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第5章 シドニア訪問編

5.6.4 シドニアの学園見学

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 見学は途中で先生のシドニア講義になった。
 シドニアの人口はラルクバッハの半分ぐらい。貴族の総数は8割ほどだ。ラルクバッハでは僕らが生まれる前に疫病が流行り少し人口が減った。なぜか平民よりも貴族の方が死亡率が高い不思議な病気だったのでラルクバッハは人口に対して貴族が少ないのだ。
 貴族だけの比率をみても違いがある。シドニアはラルクバッハよりも高位貴族が少ない。シドニアは3つの公爵領と5つの侯爵領の合計で8つある。
 ラルクバッハは、メリルディーナ公爵家が王都とその周辺の土地を管理し、カルスディーナ公爵家とオルトディーナ公爵家の下にそれぞれ8侯爵を従え3公爵家が王国全土を管理している。さらに、官僚、軍隊、魔法まで公爵家が管理し3強によるバランスを保った政治体制になっている。だが昔はラルクバッハには6公爵家があり、権力ももっと細かく分散されていた。金眼を受け継ぐ者が減り、家が消えて行った結果今の3公爵家になっているのだ。メリルディーナ公爵家は聖女の持つ血を残すために存続した家系だ。そのため女系で継承されてきた特殊な一族だ。いつの間にか文官を束ねる立場になったのは、不思議な気がするが。
 そんな感じで、シドニアの高位貴族が管理する領地はラルクバッハの領地よりも少し広い、それを伯爵、子爵、男爵に土地を振り分けて治めている。
 どうやら、ラルクバッハよりも直接土地を治める貴族の権限が強いのもシドニアの特徴だ。
 例えばクロスロードでは領内を治める政治的な建物が領主館近くに建てられた建物と商業街に一つあるだけだ。
 土地を治める伯爵、子爵、男爵たちも仕事は自分の家で行うのではなく、建物の中に管理地専用の部屋がありそこで仕事をする。つまり役場のような物があるのだ。
 もちろん、土地に住む平民との話し合いはその家でやるので半分は治める土地に居て。半分は役場へ出勤するわけだ。
 シドニアでは一つの領地に大きな役場があるわけではなく、土地持ちの家で仕事を行っている。つまり、土地を治めるために必要な権限が下位貴族にかなり譲渡されている。
 大半の仕事をその場で決済し処理ができる。
 なので、上位貴族はそれ以外の仕事。例えば領地を守る軍隊を維持管理するような仕事が主になる。
 つまり、領地の発展を考えるのは土地を治める者達の役割のようだ。
 同じように、シドニアの王家は国の軍隊を管理している。隣接するグランスラム帝国を抑えるための大きな軍を動かす必要があり、それ以外の執務を減らすために地方分権を強くしているそうだ。
「というわけです」
 たった今こういう話をシドニアの先生から簡単に説明を受けた。

「ちなみに、シドニアの軍隊を王家が中心に動かす理由は、軍隊を構成する人員の半数がシドニア国軍では無いからです。ラルクバッハを含め、他国から兵士が駐留しています。
平時は、その参加した国ごとに訓練や生活をしていますが、いざ戦う際には全体をまとめて指揮しなければいけません。それを行うには王家が中心とならなければ軍を動かせないのです」
「よくわかりました。丁寧な説明をありがとうございます」
「いえいえ、殿下方はまだラルクバッハでも学園に通っていませんから自国ならまだしも、隣国とは言え他国のことまでは勉強の範囲ではないでしょう」
 僕は他国のことまで調べる気が無かったので全く知らなかったが第1王子は知っていたかもしれないな。

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