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しおりを挟む「蕭家の武芸は見事なものだと噂されています。蕭家の兄達の話も面白かったのですが三宜とも歓談しとうございます。ご許可願えますか?」
次に告げられた清順の言葉に三宜の目は右に泳いだ
あの皇帝が許すだろうか?嬉しいが恐ろしい。この男と関係を疑われたら身の破滅だ
三宜の酒を持つ杯の手がカタカタと震える
「清順の頼みなら無碍にできんのう。周りが文官ばかりだったので心配したぞ。武芸にもちゃんと興味があるのだな。よいよい、お前の母親となるかもしれないのだ。三宜と存分に話をするが良い。蕭家の父親とも会談できるよう手配しよう」
ぱあっと清順の顔が明るくなるのを三宜は陰鬱な気持ちで見つめていた
清順のあの妖しい色気は今は身を潜めている。一見無害に見せている清順と二人になるのは危険すぎる
そう頭の中で警鐘が響く
「ありがとうございます!三宜はオメガ性でしょうから…今日は大丈夫かな?」
探るような目で話しかけられ、三宜は言葉に詰まった。今日も何も三宜はヒート発情期を迎えた経験がないのだ
大丈夫かどうかなんてわからない。家族以外のアルファ性の男性と二人きりになる事すら初めてだ
ただ今日は日出に抑制剤を飲ませてもらっている
大丈夫だろうか
「だ、大丈夫かと思います」
冷や汗が背中に流れる。嬉しそうにふにゃりと笑う清順は皇帝に拝礼をとる
「ありがとうございます。では、三宜を連れて行きます」
「よいよい清順よ、夜にまた余の元に来て琴を奏でておくれ」
上機嫌で清順は頷き、三宜に一緒に来るように目配せをしてきた
三宜も場を辞す為に、おずおずと拝礼し清順の背中を追う
少し心配していたが、清順の配下や侍女が沢山ぞろぞろと着いてきていて、広場から出ると三宜の侍女達や日出も飛んできたので胸を撫で下ろす
本当の意味で2人になる事はないだろう。変な心配をしてしまった
それに、こんなに綺麗で皇子でキラキラと輝いて、あらゆる所から秋波を送られているような人が、自分なんて相手にするわけが無い
恥ずかしい早とちりだったと三宜は穴があったら入りたいくらいだ
広場を出ると、清順はそのまま真っ直ぐ、あの初めて三宜と出逢った場所に向かった
あの頃から何も変わっていない庭園には花が咲き乱れ、あの日の匂いまで戻ってくるかのようだった
甘酸っぱい気持ちが蘇る
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