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【5】由唯のとある1日
⑤
しおりを挟む今日の昼休みに、小沢が両腕を組みながら右肩と左肩を平行に揺らす特徴のある歩き方で由唯の隣にやってきた。今週末、小沢と和希の3人でゴルフへ行く予定で、その段取りについてだった。
「当日は、僕がみんなの家に迎えに行きますね。時間はまた追って連絡します。そうだ!ゴルフの帰りに阪上さんも誘ってご飯しましょ? 阪上さんに伝えておいて下さいね」と、小沢に言われていた。
時間に追われて仕事をしていたので、すっかり澪に声を掛けるのを忘れていた。
(今夜澪にメールしとこー。今夜も飲みに行ってるやろなー・・・。)
由唯は飲み会に意識を戻した。
最近は飲みにケーションは古い。とか、必要ない。と言う人もいるが、不満やストレスがあっても自分から声をあげる人は少ない。こういう場だと本音も言いやすくなるし、何かあってからだと手遅れになってしまう。今夜はみんなと話が出来て、楽しい飲み会になってよかったと由唯は思った。
「さぁーお開きにしようかー」
伝票を持ってレジへ向かい、お会計を済ませた由唯に3人は頭を下げた。
「いつもすみません。ご馳走様でしたー。おいしかったです」
「うん! おいしかったね。今日も盛り上がって楽しかったねー」
店の外に出るとお酒で温まっていた体が一気に冷えて、みんな肩をすくめた。
ほろ酔いの由唯は寒空の星を見上げながら今夜もマフラーをグルグル巻いた。
その時、北風がビューッと音を立てて吹くとみんなが一斉に「さぶぅー」と声をあげた。「めちゃくちゃ寒くなると『さむー』じゃなくて『さぶぅー』って何で言うんやろーねー」
「あはははは。なんでやろなー。あははははは」
駅に向かいながら4人は、まだまだ話足らないようでワイワイキャッキャッと話しながら歩いた。
「川島さんも向井さんも酔ってない? 大丈夫?」
由唯が声を掛けると2人は
「はい。大丈夫です。今夜は本当に楽しかったです。仕事も頑張りますね 笑」
「うん。よろしくね。頼りにしてるからね」
井沢が横からちょっとすねた可愛い声で言った。
「由唯さん? 私の事も頼ってくださいよー 笑」
「あはははは。もちろん井沢さんのことも頼りにしてるよ」
「ほんとですかー⁉︎︎」
「私たちも頼りにしてます! 井沢先輩‼︎」
川島と向井がお酒のせいもあり、ふざけた口調で 言った。
「よっしゃ~! 私についてこい‼︎」
井沢も調子に乗って返事をした。
話が尽きないまま地下鉄の入口の階段が見えてきた。
「お疲れ様。みんな気をつけて帰りやー。また明日ねー」
由唯はみんなと違う電車だったので、声を掛けてひとり駅に向かった。
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