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110.キャサリン嬢との初対面
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スカーレット嬢を牢から出してミュゼに抱かせて今回の件を終わらせ、後は婚儀を待つだけとなった。
意外だったけどスカーレット嬢は発狂することなくミュゼにベッタリになった。
正気かと問われたなら違うと思うけど。
快楽堕ちしてベッタリ俺に甘えていた時の兄のようになったから傍から見たらラブラブと言えなくもないし、時間と共に元に戻るとは思う。
ただミュゼが『気持ち悪い、寄るな!』といつも逃げてくるから鬱陶しくはあった。
「ミュゼ?婚約者をそんなにぞんざいに扱ってやるな」
「ロキ様!本当に勘弁してください!あんな女と結婚なんて絶対に嫌です!私が悪かったです!いくらでも謝りますからお許しを!」
「ミュゼ?男なら責任を取れ」
「一度寝ただけで責任を取れなんてあんまりです!それを言うならリヒターの方がずっと私と結婚すべきです!これまで何度も私と寝てきたんですから!」
「…………ミュゼ?」
「なんでしょう?」
「お前、リヒターを嵌めたのか?」
「……え?」
「リヒターが真面目な奴だからと言ってそこに付け込んで結婚を画策したのかと言っている」
以前ライオネルもリヒターが真面目なのをいいことに粉をかけようとしていたことがあってきっちり釘を刺したのだが、まさかミュゼまでそんなことを考えていたとは。
「ライオネル」
「はっ!」
「明日にでもミュゼを連れて教会に行き、問答無用でスカーレット嬢と結婚させて来い」
「かしこまりました」
「あと、別室に連れて行ってしっかり調教しておけ」
「御意」
「ひっ?!ロキ様?!」
お許しをと叫ばれるけど許すはずがない。
「全く…」
ミュゼにも困ったものだ。
「リヒター。結婚したい相手はいないのか?」
こんなことになるなら誰かいい相手と早めに結婚させてやりたい。
でもリヒターは困った顔で特にいないと言うばかり。
「カリン陛下にもこの先一生結婚するなと言われてしまっていますし」
「ああ、そう言えば」
キスの件で以前そんなことを言われてしまったんだと思い出す。
「はぁ…しょうがないな。それなら取り敢えず側妃的に俺の────」
『側に置いて虫除けし続けようか』と続けようとしたら、言葉の途中で兄がすっ飛んできて前言撤回するからと叫ばれた。
「リヒター!側妃は許さん!ロキ以外とすぐに結婚しろ!いいな?!」
側妃は認めないからと必死に言い募られて俺はリヒターと顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
「兄上。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。単にさっきのミュゼの言葉を聞いて、何度も寝てると言う意味では側妃にしても周りは不思議に思わないだろうなと思っただけです」
言ってみればただの虫よけ的意味合いで、関係はこれまでと変わりませんよと言ったけど、嫌だ嫌だと可愛く駄々をこねられた。
そんなに嫌がらなくても、俺がリヒターを抱かないってもうわかってるはずなのに。
「ミュゼ…!あいつ、絶対に許さん!」
しかもミュゼにまでそんな風に怒り狂っていた。
「ロキは側妃禁止!リヒターはさっさと結婚相手を探してこい!」
「そうですね。誰かいい方がいればそうさせて頂きます」
「リヒターが結婚するなら盛大に祝いたいな」
「ありがとうございます。でもロキ陛下のことを俺と同じくらい大切に思ってくれる方でないと難しいと思うので、この国では相手が限られてしまうかと」
「そうか」
そう言われてみればなかなか相手探しも難しいのかもしれない。
この国には俺のことが嫌いな貴族令嬢しかいないからだ。
そうなってくると相手はほぼ男になってしまう。
リヒター的にはその辺はどうなんだろう?
