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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

43.来客

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ミラルカからの思いもよらぬ来客に、慌てて鍛錬を切り上げ着替えに向かう。
先触れが来たということは、ワイバーンで既に近くまで来ているということだ。
急がないと出迎えに間に合わない。

そして到着を待ったのだが────。

(ディオが遠い…)

俺との関係は戴冠式まで二人にバレるわけにはいかないからと、ディオは敢えてセレナの隣に立った。
『もっと近くに来て欲しい』と言ったのに、『側に居たらくっつきたくなるから』と言われて物凄いジレンマに襲われてしまう。
セレナにも俺が目線だけで好き好き言ってるし、バレたくないなら少し離れた方がいいと言ってこられた。
確かにここ数日で俺とディオは以前にも増して甘い空気が漂ってるから、言われていることもわからなくはない。
でも凄くモヤッとする。

俺からすれば『思う存分ディオとイチャイチャしたいのに、次から次へと邪魔するな!』と言った心境だ。
側妃問題そっちのけでイチャイチャしたい。
いっそのこと戴冠式の日が明日にでも来ればいいのに。


***


「突然のご訪問にもかかわらず、受け入れていただけて感謝致します。ミラルカ皇国皇太子、ブランと皇女ローズマリーがご挨拶させていただきます」
「ルーセウス王子、ディア王女。そしてディオ王子。またお会いできて嬉しく思います」

揃って優雅に挨拶をしてくれて、一先ず客室へと案内すると、あっという間に本題へと入られた。

「ディア王女!貴女がルーセウス王子と婚約してからというもの、夜も眠れないんだ!どうか俺にチャンスをもらいたい!ルーセウス王子。俺は本気で彼女を愛しているんです!どうか俺にチャンスをいただけないでしょうか?!お願いします!」

どうやら一縷の望みをかけての訪問だったらしい。
ここまで本気で愛してるんだと言われたら、俺としては一考の余地はあると思うのだが…。

「どうせ踏まれたいだけでしょう?チャンスを与える気なんてありませんわ。どうぞお帰りを」

バッサリ切り捨てるディア王女にはこれっぽっちも一考の余地がなさそうだ。

「ディア王女!そんなにルーセウス王子のことが好きなのか?!」
「少なくとも貴方よりは好感度は高いですわ」

『本当か?』と思うがここは何も言うまい。
二人の関係をよく知らない俺にできるのは、見守る事くらいだろう。

「ぐ、具体的にどこが好きなんだ?!」
「まず、ルーセウス王子は貴方と違ってとても真っ当な方ですわ」
「俺も真っ当だ!」
「意地悪をしてきたり、罵られて悦ぶような方は真っ当とは言いませんわ」
「そこは努力してちゃんと直す!それならいいだろう?!」
「お断りしますわ」

すげなく振られ、ブラン皇子が俺を睨んでくる。

(が、頑張れ!)

もしかしたら俺がディオに振られ続けた回数以上にディア王女から振られてきたのかもしれないが、俺には心の中でひっそり応援してやることくらいしかできそうにない。

「絶対に俺の方がディア王女を幸せにしてあげられる!国を治める力は絶対に俺の方が上だと思うし、国力もミラルカの方がゴッドハルトよりもずっと大きい!治安だっていいし、財力もあるから絶対に苦労はさせない!だから俺を選んでくれ!」

ブラン皇子がディア王女へと強く訴えるが、どこまでもディア王女はどこ吹く風だった。

「何度も言いますが、お断りですわ。そもそも何をもって幸せと感じるかは人それぞれではありませんか。私は単純脳筋なルーセウス王子は扱いやすくて気に入っておりますの。考え方も健全且つ柔軟ですし、軽口も叩き合えるので一緒にいてとても気楽です。私の行動を縛ることもしてきませんし、自由にさせてもらっています。貴方のように気持ちを押し付けてくることもないので、鬱陶しく感じることもありません。お分かりになられます?私が貴方の手を取る確率はゼロです。どうぞお引き取りを」

けんもほろろとはこの事か。
俺がディオに振られてた時も『無理』の一言だったけど、ディア王女も同じだな。

「ディア王女!」
「愛の重い男やしつこい男は普通嫌われますわよ?」

地味にグサッと刺してこられた。
ディオはそこまで冷たくなかったぞ?
ちょっとブラン皇子に同情する。

「婚約したいなら振り向かせてくれとこれまで散々時間を差し上げたでしょう?これっぽっちも心惹かれなかったので、諦めてくださいませ」
「その嘲笑めいた表情が大好き過ぎるのにっ!」

(……多分そう言うところがダメなんだろうな)

ディオもそうだけど、ディア王女もきっと自国で変態相手にウンザリしていて、結婚相手はそういったところが一切ない相手を選びたいんだろう。
わからなくはない。

「ディオ王子!貴方と俺の仲だろう?頼む!取り持ってくれ!」

しかも今度はディオに頼み始めた。
そんなブラン皇子にディオも困り顔だ。

「うーん…そうは言ってもルーセウスがカッコいいのは本当だし、ブラン皇子に勝ち目はないんじゃないかな?諦めてくれ」

まさかの追い打ち。
まあでもそうだな。
ディオは俺が大好きだもんな。
ここでブラン皇子を加勢したりはしないよな。

「依怙贔屓だ!」
「なんとでも。それよりローズマリー皇女はどうしてこちらへ?」

にこやかに話を変えたディオを見て、もしかしてこれまでもこういったやり取りはよくあったのかもと思えた。
それなら然程気にしなくていいのかもしれない。

「私は兄の付き添いですわ。どうしても諦められないと言うので、女同士少しはお役に立てるかもと思いまして」
「なるほど」
「ディア王女。今日はディア王女がお好きなハーブティーをお持ちしましたの。この後皆で一緒に楽しみませんか?」
「何のハーブティーかしら?」
「カモミールですわ。後はローズヒップティーも。ゴッドハルトでは手に入りにくいかと思いまして」
「いただくわ」

どうやらそれは受け取るらしい。
意外だ。
実は仲が良かったのだろうか?

「ではお茶を飲みながら、惚気話を沢山聞かせていただきたいですわ。それならお兄様も諦めがつくでしょうし。ねえ、ディオ様もそうお思いになられませんか?」
「……そうだな。一理はあるかも」

こうして微妙なお茶会をすることになってしまった。

ちなみにディオ、ディア王女、俺の順で横並びに座り、その対面でローズマリー皇女、ブラン皇子が座る形でのお茶会だ。
ディオが遠いのは何も変わらない。
いっそのことディア王女とブラン皇子の二人、もしくはそこにローズマリー皇女を加えた三人でお茶を飲めばいいのにと思ってしまうが、諦めさせるためとばかりに袖を引かれて逃してはもらえなかった。



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