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第二部
商都に到着
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「そういえばあの時も、魔物を宙に浮かせて運んでましたわね」
盗賊十四人を乗せた檻を宙に浮かせていると、フルールさんがぽつりと零した。あの時って……、あぁ、俺たちから初めて獲物を買い取ってもらったときか。
ロープを縛って引きずっているふりをしてたはずだけど、フルールさんにはバレていたみたいだ。
台の上に柱を等間隔に立てて蓋をしただけの簡単な檻だ。もちろんそれなりに魔力を込めて硬化してあるし、並の衝撃では壊れることはない。また魔力攪乱フィールドもこっそり張っているので、中で魔法を使うこともできないようにしている。
全員を収容した後に出入り口に柱を作ったので、見た感じ出入り口のない檻が宙に浮いているように見える。
「もうあたしらは何も言わないよ……」
盗賊に向けて魔法を撃とうとしたあたりから、『紅の剣』の皆さんは口数が少なくなっていた。なんとか再起動したところで出た言葉がこれだった。いろいろ聞かないでくれるのであれば面倒がなくて楽だと思ったけど、フレリスさんからはいろいろ魔法について質問された。
「あれが商都かな?」
馬車の後ろを一緒になって走っていた莉緒が、前方を指さしている。
「おー、さすがにでかいな」
石造りの外壁は職人の街レイヴンと同じだ。しかし商都というだけあって規模が違うようだ。外壁の上にも衛兵が見張りをしているのが見える。商都の門に何人か並んでいる人が見えるが、これくらいならすぐ順番が回ってきそうだ。
列の最後尾へと並ぶと、それまで最後尾で並んでいた冒険者と思われる人たちがギョッとした視線を向けてくる。ニルと後ろにある檻が気になるみたいだな。
「なんなんだこれは……?」
もうすぐ順番が回ってくるといったところで、衛兵の一人が俺たちのところにやってきた。先に事情を聞きに来たんだろう。
「盗賊に襲われたんで捕まえてきたのさ」
アリッサさんが対応してくれているので任せることにする。
「いやしかし、この檻はいったいどうやって……」
「それはあそこにいるシュウが作った檻だから、あの坊やに聞いとくれ」
と思ってたのに、なんだか投げやり気味に話を振られてしまった。
「あー、キミがこの……檻を作ったのかい?」
長い槍を持った衛兵が、馬車の後ろにいる俺のところまで来るとそう尋ねてきた。
両手を膝について屈みこんで聞いてくる態度にちょっとイラっとしたけど表情には出さないようにする。
「そうですよ。この中に十四人いるので、ちゃっちゃと捕縛をお願いしたいです」
「あ、あぁ、そうだね」
俺の言葉に姿勢を正すと、俺以外の他のメンバーを見回して話を続ける。
「他の皆さんも、檻の中にいるやつらに襲われたということでよろしいかな」
「ええ。問題ないですわ」
同意の言葉が返ってきたことに頷くと、最後に御者と一緒に座るフルールさんも声に出して同意する。
「よく見ればラシアーユ商会の馬車でしたか……。檻に気を取られていて気づきませんでした」
「どうも。では盗賊の捕縛をお願いしますね」
「はい。お任せください」
衛兵は敬礼を一つすると駆け足で門へと戻っていく。そのままの流れで門へ入る手続きが俺たちの番となったんだが。
「この魔物は……誰の従魔だね」
「あ、俺です」
「ギルドカードを見せてもらおうか」
「どうぞ」
ちょっとだけニルについてひと悶着あったり。
「この檻、ここに放置してたらまずいよね?」
門番さんへと話しかけると、気まずい表情が返ってきたり。
結局衛兵が十人ほど集まってきて、檻の中の盗賊を捕縛して連れて行くまで一時間は待つこととなった。
「お疲れ様でした」
街の中に入るころには日も傾き、夕暮れ時となっていた。
「疲れました」
「まぁ、がんばったな」
檻の出入り口を開けたはいいが、誰一人出ようとしなかったのでニルに一人ずつ引きずり出してもらった。
「さてと、これで依頼は達成になるかな」
「はい。ありがとうございました。こちら依頼完遂票です」
アリッサさんの言葉に、フルールさんが紙を一枚手渡す。
「確かに。今回はあたしらも勉強になったよ」
「そうだな。また会うことがあったらよろしくな」
「ウフフ、今回はありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました。これで次回からは俺たちだけで護衛依頼を受けられます」
「はは、初対面で舐められないようにしなよ」
「あはは、そうですね……」
どうすればいいかわからないけど、まぁなるようになるかな。
「皆さんありがとうございました」
莉緒も同じく皆に声を掛けるとこの場は解散となった。
「シュウ様とリオ様はどうされますか? もしよければ宿を紹介いたしますよ」
『紅の剣』の皆さんが去っていく後ろ姿を眺めながら、宿をどうしようかと考えていると、ちょうど見計らったかのようにフルールさんから提案を受ける。
「お願いしていいですか。商都は来たことがないので」
「……えっ? でも、レイヴンにいらしてましたよね。……他に経路はないと思うんですけど」
「えーと、あー……」
そういえばそうだった。普通はフェンリルの村から森を越えてこっち側に来る人はいないんだっけか。でもまぁ、フルールさんにそこまで隠す必要はないかな。むしろ森にあったあの謎の塔について聞いてみるのもいいかもしれない。