リヒターには幸せになってほしいから、誰よりもリヒターを理解してくれる相手と一緒になってもらいたい。
「ちゃんとリヒターにぴったりの相手を見つけてやりたいな」
「ありがとうございます。ロキ陛下のお眼鏡に適う方なら喜んで」
「ああ」
そうして微笑み合ってたら何故か兄にまた焼きもちを妬かれた。
なんでだろう?不思議だ。
それから暫くしてシャイナーがガヴァムへとやってきた。
もっと早く来るかと思っていたけど、どうやら婚約者のキャサリン嬢が止めてくれていたらしい。
「ロキ陛下に改めてご挨拶申し上げます。アンシャンテ王国ミラン侯爵家が三女、キャサリンでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
「初めましてキャサリン嬢。お会いできて嬉しいです。どうぞ気軽にお話しください」
「まあ!嬉しいですわ。ありがとうございます」
ニコニコと微笑みながらこちらに好意的な眼差しを向けてくれるキャサリン嬢にソファを勧め、改めて礼を述べた。
「シャイナーを止めてくれて感謝します」
「いいえ。この方ったらあのツンナガールで話した日から日数を逆算して、到着当日に行くとか言い出したので困りましたわ。旅行後の仕事が溜まって大変な時に行くなんて嫌われたいのかと思ったくらい。本当にドMな人」
「ふふっ。どうせならそのタイミングで二度と来るなと言ってやるのもよかったかもしれませんね」
「あら、それなら余計なことをしてしまったかもしれませんね。うふふ」
「ロ、ロキ?!」
「なんです?」
「来てないし、セーフだろう?!」
「そうですね。言ってやれなくて残念です」
「まあ!やっぱりロキ陛下は楽しい方ですわ。私、今日お会いできるのをとても楽しみにしていたんです」
「俺もです。そうだ、よかったらこれから道具でも見てみませんか?」
「宜しいのですか?」
「ええ。ちょうどブルーグレイでも新しい道具を手に入れたところなので、キャサリン嬢さえ良ければ是非」
「楽しみですわ♪ではシャイナー陛下。こちらで暫く待っていてくださいませ」
「なっ?!俺も行くぞ?!」
「シャイナー。大丈夫なのでここで待っていてください。兄上は一緒に来ますか?」
「行く!」
「ロキ!キャシーが心配だし俺も同席するぞ?!」
「あら。子供ではないので一人で大丈夫ですわ」
「キャサリン嬢もこう言ってくれてますし、シャイナーはここでゆっくりしていてください。そうだ。ブルーグレイでとても気に入ったお茶を買ってきたので、是非それでも楽しみながら待っていてください。どうせすぐに戻ってきますしちょうどいいと思います」
「ロ、ロキの気に入った茶か?」
「ええ。アルメリア姫が選んでくださったんですが、甘みがあって美味しかったので凄くお勧めなんです」
「そうか!それなら是非」
「ええ。ではごゆっくり」
そう言ってシャイナーだけ置いて部屋を出た。
そんな俺にキャサリン嬢がクスクスと笑う。
「お上手ですこと」
『どうせすぐに戻る気なんてないのでしょう?』と暗に言われてしまう。
「だって邪魔じゃありませんか。しつこいですし」
「本当に。言い訳できないのが心苦しいですわ」
「気にしないでください。でも美味しいお茶なのは本当なので、後でキャサリン嬢にもお出ししますね」
「まあ。とても楽しみですわ」
そうやってにこやかに話していると、兄が俺の腕に抱きついてきた。
「ロキ」
「兄上。妬かなくても大丈夫ですよ?」
「でも…」
「カリン陛下。ロキ陛下は道具の使い方を私に教えつつ貴方を愛でるためにこうして連れてこられたのだと思いますし、私もシャイナー陛下の慰め方を学ぶ為に来ているだけですわ。お二人の仲を裂いたりは致しません。どうぞご安心くださいませ」
どちらかと言うとそれをやりそうなのはシャイナーの方だし、邪魔だと言ったのはそのせいですよねと聞かれて思わず笑ってしまった。
