそも、その考えは違うのだが、この王子がその事に気付事は永遠にないだろう。

「貴殿には先ず、その偉そうな態度を改めて頂きたい物だがな。ここは私の国。来賓とはいえ。ここは貴殿からすれば他国だが?それはお分かりか?」
「……それは悪かった。以降改めよう。それで?」

 改めろ言ってるのに一向に態度を、直す事はしないのだな。

 来訪初日から暫くは、態度を控えて居たのだろうが。
 滞在が長くなり王子の態度が、私とアレクの前に出ると横柄に為り始めていた。
 そして、今は開き直ったのか…口調も雑に為って居るのだが…。
 だが、パトリシアの前では猫を被り好青年を装って居ると、影から聞いたのはつい最近だった。

「ふぅ……。それでは、単刀直入に申しあげるが、パトリシアとの婚約の件だが……」

「ほう?それで、王女から言い返事が返ってきたのかな?それなら嬉しい!早速国の父上に報告をして……」

 続きの言葉を言わないうちに王子が言葉を被せて来る。

 ニコニコと笑みを張り付けて、王子が嬉そうな態度を取る。何とも無礼な王子である。
 
 その態度を見るヴァンスは、巫山戯るな!と怒鳴りたい衝動が抑えられないでいるが。
 後ろに控える宰相からの圧が……半端ないので抑え、ポーカーフェイスを顔に張り付けた。

「フフフ、随分と気が早いようだ。まだ、貴殿に返事をしてないのだが?」
「ん?そうだったかな?では、返事は」
「今回の貴殿との話は、御断りさせて頂く。此方に持ってこられた、パトリシアへの贈り物だったか?それをお返しする故え早々に…。嫌、今日の内に国にお帰り願いたい。話はそれだけだ。マルス、お客様のお帰りだ。部屋まで送って差し上げてくれ」
「畏まりました、さあどうぞ此方へ」

 執事のマルスが王子達の退出を促した。

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