極道恋事情

一園木蓮

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身代わりの罠

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「つまり、敵はおそらく通常ホテル内にある備品で仕留めることを考えるはずだ。調理場には包丁もあるし、シェフかサーバーを装えばそれらを持って堂々と場内へ侵入できる。確実にターゲットのみを狙える刺殺で仕掛けてくるだろう。真剣が持ち込めれば、万が一の時に役立つというわけだ」
 また、クラウスの警護には万全の体制で臨むが、夫人の方はメビィに引き続き替え玉役を担ってもらうという。
「幸いにして夫人の顔は広く知られているわけじゃない。メビィの化粧で充分にごまかせるからな。我々としても夫妻を警護するよりクラウスのみに特化する方がより確実だ。メビィ自身も危険には変わりないが、警護はチームのヤツらに丸投げして俺たちは一切面倒を見ないと断言した」
 つまり、クラウスと一緒に夫人役のメビィが狙われても、警護はチームのメンバーで責任を持てということらしい。それが今回息子を陥れようとした制裁だと僚一は言った。
 そうこうしている間にコネクティングルームへと到着した。鐘崎の姿は見えないから、おそらくはまだ隣の特別室で眠らされたままかも知れない。
「行くぞ」
「あ、ああ……」
 僚一に続いて紫月が緊張の面持ちで特別室へと踏み込む。冰だけをコネクティングルームで待たせることにして、周も紫月に続いた。メビィのような女に冰の顔を覚えさせてやる筋合いはないからだ。
 一同が部屋に入ると、ちょうど鐘崎が目を覚ましたばかりといったところだったようだ。リビングのソファで鐘崎が寝ぼけ眼でいて、メビィも側で立っていた。
 驚いたのは鐘崎だ。クラウスの警護についているはずの父親が顔を出したことももちろんだが、紫月と周までが一緒だ。と、タイミングよくか鄧も到着し、いよいよ面子が揃ったところで僚一が制裁に乗り出した。
「メビィ、俺がここへ来た意味が分かるな? お前たちの企ては失脚したということだ」
 そのひと言でメビィは蒼白となった。
 分かっていないのは鐘崎だけだ。
「親父……企てってどういうことだ」
 僚一は数枚の写真を息子の前へと差し出してみせた。
「……なッ!? これはいったい……」
「昨夜撮られたものだ。早朝に裏の世界のニュース掲示板にバラ撒かれた。お前は睡眠薬を食らって嵌められたというわけさ」
「睡眠薬だと……? じゃあ……昨夜ここを狙っていたという敵の監視役ってのは」
「この女の仲間だ。とんでもないことをしでかしてくれたものだ」
 僚一は今夜のパーティーで替え玉作戦が効かなくなり、クラウス本人が出席せざるを得なくなったことや、メビィには引き続き責任をとって夫人役を演じさせる旨を説明した。
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