「今日はどんなお道具があるのか見せて頂くのと、ザックリと気になった物の使い方だけ伺って帰ろうと思います」
「なかなか豪胆ですね。まさか面と向かってそう言われるとは思いませんでした」
「そうですか?まあ私も色々切実なものがありまして…」
キャサリン嬢が溜め息を吐きながら話してくれたことによると、婚約が決まると同時に城に部屋を与えられ、シャイナーが夜に辛そうにするたびに侍従から呼び出され、シャイナーの部屋に放り込まれたのだとか。
「昼間と違って『辛い、助けて』と縋りながら泣かれまして」
「絆されましたか?」
「いいえ?取り敢えず数少ない閨の知識を駆使して虐めて差し上げましたわ」
「なかなかやりますね」
「処女はまだあげてませんわよ?」
「そうなんですか?」
「ええ。だってそうなったら受け身になって、虐めてあげられなくなってしまいそうでしょう?」
なるほど。そういう考え方もあるのかと勉強になる。
「俺も先日兄に処女をあげましたけど、別に受け身にはなりませんでしたよ?」
「まあロキ陛下!もしやどちらもいけるようになられたのですか?」
「ええ」
「流石ですわ!本当に型にハマらないその広い視野!ご尊敬申し上げます」
「ありがとうございます」
本当にキャサリン嬢は全く動じないどころか凄く普通に言葉を返してくるから驚くほど緊張しなくて済む。
初対面なのにこんなに自然体で話せる令嬢も珍しい。
しかも衒いなく純粋にサラリと持ち上げてくれるから気持ちも上向くというものだ。
(シャイナーは良い人を見つけたな)
素直にそう思う。
リヒターの相手もこんな感じの人ならいいのに。
「男性は王族だと『初めて』は大体教育の一環で失われますもの。ロキ陛下的に処女だけでもカリン陛下にあげられて良かったのでは?」
「そうですね。でも処女だけじゃないですよ?俺の初めてはどちらも兄上なので」
「え?!」
「まあ!そうなのですか?とても素敵ですわね」
「ええ」
そうやってにこやかに話していたのに何故か滅茶苦茶兄に驚かれた。
「ロ、ロキ?今幻聴が聞こえた気がするんだが?」
幻聴?何かおかしなことでも聞こえたんだろうか?
「お前…15の時に房事の教育は受けなかったのか?」
「え?受けましたよ?」
「その時実践もあっただろう?」
「ありませんでしたけど?」
「え?!」
「あの時やってきた教師に教わったのは『適当に愛撫して潤ったところで挿入して出したら終わりです。惜しみない愛撫を』だけだったので一瞬で終わりましたね」
今から思えば適当もいいところだ。
『適当に愛撫』と言いつつ『惜しみない愛撫を』と言っているのだから。
その後レンバーに『笑みを絶やさず相手の反応をちゃんと見ながら愛撫し、時折キスでリラックスさせながら丁寧に抱くんだ』と教えてもらったから一応一般常識的にそれが正しいやり方と認識はしているし問題はないけれど。
「まあ…随分雑な教わり方をなさったのですね。お気の毒です」
「いえ。その後知り合いにちゃんとしたやり方を聞いたので、大丈夫でしたよ?」
「そうですか。ではそのまま実践することなくカリン陛下と?」
「ええ」
「それはもう運命ですわね」
「そう言っていただけると嬉しいです」
本で知識は得たり、酒場や闇医者のところで色々教わってはいたけど、実際の現場を見たのは男達が兄を犯しているところだけ。
だから余計に興奮したし、あれだけ他の男達に抱かれていたら初めての自分でも大丈夫な気がしたのだ。
兄はちょっと壊れ気味だったけど凄く悦んでくれたし、その後も俺に抱かれる度に全部喜んで受け入れてくれて、甘えて懐いて俺だけって言ってくれて…。
(可愛かったな…)
今も十分可愛いけど。
(そう言えば確か最初の頃、いつだったか『沢山の男達に組み敷かれるより俺一人の方が嬉しいでしょう?』って聞いたら、『嫌だ』とも言われたんだよな…)
