転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

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第4章 10歳王都編

4.13.4 平和な王都の日々

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 今日は、アメリ母様とレイブリング父様と一緒に王城へ向かった。文官の方との打ち合わせがあるらしく、僕もそれに付き添うことになっている。
 文官の打ち合わせで出てきたのは二つの図面だった。一つは、今の領主館をもっと大きくした建物になっている。
 彼らは、図面を置いて確認をしてくださいと言って、一度退席した。
「これが領主館の改造後ですか?」
「改造後ではなく、新しく作るよの。リリアーナ母様が言っていたでしょ。人口が増え、経済が発展したからクロスロードに伯爵家を増やす申請をすると。
だから領主館も少し大きくしなければならないのよ。
兵舎も必要になるし」
「では、これが新しい領主館でこちらが兵舎。
今の領主館はどうするのですか?」
「新しい領主館が完成し稼働した後に、今の領主館は新館はそのまま使うけれど旧館の方はもう使えないのよ。そちらだけ建て替えて新しい伯爵家に使ってもらうわ」
 今の領主館はおばあさまとの思い出もあるのだが、建て替えるのか。今の建物は一番古い部分で200年ほど経っていると言っていたから、もうそろそろ限界だったのだろう。

「この図面は解りましたが、魔法陣があるのは。
もしかして大きな建物は魔法で作るのですか?」
「そうよ。この魔法陣は昔から使われている魔法陣。図面の枚数によって魔法陣が違うけれど、図面をセットして魔力を流せば建物の外壁が完成するわ。もちろん内装は別よ」

 大きなテーブルに広げられた図面と魔法陣。魔法陣を軽く見ると土魔法を駆使した記述がある。
 父上と母上は図面とにらめっこをして、僕は魔法陣を調べてみた。そこへ文官が戻って来た。
「ジルベール様は、土木にも興味がおありですか?」
「ジルベールは魔法全般が興味対象なのよ。自分でも魔道具を作っているし」
 アメリ母様が答えてくれた。
「ほう、そうですか。我々は、魔道具を作ったりはしないのですが、こういった土木系の魔法陣はいくつかの種類があります。
用途に応じた図面を書いて、魔法陣を組み合わせ工事を行うまで仕事なのです」
「工事と言うことは魔法を使える人がいるのですか。ぱっと見積もっても、この規模の建物だとかなりの魔力が必要になります。相当数の人数が必要になりますよね」
「ええ、魔法を使える下級貴族が集まっています。魔法を使えると言う意味だけで言えば、
ざっと王宮魔導士の10倍はいますよ。魔力は同等かもしれませんが」
「そんなに。魔力を補う為ですか?」
「いえ、魔力を使う時間よりも図面を書いている時間が長いですよ。
こちらの図面も、10人の下級貴族が半年もかけて書いたのです。
リリアーナ様のアイデアとして紹介された温泉のお湯と地下水を壁や床に回す配管がとても複雑で苦労しました。とても勉強になりました。
こうして、新しい図面をかきつつ、建築上に行き前の図面を元にした建物を建てるのです。前の建物は3か月前に終わってますから。応援で別の建築に行くぐらいの余裕があります」

 ほう、今度の建物は最初から配管が通ってるのか。やはり図面作りは時間がかかるのか。

 しかし、この建物を作る魔法陣、パッと見た感じだが建物以外にも応用できそうな気がする。
「この魔法陣は、建物以外にも使えるのですか?」
「うん? 建物以外と言うと、そうですね王都の地下には下水が通っています。もちろんそれにも使われていますし、橋や塀にも使ってますよ」

「いえ、そうではなくて。
例えば材料を鉄に変えて剣を作ったり馬車を作ったりです」
「良い視点だ。正直に言えば作れる。誰もが試した道と言っても良いだろう。
だが、この魔法陣は、魔力を流すだけで図面通りに物ができるが、一度しか使えない。
完成後は使った図面も消えてしまう。そのために図面はあらかじめ複製を用意しておかなければならないのだ。剣を作るのにいちいち魔法陣に図面を作っていては無駄なんだ。
それにこの図面で完成する物は鍛冶師が作ったものよりも硬くならない」
「硬くならないだけなら、後で硬化の魔法を使うか、魔法陣に組み込めば良いと思いますが、精度はどのくらいですか。窓枠とかもありますが、図面通りにできるのですか?」
「いや、残念ながら誤差がでる。特に複数の人で魔力を込めるせいもあるのだろうが、最終的には完成後に窓枠を測り現物合わせで作っている。窓毎に最大数ミリの違いがある」

 では、針を作るのは無理か。あと、高い塔を建てるのも誤差で傾き倒れるな。
 だけど、なんだかおもしろそうだな。
 それらの図面と魔法陣を受け取り、公爵家に帰った。
 どうやら、建物を建てる魔力は僕が注ぐらしい。まあ良いけどさ。魔力を注ぐ必要がないので、依頼した費用はずいぶんと安く済んだそうだ。さすがリリアーナ母様。抜け目ない。

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