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10 最強の僕
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「ど、どうした、リク!」
「お前、そこをどけ! そのマグナムティンポを俺から抜け! 痛いわ! 死ぬわ!」
「え、え、え? マグ? え」
「と、とにかく、抜いてくれ。痛くて辛い」
「う、す、すまない」
夫は僕から勢いよく、大きなモノを抜いていた。もう一人の僕、すごい。王弟殿下に対してあんな堂々と発言できるなんて!
「あああ! コノヤロウ! そっと抜けよ、マジいてぇ!」
「すまない」
あっ、彼は王弟殿下がどのような立場なのかも知らない、異世界人。これ不敬にあたらない?
当の夫はハラハラとした様子。あれ? ここから見ていると、野獣じゃなくて、飼い犬みたいに見えてきた。そして僕は今、彼の体になっているので、体のどこも痛くなくて、快適。ああ、そこの僕、ごめんね。あんな痛い思いさせて。トビキリ大きな状態で抜いたら、それは痛いよね。旦那様も、その状態でおろおろしている。それ、大丈夫かなあ?
「はぁ、あのなぁ、男のケツは本来、ブツを入れる場所じゃない!」
「ケツ、ブツ……」
夫が僕の口調に驚いている。ちょ、ちょ、ちょっとぉぉ。そこのあなた、僕そんな言葉遣いしないから!
すると、向こうの僕がこちらを見た。
(おい、俺の名前は陸斗だ)
(え、声が頭に響いている、どうして?)
(知らねぇよ、会話をしようとしたら、念話ができるんじゃねぇの? 俺たち一心同体的な? よくわかんないけど、お前はリクだろ。お前の事情はずっと鏡の前で見てきた)
(え、そうなの? 僕はリク、君はリクト?)
(そうだよ、これからは名前で呼べ)
(うん陸斗)
「リ、リク、すまなかった」
「え? ああ、良いってことよ。じゃなかった、ゴホン。旦那様、少しお話よろしいですか?」
「旦那様……。それをどうか最中に言ってくれないか? その響きはとてもいい。いつも何も言ってくれないので、もう少し言葉が欲しいと思っていた」
え、夫が長文を話した。あの人、しゃべれる人だったんだ。そして、その要求はいったい……。というかあなたの無理やりの行為のせいで、僕は言葉も発せないくらい苦しんでいたのに、気づいていなかった?
「はぁ? お前何様のつもりだよ、言葉が足りないのはそっちだろ!」
「え」
なぜか陸斗が夫に怒っている。ありがたいけど、その方とても高貴な方なんだよぉぉぉ。今の時点で離縁されたら、あきらかに僕の態度のせいであって、伯爵家に不利益がぁ。
(陸斗、その方とても尊い方で、王弟殿下でありこの国の大公。そして英雄なんだよ! 妻とはいえ、僕みたいな伯爵子息がそんな口の利き方をしたら、まずいんだってぇぇ!)
(え、そうなの。すまない)
頭の中で陸斗に伝えると、素直に返事がきた。
「そもそも、俺たち、じゃなかった僕たち、自己紹介もあっさりで、ほとんど話もしない内に体を合わせていますけど、あんたティンポをケツに入れないと死んじゃう病気ですか?」
「あんた……」
(リクト、言葉遣い!)
(え、ああ、すまん)
陸斗がまた鏡を見て話す。
「リク、あちらに何かあるのか?」
「え? ああ、気にしないでください」
そうか、夫にはこちらの様子は見えていない。ただの鏡のようだ。夫が陸斗の視線を追ったとき、鏡の中の僕と目が合った。
とてもドキッとした。赤い瞳で僕を見る。最中はずっと目を閉じて泣いているので、彼と目が合うことはない。今、見られている。いや、見られていないけど、こちらのことは見えていないだろうけど、でも凄くドキドキする。やはり、とてつもなく素敵なお顔をしていると思う。やってることはどうかと思うけれど、話し声も、声の低さも、テンポも、とても落ち着く。そんな素敵な声なのに、彼のはぁはぁという吐息しか聞いてこなかったこの数日だった。
陸斗のお陰で、彼と向き合うことが初めてできた。僕が向き合っているわけじゃないけれど。
「リク、どうか私のことはラミラスと呼んでくれ」
「わかった、ラミラス」
呼び捨てぇぇぇ?
(ラミラス様!)
