とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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仮初めの恋人

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(……ふぅ。気が重いなぁ)
 
 マリアの訪れを心待ちにしていたはずなのに、実際にマリアが来ると急に怖じ気づいてしまう。

 「……マリア、二人の様子はどうだった?」

 「……そうですねぇ。最初は険悪でしたが、最後は握手されてましたよ?話の内容はおりませんでしたので、わかりかねますが。そう心配されることは無いかと。いずれにせよ、マリアがお守り致します!」
 
 無駄にマリアが張り切っている。

 「……では、行きましょうか、マリア」
 
 私の足取りは鉛のように重かった。
 
 ◇◇◇
 マリアが応接室のドアを開けて中に入ると、ソファから立ち上がるアレク様とレイ。キラキラ美形が二人になって、更に落ち着かない。
 私は二人と視線を合わせられなくて二人の向かい側に立ち、二人に着席を促した。

 (……うう。ドキドキする…)
 
 気づけば私の両手は謎の冷や汗地獄だった。
 私が着席すると、二人は示し合わせたかのように頷き、アレク様が話始めた。

 「……リリアーヌ嬢。先ほど約束した通り、アルフォンス殿に話をした。思っていた通りの好青年で、いろいろと話が弾んでしまった」

 「……はぁ」

 (……話が弾むってどういうこと?)
 
 私が不安がっていると、レイが大丈夫だ、といわんばかりに私を見ている。

 「さっきリリーが自分は浮気女じゃないかって心配して落ちこんでます、とマリア殿から聞いたよ。確かに、俺のプロポーズを承諾したのに、他の男とデートした挙げ句に、プロポーズまでされるなんて想定外だったけど、リリーがそれだけ魅力的な女性だってことだしな」

 (……えっーと。とりあえずは怒ってないの?レイは?アレク様の手前だから?)
 
 私は視線だけで何とか思いを伝えようとレイを見つめるも、アレク様に遮られてしまう。

 「……リリアーヌ嬢。君は浮気なんてしてないさ。私とアルフォンス殿で話をさせてもらった。結論から言えば、我々はそれぞれ君の仮初めの恋人としてどちらかが正式な婚約者になるまで戦うつもりだ。その詳細はー」
 
 なかなか驚きの内容だった。

 現侯爵代行を納得させ、正式に婚約書類を作成すること。

 私と恋愛関係になること。

 私が嫌がることをしたら失格。

 どちらが勝つにせよ、負けた側は勝者に不利益になることはしないこと。(ビジネス上のつながりも大切にする)

 私が侯爵になるまで、自らの領地で保護すること。

 など多岐に渡り詳細に話をしたようだった。

 (ふ、二人の本気度が怖い…)

「……と言うわけで、リリアーヌ嬢…いや、リリーと呼ばせてもらうが、正式な婚約者が決まるまで我々を仮初め恋人として扱ってもらえないだろうか?」

 「……えっーと。その仮初めというのは、心の距離を縮めたいから、という解釈でよろしいでしょうか」

 「……ああ。デートに行ったりなどで、二人を平等に扱ってもらいたい。もちろん、リリーの気持ちが固まるまでで大丈夫だ」
 
 隣に座るレイも同意していた。

 「……現段階では、圧倒的にアルフォンス殿が有利だからな。そこで、二人に私からのお願いがある」

 「……何でしょう?」

 「後日、ミリオニアに来る際に、リリー一人で来てもらいたい」

 「……アレク殿下、さすがに未婚の女性を一人というわけには……」

 「普段は、君はリリーと一緒に暮らしてるではないか?向こうについたら、王宮の客室を使ってもらうことになる。侍女もいるし問題ないだろ?」
 
 アレク様とレイがいい争いを始めた。

 (……いやはや、問題しかないような……。そもそも展開が予想以上すぎてついていけないし……?)
 
 今は侯爵家の使用人だしね……。王宮なんて大丈夫か私。

 (アレク様が意外と腹黒なのがまたエグいし……)

 「あのー。とりあえず、私は一人で自分のことは出来ますし、アレク様の申し出通り一人で向かいます」
 
 アレク様は私の判断に喜びを隠せないのか、ありがとうと抱きしめられてしまった。

 「……あ、あのアレク様?」
 
 離して下さい、とばかりに突き放す。

 「ボディタッチは禁止ですよ!」
 
 レイは凄い怖い顔でアレク様を睨んでる。

 「……すまない、すまない。では、次のリリーの休みにいくとしよう」

 「……承知致しました」
 
 こうして私はミリオニアに一人(あ、ヒュースはこっそり来てもらうけど!)旅立つことになった。
 
 しっしかし、お父様は今はどこで何をされてるんだろう?ふと気になった私。

 (いきなり隣国の王家と、公爵家から連絡があれば驚くよね?)
 
 ……婚約の打診に、お父様は、何て答えるのだろうか?
 自分にあまりにも無関心な父親に、いい加減な判断だけはしてほしくなかった。
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