だから余計に自分だけじゃ経験不足過ぎて、十分に満足させてあげられないような気持ちになるのかもしれない。
俺の実践は全部兄を通して学んだものだから、これでいいのか実はよくわかっていない。
兄がブルーグレイの拷問官に色々教え込まれて帰ってきたのは知っていたから、父から兄を貰い受けた後自分なりに色々調べてみたり、こっそり牢に足を運んで尋問官に話を聞いてみたりして、それらを駆使して兄を抱いていた。
リヒターが加わってからはいき過ぎた行動をしていたら止めてくれたり、別の方法…責め過ぎるより縛り方を学んでみては等他の方法を教えてくれたりしたものだけど、それもいつの間にかなくなったから、今は多分常識範囲内にはおさまっているのかなと思ってはいるけど…。
取り敢えず『兄が悦んでくれる』というのが俺の中の基準だから兄が望むならどんな事にでも挑戦はしてみるつもりだけど、無能と言われ続けてきた自分だし自信なんてそうそう持てるはずもなかった。
『どうしたらより一層兄に悦んでもらえるのか?』────それは常に俺の課題だった。
(まあ俺の性癖もあるからそこは諸々許して欲しいけど…)
兼ね合いと落とし所でいくと、今がちょうどいいのかもしれないとは思う。
そんな事をつらつら考えていると、兄が愕然とした表情で何やら呟いていた。
よく聞こえなかったけど────童貞だった?と聞こえたような…。
(もしかしてやっぱり経験不足がネックだったとか…?)
これまで努力はしてきたつもりだけど…もしそうだったらどうしよう?
乱交パーティーでも開いていろんなテクニックを沢山観察して研究した方がいいんだろうか?
(でも…ブルーグレイの拷問官達を見ても、そこまで俺が下手とは思わなかったんだけどな…)
とは言え兄にダメ出しをされたら意味がない。
拷問官達だって当然限られた時間の中できることも限られていただろうし。
でも兄とはちゃんと一から愛を育んできたつもりだし、経験不足だとしても愛情だけは疑われたくはないなと思う。
(後でそこだけはしっかり伝えておかないと)
またすれ違いたくはないし、ちゃんと話し合おう。
「さあ、じゃあ説明しますね」
そして部屋のテーブルに各種道具を広げて一通り使い方等を説明していったのだけど、キャサリン嬢は凄く楽しそうにこんなに色々あるんですかとはしゃいで、ウキウキしながら質問してくれたのでこちらも嬉しくなって丁寧に説明してあげた。
プジーの方は使うのがちょっと怖いと言っていたので、大丈夫だと言いながら握りこぶしを作らせてそこに挿しこみ、兄とのあれこれの経験を踏まえながら上手く伝えてみた。
「こう、ズボッと勢いよく挿れたらちょっと手が痛いでしょう?」
「はい」
「なのでゆっくりこんな感じでじわっと挿れていくんです」
デリケートなところに挿れるので慣れるまでは丁寧にと教えてあげた。
「あ、萎えてると難しいので半分くらい勃たせてからやった方がやりやすいと思います」
「なるほど。勉強になります」
そうやって二人で話してたら兄が「女なのに全くこういうことに抵抗がないってどうなんだ?!」とか小さい声でこぼしていた。
「兄上。偏見は良くないですよ?」
「えぇ?!」
「キャサリン嬢が覚えてくれればくれるほどシャイナーに横槍を入れられなくなるんですよ?」
寧ろありがたいじゃないですかと口にしたら、渋々ではあったもののコクリと頷いてくれた。
「寂しい気持ちにさせた分、後で沢山気持ちを伝えさせてください」
そうしてそっと囁いたら嬉しそうにしてくれたし、大丈夫だと信じたい。
取り敢えず、シャイナー達が帰ったら『乱交パーティーってどう思います?』って聞いてみようかな?
****************
※ロキの質問にカリンはどう答えるでしょう?
