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第五章 レイクウッド王国編(只今愛の試練中)

116.助けられた俺ときっちり報復した俺

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※今回ルマンドの報復がちょっと過激です。残酷な表現が含まれますので、苦手な方はお気を付けください。

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指輪に守られて安心して寝てたらメイビスが助けに来てくれた。
こんな状況の俺を颯爽と助けに来てくれるなんてどこまで『王子』なんだと感動してしまう。
もう俺、メイビスと一緒なら一生ロマンチックに浸れるんじゃないかな?幸せ。

それはさておき俺の置かれている状況を整理するとどうやら俺は二重に攫われたらしいことが分かった。
一つは母のと言うかレイクウッドのしきたりの一環。こちらはほぼ害はなくて、多分だけどメイビスを試すために俺を取り敢えずレイクウッドに運びたかっただけなんだろうと思う。ついでに一度も会ったことのない俺の祖父にあたるレイクウッドの王に俺を会わせたかっただけだろう。
ただ普通に話を持ってこられても俺はかなり渋っただろうし、時間もなかったから(なにせコーリックに帰るのは一日だけの予定だった)俺より冒険者ランクが高いヒースに頼んで気絶させ、後で説明するつもりで攫ったのだと思う。
けれどそこで予想外に別件の拉致事件が起こった…と。
そっちはどうやらメイビスの婚約者になった俺が気に入らない輩がやったようで、多分だけど母が色々手配しているのを察して船に潜入していたのだと思う。
メイビスがコーリックに帰る前に三日の猶予を持たせていたから、そこで相手に準備の隙を与えてしまったんだろう。
そして首尾よく俺を誘拐。実に手際がいい。
暗部が強いのか、それとも抱えている者の仕事レベルが高いのかどちらかだろう。

にしても今回は自分の弱点を突かれたようで非常に腹立たしかった。
まさか思考力を奪う薬を盛られたら魔法が使えなくなるなんて盲点も良いところだ。

「薬物耐性をもっと上げよう」

ポツリと言ったら、病気になった時に薬が効きにくくなるから良し悪しですよとニックからすかさず忠告を受けた。
それは確かにそうかも。……難しいな。

「で?お前が怒ってるのはわかったが、どうする気だ?」
「え?もちろん直接会って話すつもりだけど?」
「素直に話すわけねぇだろ。煙に巻かれるに決まってる」
「う~ん…腕、斬り飛ばせば認めるんじゃないかな?」

にっこり笑ってそう言うと、メイビスは驚き過ぎて目を見開いていたが父は意外にも冷静だった。

「それは国際問題になるぞ?」
「すぐに治せばいいんですよ。証拠なんて残りません」
「ルマンド…お前なぁ」
「だってヒースが昔教えてくれたんだろ?魔物に食い千切られた腕を治すのはエクストラヒールが必要だけど、腕が無事ならヒールでくっつければ治るじゃねぇか。恐れず戦えって」
「お前…もしかしてやったことあるのか?」
「あるけど?」

どうしても魔物の攻撃を避けられないタイミングで喰いつかれそうになった時、自分の腕を咄嗟に切り落として回避したことがある。
すぐに身体強化した足で魔物を蹴り飛ばし、腕を拾ってマジックバッグに入れてダッシュで魔物を倒した後、ヒールで頑張ってくっつけたのだ。あれは滅茶苦茶痛かった。

「あの時でレベル42くらいだったかな。泣きながらくっつけたの…今じゃいい思い出だな~」
「お前なぁ…」

呆れたように深い溜息を吐いたヒースにアハハと笑って、だからこそできるんだよと笑ってやる。

「Aランク冒険者に喧嘩を売ったんだから、それくらい覚悟してもらわないとな」

犯した罪は重いぞと口にする俺にニックがルマンド殿下って怒らせると本当に怖いですね~と言ってきた。
うん。ニックはこの間ちょっと体感したもんな。実感籠ってる!




それからその問題の王族のところまで行くと案の定しらばっくれられたので、速度上昇を掛けた状態で滅茶苦茶素早く腕を切り落としてやった。

「いやぁああぁあっ!」
「ひっ、ひぃっ!ル…ルマンド王子?!一体何を?!」

王族の二人が腰を抜かしてこちらを非難してくるけど、俺は敢えて相手の言葉を借りて冷たく返す。

「俺が何か?俺が切り落とした瞬間を誰か見たんですか?見てないですよね?証拠もないのに責めるのは間違ってるんじゃないですか?言い掛かりですよ?…………さっきお前達が言ったことと同じこと言われてどんな気持ちだ?俺は全力の謝罪を要求する」
「ひ、ひぃいっ!人殺しッ!」
「同罪だろ」
「こ、国際問題になりますわよ!」
「ここに父が来ている時点ですでになってる。戦争の火種になってないだけマシだろ?」
「し、死ぬ!死ぬぅぅうぅッ!助けて!死んでしまいますわー!!」
「俺のヒールですぐ治るし」
「た、助けて!助けてください~!!」
「じゃあちゃんと謝れば?」
「ご、ごめんなさい────!もう二度と手出しは致しません!どうかご慈悲を!」
「最初からそう言えばいいだろ?ほら、ヒール。ついでに造血魔法もおまけするから安心して?」

治し終わった頃には王女の顔は涙でグチャグチャで、一緒にいた兄らしき王子は蒼白になりながらその場にへたり込んで震えていた。
さっきまで不遜な態度だったのに弱いな。

「ほら、もう泣かない。折角綺麗な腕してるんだからさ、こんな悪いことに手を染めないでもっと人助けとかそういうことに使った方がいいと思う。メイビスはあげられないけど、良い方に変わった姫を見ていいなって言ってくれる人は絶対いるから。自信もって?」

女の子にはちゃんとフォローだって入れて優しくするけど、王子には絶対フォロー入れないからな?自力で立ち直れよ。
と言うか王子の腕を斬ればよかったな。
姫から挑発されてちょっと暴走してしまったのは反省すべき点だ。

「ル…ルマンド王子……」

でも目を潤ませながらちゃんと反省している様子の姫はきっともう俺にちょっかいをかけてくることはないだろう。
俺的にももう報復は済んだし、さて、帰るとするか。
そう思って立ち上がったら後ろからメイビスに抱きしめられた。
なんで??

「ルマンド…こんな風に目の前で見初められてる姿なんて見たくない」
「へ?」

メイビスは何を言ってるんだろ?普通自分の腕斬り飛ばした相手なんて怖くて惚れたりしないと思うんだけど?

「やっぱり帰ったら別荘に監禁していいか?独り占めしておかないと誰かに取られそうで嫌だ」
「だからそれは嫌だって言っただろ?それよりダンジョン行こうって言ったじゃないか。今ならリヴァイアサン倒せるかな?ロマンチックな鍾乳洞の湖一緒に見に行かないか?俺、そこでプロポーズしたかったくらい楽しみにしてるんだ!メイビスとデートに行きたいな」
「ぐっ…!それじゃあ明日にでも一緒に行こうか……」
「やった!楽しみにしてる!」

「…………すっかり尻に敷かれてるな」
「ルマンド殿下って何気に凄いですよね。相手を病ませることなく健全に戻すだなんてなかなかできませんよ」
「ルマンド様はいつもこうですよ?だから好きなんです」
「血のなせる業か。憎めないところが妻にそっくりだ…」

ヒースやケイン達が何やら言っていたけど、メイビスはいつも俺には優しいからこんなものだと思うけど?


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※ルマンドが慎重に安全第一に戦うようになったのはこのレベル42の時の一件以降だったりします。


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