ということをフルールさんに暴露したところ、乾いた笑いが返ってくるだけだった。ちなみに森の真ん中にでかい塔が建っているという話は聞いたことがないとのことだった。いやまじなんなのあの塔。
盗賊十四人を乗せた檻を宙に浮かせていると、フルールさんがぽつりと零した。あの時って……、あぁ、俺たちから初めて獲物を買い取ってもらったときか。
ロープを縛って引きずっているふりをしてたはずだけど、フルールさんにはバレていたみたいだ。
台の上に柱を等間隔に立てて蓋をしただけの簡単な檻だ。もちろんそれなりに魔力を込めて硬化してあるし、並の衝撃では壊れることはない。また魔力攪乱フィールドもこっそり張っているので、中で魔法を使うこともできないようにしている。
全員を収容した後に出入り口に柱を作ったので、見た感じ出入り口のない檻が宙に浮いているように見える。
「もうあたしらは何も言わないよ……」
盗賊に向けて魔法を撃とうとしたあたりから、『紅の剣』の皆さんは口数が少なくなっていた。なんとか再起動したところで出た言葉がこれだった。いろいろ聞かないでくれるのであれば面倒がなくて楽だと思ったけど、フレリスさんからはいろいろ魔法について質問された。
「あれが商都かな?」
馬車の後ろを一緒になって走っていた莉緒が、前方を指さしている。
「おー、さすがにでかいな」
石造りの外壁は職人の街レイヴンと同じだ。しかし商都というだけあって規模が違うようだ。外壁の上にも衛兵が見張りをしているのが見える。商都の門に何人か並んでいる人が見えるが、これくらいならすぐ順番が回ってきそうだ。
列の最後尾へと並ぶと、それまで最後尾で並んでいた冒険者と思われる人たちがギョッとした視線を向けてくる。ニルと後ろにある檻が気になるみたいだな。
「なんなんだこれは……?」
もうすぐ順番が回ってくるといったところで、衛兵の一人が俺たちのところにやってきた。先に事情を聞きに来たんだろう。
「盗賊に襲われたんで捕まえてきたのさ」
アリッサさんが対応してくれているので任せることにする。
「いやしかし、この檻はいったいどうやって……」
「それはあそこにいるシュウが作った檻だから、あの坊やに聞いとくれ」
と思ってたのに、なんだか投げやり気味に話を振られてしまった。
「あー、キミがこの……檻を作ったのかい?」
長い槍を持った衛兵が、馬車の後ろにいる俺のところまで来るとそう尋ねてきた。
両手を膝について屈みこんで聞いてくる態度にちょっとイラっとしたけど表情には出さないようにする。
「そうですよ。この中に十四人いるので、ちゃっちゃと捕縛をお願いしたいです」
「あ、あぁ、そうだね」
俺の言葉に姿勢を正すと、俺以外の他のメンバーを見回して話を続ける。
「他の皆さんも、檻の中にいるやつらに襲われたということでよろしいかな」
「ええ。問題ないですわ」
同意の言葉が返ってきたことに頷くと、最後に御者と一緒に座るフルールさんも声に出して同意する。
「よく見ればラシアーユ商会の馬車でしたか……。檻に気を取られていて気づきませんでした」
「どうも。では盗賊の捕縛をお願いしますね」
「はい。お任せください」
衛兵は敬礼を一つすると駆け足で門へと戻っていく。そのままの流れで門へ入る手続きが俺たちの番となったんだが。
「この魔物は……誰の従魔だね」
「あ、俺です」
「ギルドカードを見せてもらおうか」
「どうぞ」
ちょっとだけニルについてひと悶着あったり。
「この檻、ここに放置してたらまずいよね?」
門番さんへと話しかけると、気まずい表情が返ってきたり。
結局衛兵が十人ほど集まってきて、檻の中の盗賊を捕縛して連れて行くまで一時間は待つこととなった。
「お疲れ様でした」
街の中に入るころには日も傾き、夕暮れ時となっていた。
「疲れました」
「まぁ、がんばったな」
檻の出入り口を開けたはいいが、誰一人出ようとしなかったのでニルに一人ずつ引きずり出してもらった。
「さてと、これで依頼は達成になるかな」
「はい。ありがとうございました。こちら依頼完遂票です」
アリッサさんの言葉に、フルールさんが紙を一枚手渡す。
「確かに。今回はあたしらも勉強になったよ」
「そうだな。また会うことがあったらよろしくな」
「ウフフ、今回はありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました。これで次回からは俺たちだけで護衛依頼を受けられます」
「はは、初対面で舐められないようにしなよ」
「あはは、そうですね……」
どうすればいいかわからないけど、まぁなるようになるかな。
「皆さんありがとうございました」
莉緒も同じく皆に声を掛けるとこの場は解散となった。
「シュウ様とリオ様はどうされますか? もしよければ宿を紹介いたしますよ」
『紅の剣』の皆さんが去っていく後ろ姿を眺めながら、宿をどうしようかと考えていると、ちょうど見計らったかのようにフルールさんから提案を受ける。
「お願いしていいですか。商都は来たことがないので」
「……えっ? でも、レイヴンにいらしてましたよね。……他に経路はないと思うんですけど」
「えーと、あー……」
そういえばそうだった。普通はフェンリルの村から森を越えてこっち側に来る人はいないんだっけか。でもまぁ、フルールさんにそこまで隠す必要はないかな。むしろ森にあったあの謎の塔について聞いてみるのもいいかもしれない。
ということをフルールさんに暴露したところ、乾いた笑いが返ってくるだけだった。ちなみに森の真ん中にでかい塔が建っているという話は聞いたことがないとのことだった。いやまじなんなのあの塔。
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