①「絶対に死んでも嫌だ!」(取り敢えず全拒否)
②「俺はロキと二人きりがいいから、特にしたいとは思わないな」(懐柔策をとりつつ断る)
③「どうして急にそんなことを聞いてきた?」(理由を聞く)
意外だったけどスカーレット嬢は発狂することなくミュゼにベッタリになった。
正気かと問われたなら違うと思うけど。
快楽堕ちしてベッタリ俺に甘えていた時の兄のようになったから傍から見たらラブラブと言えなくもないし、時間と共に元に戻るとは思う。
ただミュゼが『気持ち悪い、寄るな!』といつも逃げてくるから鬱陶しくはあった。
「ミュゼ?婚約者をそんなにぞんざいに扱ってやるな」
「ロキ様!本当に勘弁してください!あんな女と結婚なんて絶対に嫌です!私が悪かったです!いくらでも謝りますからお許しを!」
「ミュゼ?男なら責任を取れ」
「一度寝ただけで責任を取れなんてあんまりです!それを言うならリヒターの方がずっと私と結婚すべきです!これまで何度も私と寝てきたんですから!」
「…………ミュゼ?」
「なんでしょう?」
「お前、リヒターを嵌めたのか?」
「……え?」
「リヒターが真面目な奴だからと言ってそこに付け込んで結婚を画策したのかと言っている」
以前ライオネルもリヒターが真面目なのをいいことに粉をかけようとしていたことがあってきっちり釘を刺したのだが、まさかミュゼまでそんなことを考えていたとは。
「ライオネル」
「はっ!」
「明日にでもミュゼを連れて教会に行き、問答無用でスカーレット嬢と結婚させて来い」
「かしこまりました」
「あと、別室に連れて行ってしっかり調教しておけ」
「御意」
「ひっ?!ロキ様?!」
お許しをと叫ばれるけど許すはずがない。
「全く…」
ミュゼにも困ったものだ。
「リヒター。結婚したい相手はいないのか?」
こんなことになるなら誰かいい相手と早めに結婚させてやりたい。
でもリヒターは困った顔で特にいないと言うばかり。
「カリン陛下にもこの先一生結婚するなと言われてしまっていますし」
「ああ、そう言えば」
キスの件で以前そんなことを言われてしまったんだと思い出す。
「はぁ…しょうがないな。それなら取り敢えず側妃的に俺の────」
『側に置いて虫除けし続けようか』と続けようとしたら、言葉の途中で兄がすっ飛んできて前言撤回するからと叫ばれた。
「リヒター!側妃は許さん!ロキ以外とすぐに結婚しろ!いいな?!」
側妃は認めないからと必死に言い募られて俺はリヒターと顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
「兄上。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。単にさっきのミュゼの言葉を聞いて、何度も寝てると言う意味では側妃にしても周りは不思議に思わないだろうなと思っただけです」
言ってみればただの虫よけ的意味合いで、関係はこれまでと変わりませんよと言ったけど、嫌だ嫌だと可愛く駄々をこねられた。
そんなに嫌がらなくても、俺がリヒターを抱かないってもうわかってるはずなのに。
「ミュゼ…!あいつ、絶対に許さん!」
しかもミュゼにまでそんな風に怒り狂っていた。
「ロキは側妃禁止!リヒターはさっさと結婚相手を探してこい!」
「そうですね。誰かいい方がいればそうさせて頂きます」
「リヒターが結婚するなら盛大に祝いたいな」
「ありがとうございます。でもロキ陛下のことを俺と同じくらい大切に思ってくれる方でないと難しいと思うので、この国では相手が限られてしまうかと」
「そうか」
そう言われてみればなかなか相手探しも難しいのかもしれない。
この国には俺のことが嫌いな貴族令嬢しかいないからだ。
そうなってくると相手はほぼ男になってしまう。
リヒター的にはその辺はどうなんだろう?
