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第三章 ジュリエッタ逃亡編

レディー養成講座

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「私はスカーレットの遠縁で、この町でレディー養成所を開く事にしたの。
よろしくね。
ただ事情が有って、いつもはさっきみたいに変装をしているけど気にしないでね。」

今私はルイ―ザの前で、素をさらけ出していた。
ルイ―ザは常に私の傍に居てくれるらしいので、
それなら変装前の私も知ってもらわなくちゃと思っての事だ。

「はい、承知しました。
では先ほどの姿を普通とし、
今のあなた様の姿は秘密と言う事で宜しいでしょうか。」

「そ…うね。それでお願い。」

スカーレットの言う通り、
彼女はかなりの切れ者で有り、良く出来たメイドのようだ。

「それで私は、通常のメイドの業務の他、
何かお手伝いすることはございますか?」

「あぁ、そうね。
追々状況を見ながらなのだけど、
もしかしたら、マナー講座の方で協力をお願いするかもしれないわ。」

実技でお茶などをサーブしてもらうのもいいかもしれない。

「はい、その時は遠慮なくお申し付け下さい。」

「そう言えば、ルイ―ザはダンスは出来て?」

「そうですね、ワルツ、タンゴ、
スローフォックス・トロットぐらいでしたらある程度は…。」

「そう…、ねえもしよろしかったら、
私の手が回らない時にダンス講座の助手をお願いできないかしら。」

「まあ…、初心者の方を対象にするのでしたら可能かと思います。」

それで十分。よろしくお願いします。
ただ、男性パートナーがダールさんのみと言うのは痛いわね。

「ならば、男性の生徒さんも募集してみたらいかがでしょう。」

ルイ―ザのその言葉は目から鱗だった。
そうか、そうすれば女の子も授業に熱が入るかもしれない。
男性側はダールさんに講師をお願いすればいいしね。
さっそくスカーレットに相談してみよう。

工事をしている間に、私達は何をどう教えるかと計画を練る。

「対象は初心者。
色々なレベルの人を、最初からあなた一人に任せるのは
負担が大きくなってしまうでしょ。」

ありがとうございます。

「手始めにマナーとダンス。
その二つから始めようかと思うの。」

後は女の子の話を聞きながら、決めた方がいい。

「そのうちに、上流社会に必要な教養とか知識、
男性のあしらい方と、え~と。」

「ちょっと、それって全部私が教える訳じゃ無いわよね……。」

「………必要であれば、助手を雇ってもいいわ。
それらの知識が有り、適役の人がいればだけど。」

結局私がやるんかい!


教室の工事も着々と進み、大きな鏡をホールに取り付け、完成となった。
でも考えてみたら、最初はスカーレットの手助けを何かしたいと思っただけなのに。
ここ迄お金をかけて、大々的に工事をして………。
つまり私の負債は膨れ上がり、生徒を抱えると言う責任も大きくなる。
一体私はいつまでこれを続ければいいのでしょうか。

「大丈夫よ、本場仕込みのあなたが基盤さえ築いてくれれば、
後はそれなりの講師を何人か雇えばすんじゃうわ。」

ジュリエッタがいなくなったらね。
とスカーレットは笑いながら言うけれど、
今、私がいなくなったら・何人もの人を・雇うって言ったよね。
つまりその何人もの人がやる事を、
それまで私一人がやらなければならないのだろうか。

「さて、準備は整ったわね。
では早速明日から開講としましょうか。」

「え、完成祝いとか、開校祝いとか、けじめを付けなくていいの?
広告とか出して、生徒さんを集めなきゃならないだろうし、
明日からいきなり始めるって出来ないでしょう。」

私がそう言うと、スカーレットは実にいい顔で笑いながら、

「生徒さんはもう集めて有るわ。」

と爆弾発言。一体いつの間に…。

「明日の午前9時には集合するように伝えるから、よろしく!」

「よろしくって、一体いきなり何をすればいいのよ!」

「何って……任せるわ。」

酷い!

初めはそんなに大勢じゃ無いわよ。
そうスカーレットに聞かされ、少しはほっとした。

ならば初日はお茶会でもして、情報収集をしよう。
あと残りの1時間ぐらい、教室っぽくダンスのレッスンでもしましょうか。



そして次の日、現れたのは3人の女の子。
女の子と言っても14歳が二人と、16歳が一人、夢見る年頃の女の子ね。
取り合えず声を掛けたのはこの3人だけよ。
そう言ってスカーレットがまたニンマリと笑った。
3人なら集中して教える事が出来るし、立派なレディに仕上げる事は可能でしょう。

私はそう思い、早速ルイ―ザにお茶の支度を頼んだ。
品よく整えられた教室の様子に、歓喜する女の子達。

「今日から淑女となるべく学んで下さい。
では最初に。」

私はテーブルに着く前に、最初の講義、
この子達の前で、優雅にカーテシーを披露した。
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