代理婚!

オレンジペコ

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夫婦はやっと同居中!

38.奪うために Side.マドラス

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学園を卒業し、好きな奴と毎日会うことができなくなった。
それでも次に会った時はガンガン口説きに行こうと思って、卒業と共に入団した騎士団で頑張ってた。
俺の想い人であるラインハルトは目下のところ憧れの冒険者になるという夢のために一生懸命で、女と結婚する心配は皆無。
絶対女の方から呆れて逃げてくだろってわかってたから、目下のところ一番のライバルであるエドワルドと互いに牽制し合っていたというのに…。

「あの野郎…抜け駆けしやがって!」

俺を出し抜いて、もう限界とばかりにラインハルトに一人で会いに行ったらしい。
そうしたらラインハルトは何故か姉の代わりに嫁に出されてて、『どうせすぐに帰ってくるから帰ってきたらまた遊びに来てちょうだい』とサラリと流されそうになったんだとか。
後から聞いて思い切り驚いた。
なんでだよ、と。

俺の嫁にする気だったラインハルトが無理矢理嫁に出されただと?
姉の代わりに?
意味不明にも程がある。

相手は当然騙されたと怒り狂うだろうし、ラインハルトがとばっちりを受けて酷い目に合わないかだけが心配だった。
無事に帰ってきてほしい。
そう思ってたのに、エドワルドはまたしても抜け駆けしやがった。
然程日を置くことなくラインハルトの姉に交渉しに行って、ラインハルトが帰ってきたら嫁にもらいたいと許可をもぎ取ってきたそうだ。

(こ、こいつ…!)

何が『もう誰かに奪われたくないから先に手を打った。悪いな』だ!
俺と正々堂々と奪い合おうって約束しただろうが?!
しかも本人そっちのけで決めるなんて騎士道精神にも反する行為だ。

「ラインハルトは絶対頷かねぇぞ?!」
「それはどうかな。実はラインハルトの姉さんが俺とのことを手紙に書いておいてくれたらしいんだ。で、ほらこれ、ラインハルトから俺宛に来た手紙。フッ…どこにも嫌って書かれてないんだ。これって、つまり了承してもらえたってことだよな?」

あからさまに俺に勝ったという顔で見せつけてくるエドワルドに物凄く腹が立った。

(この策士が!!)

これはもう絶対に黙ってはいられない。
ラインハルト本人のところに行って問い質し、そのまま掻っ攫ってやると俺は意気込んだ。

でも蓋を開けてみればラインハルトはやっぱりエドワルドなんか眼中になくて、離婚する気はないときたもんだ。
どうやら冒険者に憧れすぎるあまり、Aランク冒険者の夫にぞっこんになってしまったらしい。
向こうもどうやらラインハルトに夢中のようだし、別れる気なんてこれっぽっちもなさそうでイライラした。
エドワルドに奪われるのも腹が立つが、何の苦労もなく俺のラインハルトを手に入れたこの男にもより一層腹が立つ。

(チッ…なんだそりゃ。棚ぼたで横から掻っ攫いやがって!)

こんなことになるのなら俺だって騎士団に入るんじゃなく冒険者になっておけばよかった。
そうしたらラインハルトに良いところを見せられただろうし、その流れで惚れてもらえたかもしれないのに。

(悔しい…!)

まさかこんな形でずっと好きだった奴を諦めなければならなくなるなんて。
いや。待てよ?まだチャンスはあるかもしれない。

ラインハルトは旦那の家で肩身の狭い思いをしているようだし、姉の代わりに嫁いだだけあって義両親にも何も知らせていない様子だった。
これは上手くやれば離婚に持ち込めるんじゃないか?

(ハハッ。いいな。いいぜ。あの澄ましたシーファスの野郎も、腹黒なエドワルドも、二人揃って出し抜いてラインハルトを手に入れてやる…!)

そのためにもしっかり計画は立てておかないといけない。

(どうしてやるかな……)

まずはラインハルトべったりなあの男を引き離し、二人きりで話せる状況を作りたい。
それをするなら────。

「気は乗らねぇが、パーティーにでも招待するか」

俺の実家は侯爵家だ。
それに比べてラインハルトの嫁ぎ先は伯爵家。
格上の家から招待されれば当然断り辛いだろう。

「念には念を。ラインハルトの家族と……シーファスの両親も呼んでやるかな」

ついでにエドワルドも呼んでおいて、上手く誘導してシーファスをそっちに押しつけてしまおう。
あいつは性格が悪いから絶対に夫であるシーファスに牽制をかけにかかるはず。
その間自分はラインハルトと上手くやればいい。

「決まりだな」

我ながらいい考えだと思いながら俺はニヤリと笑い、愛しのラインハルトとの話題作りのために先に冒険者登録も済ませてしまおうとギルドへと向かった。

「できることはサクサク片付けちまわねぇとな」

そしてギルドへの登録を行い、パーティーに招待したい相手についての詳細を手紙に書いて実家へ送り、簡単なギルド依頼を片付けてその日は寝た。
翌朝はギルドでもう一つだけ依頼をこなし、その後貸し馬車に金を払って出発する。
向かう先は当然実家である侯爵家だ。
きっと着く頃には招待状の手配もできていることだろう。

「さてと。楽しくなってきたな」

多少ズルい手かもしれないが、俺を二度も出し抜いたエドワルドにも横から奪って行ったシーファスにもラインハルトは渡さない。そう強く思いながら俺は久方ぶりの実家へと向かったのだった。



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