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第4章 10歳王都編

4.14.3 王都からの帰還

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 この宿には僕らとアイヴィー・マリンワード、モーゼス・ヤンロードの二人が泊まっている。そして隣の宿にはイザベラ・バディワードとカーリンサンチェ・フィンレワード、アマーリエ・ロンドロードと女性ばかりが泊まる事になった。

 宿は男女で別けられてしまったが、夕食は皆で一緒に食べる事になった。
 王都に近いので食事の質は良かった。小さい町の料理人とは思えないほど腕が良く、おいしいご飯を食べることができた。

「ジルベール様とは年初めに会った時には婚約者が決まっていないと聞いてましたが、この一月でお二人も決められるとは流石ですね」
 え、なにが流石?
「え、そう。第1王子や第2王子の婚約者が決まったし、第3王子の婚約者候補も絞り込まれたのだから、皆さんも動かれているのでしょう」
「僕は全然。なんと言っても3男だからね。相手を探すよりもどの王子の側近に入れるかの方が重要らしい。それが決まらないと相手は決まらないって。そもそもその為に養子になったし」
 おや、モーゼス君は養子だったのか。上に二人も男が居るのなら、男を養子にしても継承権は問題ないだろうし。あり得るな。
「僕は長男だけどまだ家督を継ぐ決定はされてないんだ。だから僕が学園に入る1年前。12歳には決めるみたいだけど、それまでは弟の成長も見極めるって。はやく見つけておきたいなら自分で探せって、良い後見人を自力で探し出せば有無を言わさずに家督を継げると言われたけど。お母様からは弟に比べれば有利なんだから頑張りなさいと言われたけど」
 アイヴィー君は、あんまり頑張る気が無いって事か。
「アイヴィー様は領主になりたくないのですか?」
「うーん、今ははっきりしてないんだよね」
「領主になって、どんな風に民を、領地を導きたいのですか」
 カーリンサンチェ様が気の利いた質問をした。
「どんな風にか。あまり考えたことは無いな。マリンワードは王都に比べれると発展はしてないけど海もあって自然もある。できればこのまま民がのんびりと暮らせらる土地であって欲しいと思ってるよ」
「そうですか、では民がそういう暮らしができるなら、自分が領主である必要は無いと」
「まあそうだね」
「それは望みが低すぎませんか。他の方が統治すればご自分の望むようにはならないものです。望みがあるならばご自分が達成する。いえ、達成できるように努力すべきだと思います」
 イザベラ様は少しきつい言い方をしたが、僕もそうだと思う。
「そうだろうね。まだ決心がつかないんだよ」
 その後もいろいろな話がでたが、カーリンサンチェ様とアマーリエ様は男子が話すときは口出しせずに聞き役に回っているみたいだ。
 アマーリエ・ロンドロード嬢とは今まであまりしゃべった事が無かったが、どうやら夢見る乙女系らしい。見るからに儚げな少女風の可愛い子だ。
 きっと普通の男子は、8割以上が好みだと言うだろう。
 イザベラのきつめの美少女と比べてしまうので、余計にそう感じる。
この二人に挟まれたカーリンサンチェ・フィンレワード嬢は普通だ。すごく普通だ。容姿もものすごい美人ではない。もすごく可愛い方でもない。だが両脇の二人が美人系、可愛い系のトップレベルなので、比べると特徴がないように見える。逆に、人のよさそうな感じもして、近くにいるだけでホッとする感じの子だ。箸休め的な少女だ。

 この子はきっとこの二人と一緒に居ない方が良いと思う。この二人と一緒だと残念ながら埋もれてしまう。
 単独でいれば、容姿も良い方だし、気さくに話ができるのに。

 僕らが食事を終わり、お茶を飲みながら休憩している間に侍女たちが食事を取っている。ようだ。そっちの席には、ティアマト、エイミー、コハクも一緒にいる。彼女たちの中で主に話の中心になっているのはエイミーのようだ。なんだかものすごく盛り上がっているみたいだが、何を話しているのやら。

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