(え……)
「ゴホンっ、ラミラス様。俺、じゃなかった。僕は、あなたの妻ということでここにいます。あなたが妻である僕しか抱けない事情も察しております。ですが、僕は男です。抱かれるための体の構造ではありません。抱くには準備が必要なんです」
「そうなのか。あなたを求めるあまり、あなたを見るとすぐにあなたが欲しくなり……」
ん? なんか言っていることおかしくない? どうして僕を欲しいのかな? やはりしないと死んじゃう病気? あなたあなたって、旦那様どうしました?
陸斗がこっちを呆れた顔で見てきた。
(お前ら、まず会話からだろ)
(そうなんだよね、でも旦那様は夜しか帰ってこないし、会話する前になぜか僕を抱くんだよ)
(はぁ、そうだったな。よし、任せろ)
「では、旦那様」
「ラミラスだ」
「……めんどくせぇな。ラミラスさま! 昼間の僕と会話をしてくれませんか?」
「すまない。どうしても戦後処理に追われていて、日中は仕事から手が離せなくて、あなたに寂しい思いをさせてしまった」
(してないよな?)
(うん、してないね)
僕と陸斗は念話で、同じ意見。
「いえ、そこではなくて。夫夫というものは、まずお互いを知ることが大事なのではないですか? 体だけ繋がるならそれは娼館と変わりません」
「しょ、娼館?」
「そうでしょ、僕とやるためだけにここに来て、終わったら寝るって。僕はあなたの専属娼夫かなにかですか?」
「や、違う、リクは私の妻だ。だから抱いている」
「……なんか、めんどくさそうだな」
陸斗は遠い目をしていた。そして僕を見て、また溜息。えっと、なに? 夫も不思議がっていた。
「え?」
「えっと、いえ、なんでもありません。じゃあやりますか?」
「いいのか?」
やはり、そこだよね、旦那様。
「いいですよ、その代わり。あなたに体を開く代わりに、あなたは夜以外の僕と会話をしてください。最低三十分は確保すること。それがない日は、あなたと交わりません」
「わ、わかった。善処しよう」
「よろしい! では、今夜は僕が主導権を握ります。いいですか?」
「リクはいつもされるままなのに……そんなことができるのか?」
「されるままの結果、僕はこの夜の行為に満足どころか、残念な日々を過ごしています」
「そうなのか!?」
あ、わかってなかったやつだ。僕が満足してると本気で思っていた?
「お前、そこをどけ! そのマグナムティンポを俺から抜け! 痛いわ! 死ぬわ!」
「え、え、え? マグ? え」
「と、とにかく、抜いてくれ。痛くて辛い」
「う、す、すまない」
夫は僕から勢いよく、大きなモノを抜いていた。もう一人の僕、すごい。王弟殿下に対してあんな堂々と発言できるなんて!
「あああ! コノヤロウ! そっと抜けよ、マジいてぇ!」
「すまない」
あっ、彼は王弟殿下がどのような立場なのかも知らない、異世界人。これ不敬にあたらない?
当の夫はハラハラとした様子。あれ? ここから見ていると、野獣じゃなくて、飼い犬みたいに見えてきた。そして僕は今、彼の体になっているので、体のどこも痛くなくて、快適。ああ、そこの僕、ごめんね。あんな痛い思いさせて。トビキリ大きな状態で抜いたら、それは痛いよね。旦那様も、その状態でおろおろしている。それ、大丈夫かなあ?
「はぁ、あのなぁ、男のケツは本来、ブツを入れる場所じゃない!」
「ケツ、ブツ……」
夫が僕の口調に驚いている。ちょ、ちょ、ちょっとぉぉ。そこのあなた、僕そんな言葉遣いしないから!
すると、向こうの僕がこちらを見た。
(おい、俺の名前は陸斗だ)
(え、声が頭に響いている、どうして?)
(知らねぇよ、会話をしようとしたら、念話ができるんじゃねぇの? 俺たち一心同体的な? よくわかんないけど、お前はリクだろ。お前の事情はずっと鏡の前で見てきた)
(え、そうなの? 僕はリク、君はリクト?)
(そうだよ、これからは名前で呼べ)
(うん陸斗)
「リ、リク、すまなかった」
「え? ああ、良いってことよ。じゃなかった、ゴホン。旦那様、少しお話よろしいですか?」
「旦那様……。それをどうか最中に言ってくれないか? その響きはとてもいい。いつも何も言ってくれないので、もう少し言葉が欲しいと思っていた」
え、夫が長文を話した。あの人、しゃべれる人だったんだ。そして、その要求はいったい……。というかあなたの無理やりの行為のせいで、僕は言葉も発せないくらい苦しんでいたのに、気づいていなかった?
