極道恋事情

一園木蓮

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陰謀

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 これまでは陰謀を疑い、それ有りきで進めてきた調査だが、親子鑑定の結果からすればあの母子の言っていることは事実であり、裏で糸を引いている誰かがいるということも無い――ということになる。
「正直なところ――俺にも信じられんことといえるが、こうなったら認めるしかなかろう」
 周の言葉は平坦で、焦りや憤りといった感情は見受けられない。どちらかといえば諦めや覚悟の感情といったところだろうか。事実を事実として受け止める意思の強さは、ある意味男らしいといえるのだろう。だが、傍で見ている李や鄧にとっては心掻きむしられる思いでもあった。
「――俺はこれからあの母子を訪ねて結果を知らせようと思う。認知など手続きの面でまたお前さん方を煩わせるだろうが――すまねえ」
「老板……。もちろん……私共はどんなことでも精一杯お役に立てるよう……何でもいたす所存でございます……。ですが、冰さんには何と……」
「冰には俺が伝える。あいつさえ良ければ母子のところへも一緒に連れて行くつもりだ」
 周は母子と冰、双方誰にも事実を隠すことなく、ありのままを明かすつもりだと言った。
「母子には俺が冰と結婚していることを告げる。その上で息子を認知し、俺と冰の子供として育てるのか、それとも養育費という面で少しでも父親らしいことができるのか――とにかくは全員の意見を包み隠さず出し合って、とことん話し合って決めるつもりだ」
「老板……」
 李は今にも泣き出しそうになるのを必死に堪えながら肩を震わせている。鄧とて同様だ。自分のミスで検査結果が間違っていたとなってくれた方が嬉しいくらいの心持ちでいる。
 ――と、ここで鄧が思い立ったようにこんなことを口にした。
「ミス……そうか、ミスか――。そうだ、ミス――その可能性だ! 李、お前さんが持ち帰ってくれた息子の毛髪だが……あの時、劉と息子は我々のいたリビングとは扉を隔てたコネクティングルームにいた。劉が息子の毛髪を採取してくれたのでしたね?」
「……その通りだ。まさか劉が採取の際にしくじったとでも?」
「いや、そうではない! 劉がしくじったなどとは思っていませんが――彼が採取した毛髪はどのように手に入れたのかということを今一度詳しく訊きたいのです」
「どうのように……って。劉の話では、息子はあの時飲み物には一切手をつけなかったと聞いている。ただし、我々が隣のコネクティングルームでどんな話をしているのかが気になってか、終始ソワソワと落ち着かなかったそうだ。劉が話し掛けても殆ど応じずに、時折苛立ったように髪を掻きむしっていたとか。その際ソファに落ちた髪を数本、手袋をして採取したと聞いている」
 つまり、ソファから拾ってきた毛髪は間違いなく息子本人のものということになる。
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