リヒターには幸せになってほしいから、誰よりもリヒターを理解してくれる相手と一緒になってもらいたい。
「ちゃんとリヒターにぴったりの相手を見つけてやりたいな」
「ありがとうございます。ロキ陛下のお眼鏡に適う方なら喜んで」
「ああ」
そうして微笑み合ってたら何故か兄にまた焼きもちを妬かれた。
なんでだろう?不思議だ。
それから暫くしてシャイナーがガヴァムへとやってきた。
もっと早く来るかと思っていたけど、どうやら婚約者のキャサリン嬢が止めてくれていたらしい。
「ロキ陛下に改めてご挨拶申し上げます。アンシャンテ王国ミラン侯爵家が三女、キャサリンでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
「初めましてキャサリン嬢。お会いできて嬉しいです。どうぞ気軽にお話しください」
「まあ!嬉しいですわ。ありがとうございます」
ニコニコと微笑みながらこちらに好意的な眼差しを向けてくれるキャサリン嬢にソファを勧め、改めて礼を述べた。
「シャイナーを止めてくれて感謝します」
「いいえ。この方ったらあのツンナガールで話した日から日数を逆算して、到着当日に行くとか言い出したので困りましたわ。旅行後の仕事が溜まって大変な時に行くなんて嫌われたいのかと思ったくらい。本当にドMな人」
「ふふっ。どうせならそのタイミングで二度と来るなと言ってやるのもよかったかもしれませんね」
「あら、それなら余計なことをしてしまったかもしれませんね。うふふ」
「ロ、ロキ?!」
「なんです?」
「来てないし、セーフだろう?!」
「そうですね。言ってやれなくて残念です」
「まあ!やっぱりロキ陛下は楽しい方ですわ。私、今日お会いできるのをとても楽しみにしていたんです」
「俺もです。そうだ、よかったらこれから道具でも見てみませんか?」
「宜しいのですか?」
「ええ。ちょうどブルーグレイでも新しい道具を手に入れたところなので、キャサリン嬢さえ良ければ是非」
「楽しみですわ♪ではシャイナー陛下。こちらで暫く待っていてくださいませ」
「なっ?!俺も行くぞ?!」
「シャイナー。大丈夫なのでここで待っていてください。兄上は一緒に来ますか?」
「行く!」
「ロキ!キャシーが心配だし俺も同席するぞ?!」
「あら。子供ではないので一人で大丈夫ですわ」
「キャサリン嬢もこう言ってくれてますし、シャイナーはここでゆっくりしていてください。そうだ。ブルーグレイでとても気に入ったお茶を買ってきたので、是非それでも楽しみながら待っていてください。どうせすぐに戻ってきますしちょうどいいと思います」
「ロ、ロキの気に入った茶か?」
「ええ。アルメリア姫が選んでくださったんですが、甘みがあって美味しかったので凄くお勧めなんです」
「そうか!それなら是非」
「ええ。ではごゆっくり」
そう言ってシャイナーだけ置いて部屋を出た。
そんな俺にキャサリン嬢がクスクスと笑う。
「お上手ですこと」
『どうせすぐに戻る気なんてないのでしょう?』と暗に言われてしまう。
「だって邪魔じゃありませんか。しつこいですし」
「本当に。言い訳できないのが心苦しいですわ」
「気にしないでください。でも美味しいお茶なのは本当なので、後でキャサリン嬢にもお出ししますね」
「まあ。とても楽しみですわ」
そうやってにこやかに話していると、兄が俺の腕に抱きついてきた。
「ロキ」
「兄上。妬かなくても大丈夫ですよ?」
「でも…」
「カリン陛下。ロキ陛下は道具の使い方を私に教えつつ貴方を愛でるためにこうして連れてこられたのだと思いますし、私もシャイナー陛下の慰め方を学ぶ為に来ているだけですわ。お二人の仲を裂いたりは致しません。どうぞご安心くださいませ」
どちらかと言うとそれをやりそうなのはシャイナーの方だし、邪魔だと言ったのはそのせいですよねと聞かれて思わず笑ってしまった。
「今日はどんなお道具があるのか見せて頂くのと、ザックリと気になった物の使い方だけ伺って帰ろうと思います」