「はぁ? お前何様のつもりだよ、言葉が足りないのはそっちだろ!」
「え」
なぜか陸斗が夫に怒っている。ありがたいけど、その方とても高貴な方なんだよぉぉぉ。今の時点で離縁されたら、あきらかに僕の態度のせいであって、伯爵家に不利益がぁ。
(陸斗、その方とても尊い方で、王弟殿下でありこの国の大公。そして英雄なんだよ! 妻とはいえ、僕みたいな伯爵子息がそんな口の利き方をしたら、まずいんだってぇぇ!)
(え、そうなの。すまない)
頭の中で陸斗に伝えると、素直に返事がきた。
「そもそも、俺たち、じゃなかった僕たち、自己紹介もあっさりで、ほとんど話もしない内に体を合わせていますけど、あんたティンポをケツに入れないと死んじゃう病気ですか?」
「あんた……」
(リクト、言葉遣い!)
(え、ああ、すまん)
陸斗がまた鏡を見て話す。
「リク、あちらに何かあるのか?」
「え? ああ、気にしないでください」
そうか、夫にはこちらの様子は見えていない。ただの鏡のようだ。夫が陸斗の視線を追ったとき、鏡の中の僕と目が合った。
とてもドキッとした。赤い瞳で僕を見る。最中はずっと目を閉じて泣いているので、彼と目が合うことはない。今、見られている。いや、見られていないけど、こちらのことは見えていないだろうけど、でも凄くドキドキする。やはり、とてつもなく素敵なお顔をしていると思う。やってることはどうかと思うけれど、話し声も、声の低さも、テンポも、とても落ち着く。そんな素敵な声なのに、彼のはぁはぁという吐息しか聞いてこなかったこの数日だった。
陸斗のお陰で、彼と向き合うことが初めてできた。僕が向き合っているわけじゃないけれど。
「リク、どうか私のことはラミラスと呼んでくれ」
「わかった、ラミラス」
呼び捨てぇぇぇ?
(ラミラス様!)
(え……)
「ゴホンっ、ラミラス様。俺、じゃなかった。僕は、あなたの妻ということでここにいます。あなたが妻である僕しか抱けない事情も察しております。ですが、僕は男です。抱かれるための体の構造ではありません。抱くには準備が必要なんです」
「そうなのか。あなたを求めるあまり、あなたを見るとすぐにあなたが欲しくなり……」
ん? なんか言っていることおかしくない? どうして僕を欲しいのかな? やはりしないと死んじゃう病気? あなたあなたって、旦那様どうしました?
陸斗がこっちを呆れた顔で見てきた。
(お前ら、まず会話からだろ)
(そうなんだよね、でも旦那様は夜しか帰ってこないし、会話する前になぜか僕を抱くんだよ)
(はぁ、そうだったな。よし、任せろ)
「では、旦那様」
「ラミラスだ」
「……めんどくせぇな。ラミラスさま! 昼間の僕と会話をしてくれませんか?」
「すまない。どうしても戦後処理に追われていて、日中は仕事から手が離せなくて、あなたに寂しい思いをさせてしまった」
(してないよな?)
(うん、してないね)
僕と陸斗は念話で、同じ意見。
「いえ、そこではなくて。夫夫というものは、まずお互いを知ることが大事なのではないですか? 体だけ繋がるならそれは娼館と変わりません」
「しょ、娼館?」
「そうでしょ、僕とやるためだけにここに来て、終わったら寝るって。僕はあなたの専属娼夫かなにかですか?」
「や、違う、リクは私の妻だ。だから抱いている」
「……なんか、めんどくさそうだな」
陸斗は遠い目をしていた。そして僕を見て、また溜息。えっと、なに? 夫も不思議がっていた。
「え?」
「えっと、いえ、なんでもありません。じゃあやりますか?」
「いいのか?」
やはり、そこだよね、旦那様。
「いいですよ、その代わり。あなたに体を開く代わりに、あなたは夜以外の僕と会話をしてください。最低三十分は確保すること。それがない日は、あなたと交わりません」
「わ、わかった。善処しよう」
「よろしい! では、今夜は僕が主導権を握ります。いいですか?」
「リクはいつもされるままなのに……そんなことができるのか?」
「されるままの結果、僕はこの夜の行為に満足どころか、残念な日々を過ごしています」
「そうなのか!?」
あ、わかってなかったやつだ。僕が満足してると本気で思っていた?
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