「なかなか豪胆ですね。まさか面と向かってそう言われるとは思いませんでした」
「そうですか?まあ私も色々切実なものがありまして…」
キャサリン嬢が溜め息を吐きながら話してくれたことによると、婚約が決まると同時に城に部屋を与えられ、シャイナーが夜に辛そうにするたびに侍従から呼び出され、シャイナーの部屋に放り込まれたのだとか。
「昼間と違って『辛い、助けて』と縋りながら泣かれまして」
「絆されましたか?」
「いいえ?取り敢えず数少ない閨の知識を駆使して虐めて差し上げましたわ」
「なかなかやりますね」
「処女はまだあげてませんわよ?」
「そうなんですか?」
「ええ。だってそうなったら受け身になって、虐めてあげられなくなってしまいそうでしょう?」
なるほど。そういう考え方もあるのかと勉強になる。
「俺も先日兄に処女をあげましたけど、別に受け身にはなりませんでしたよ?」
「まあロキ陛下!もしやどちらもいけるようになられたのですか?」
「ええ」
「流石ですわ!本当に型にハマらないその広い視野!ご尊敬申し上げます」
「ありがとうございます」
本当にキャサリン嬢は全く動じないどころか凄く普通に言葉を返してくるから驚くほど緊張しなくて済む。
初対面なのにこんなに自然体で話せる令嬢も珍しい。
しかも衒いなく純粋にサラリと持ち上げてくれるから気持ちも上向くというものだ。
(シャイナーは良い人を見つけたな)
素直にそう思う。
リヒターの相手もこんな感じの人ならいいのに。
「男性は王族だと『初めて』は大体教育の一環で失われますもの。ロキ陛下的に処女だけでもカリン陛下にあげられて良かったのでは?」
「そうですね。でも処女だけじゃないですよ?俺の初めてはどちらも兄上なので」
「え?!」
「まあ!そうなのですか?とても素敵ですわね」
「ええ」
そうやってにこやかに話していたのに何故か滅茶苦茶兄に驚かれた。
「ロ、ロキ?今幻聴が聞こえた気がするんだが?」
幻聴?何かおかしなことでも聞こえたんだろうか?
「お前…15の時に房事の教育は受けなかったのか?」
「え?受けましたよ?」
「その時実践もあっただろう?」
「ありませんでしたけど?」
「え?!」
「あの時やってきた教師に教わったのは『適当に愛撫して潤ったところで挿入して出したら終わりです。惜しみない愛撫を』だけだったので一瞬で終わりましたね」
今から思えば適当もいいところだ。
『適当に愛撫』と言いつつ『惜しみない愛撫を』と言っているのだから。
その後レンバーに『笑みを絶やさず相手の反応をちゃんと見ながら愛撫し、時折キスでリラックスさせながら丁寧に抱くんだ』と教えてもらったから一応一般常識的にそれが正しいやり方と認識はしているし問題はないけれど。
「まあ…随分雑な教わり方をなさったのですね。お気の毒です」
「いえ。その後知り合いにちゃんとしたやり方を聞いたので、大丈夫でしたよ?」
「そうですか。ではそのまま実践することなくカリン陛下と?」
「ええ」
「それはもう運命ですわね」
「そう言っていただけると嬉しいです」
本で知識は得たり、酒場や闇医者のところで色々教わってはいたけど、実際の現場を見たのは男達が兄を犯しているところだけ。
だから余計に興奮したし、あれだけ他の男達に抱かれていたら初めての自分でも大丈夫な気がしたのだ。
兄はちょっと壊れ気味だったけど凄く悦んでくれたし、その後も俺に抱かれる度に全部喜んで受け入れてくれて、甘えて懐いて俺だけって言ってくれて…。
(可愛かったな…)
今も十分可愛いけど。
(そう言えば確か最初の頃、いつだったか『沢山の男達に組み敷かれるより俺一人の方が嬉しいでしょう?』って聞いたら、『嫌だ』とも言われたんだよな…)
だから余計に自分だけじゃ経験不足過ぎて、十分に満足させてあげられないような気持ちになるのかもしれない。
俺の実践は全部兄を通して学んだものだから、これでいいのか実はよくわかっていない。
兄がブルーグレイの拷問官に色々教え込まれて帰ってきたのは知っていたから、父から兄を貰い受けた後自分なりに色々調べてみたり、こっそり牢に足を運んで尋問官に話を聞いてみたりして、それらを駆使して兄を抱いていた。
リヒターが加わってからはいき過ぎた行動をしていたら止めてくれたり、別の方法…責め過ぎるより縛り方を学んでみては等他の方法を教えてくれたりしたものだけど、それもいつの間にかなくなったから、今は多分常識範囲内にはおさまっているのかなと思ってはいるけど…。
取り敢えず『兄が悦んでくれる』というのが俺の中の基準だから兄が望むならどんな事にでも挑戦はしてみるつもりだけど、無能と言われ続けてきた自分だし自信なんてそうそう持てるはずもなかった。
『どうしたらより一層兄に悦んでもらえるのか?』────それは常に俺の課題だった。
(まあ俺の性癖もあるからそこは諸々許して欲しいけど…)
兼ね合いと落とし所でいくと、今がちょうどいいのかもしれないとは思う。
そんな事をつらつら考えていると、兄が愕然とした表情で何やら呟いていた。
よく聞こえなかったけど────童貞だった?と聞こえたような…。
(もしかしてやっぱり経験不足がネックだったとか…?)
これまで努力はしてきたつもりだけど…もしそうだったらどうしよう?
乱交パーティーでも開いていろんなテクニックを沢山観察して研究した方がいいんだろうか?
(でも…ブルーグレイの拷問官達を見ても、そこまで俺が下手とは思わなかったんだけどな…)
とは言え兄にダメ出しをされたら意味がない。
拷問官達だって当然限られた時間の中できることも限られていただろうし。
でも兄とはちゃんと一から愛を育んできたつもりだし、経験不足だとしても愛情だけは疑われたくはないなと思う。
(後でそこだけはしっかり伝えておかないと)
またすれ違いたくはないし、ちゃんと話し合おう。
「さあ、じゃあ説明しますね」
そして部屋のテーブルに各種道具を広げて一通り使い方等を説明していったのだけど、キャサリン嬢は凄く楽しそうにこんなに色々あるんですかとはしゃいで、ウキウキしながら質問してくれたのでこちらも嬉しくなって丁寧に説明してあげた。
プジーの方は使うのがちょっと怖いと言っていたので、大丈夫だと言いながら握りこぶしを作らせてそこに挿しこみ、兄とのあれこれの経験を踏まえながら上手く伝えてみた。
「こう、ズボッと勢いよく挿れたらちょっと手が痛いでしょう?」
「はい」
「なのでゆっくりこんな感じでじわっと挿れていくんです」
デリケートなところに挿れるので慣れるまでは丁寧にと教えてあげた。
「あ、萎えてると難しいので半分くらい勃たせてからやった方がやりやすいと思います」
「なるほど。勉強になります」
そうやって二人で話してたら兄が「女なのに全くこういうことに抵抗がないってどうなんだ?!」とか小さい声でこぼしていた。
「兄上。偏見は良くないですよ?」
「えぇ?!」
「キャサリン嬢が覚えてくれればくれるほどシャイナーに横槍を入れられなくなるんですよ?」
寧ろありがたいじゃないですかと口にしたら、渋々ではあったもののコクリと頷いてくれた。
「寂しい気持ちにさせた分、後で沢山気持ちを伝えさせてください」
そうしてそっと囁いたら嬉しそうにしてくれたし、大丈夫だと信じたい。
取り敢えず、シャイナー達が帰ったら『乱交パーティーってどう思います?』って聞いてみようかな?
****************
※ロキの質問にカリンはどう答えるでしょう?
①「絶対に死んでも嫌だ!」(取り敢えず全拒否)
②「俺はロキと二人きりがいいから、特にしたいとは思わないな」(懐柔策をとりつつ断る)
③「どうして急にそんなことを聞いてきた?」(理由を聞く)
応援ありがとうございます!
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