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【7】澪のバレンタインデー
③
しおりを挟む赤く綺麗な殻が真ん中から2つに割られたオマール海老は、身がぎっしりしていて見るからに食欲をそそられた。
「うわぁー美味しそうです!」
澪の嬉しそうな反応に尾崎も満足げだ。
「さぁ、食べましょう」
尾崎に勧められると、ボリューム感いっぱいのオマール海老をナイフとフォークで切り分け、ひと口食べた。
「身がプリプリで美味しい~!」
「そうでしょ!? よかったぁー。オマール海老と伊勢海老の違い知ってます?」
「えっ、日本で採れるのが伊勢海老ですか?」
「あははは、生息地や種類も違いますが、大きいハサミがある方がオマール海老で伊勢海老はハサミがないんです」
「へぇー、そうなんですか? 伊勢海老にはハサミがないんですか? 知りませんでした 尾崎さん詳しいですね!」
「役に立たない雑学ですよ 笑」
「いえいえ、雑学大事ですよ」
「あははは、前に番組のロケでイタリアンレストランのシェフに聞いた受け売りです。で、伊勢海老はイセエビ科でロブスターはザリガニ科なんですって」
「海で採れるのにザリガニ科なんですか?」
「不思議だと思うでしょ? でも、アメリカザリガニは海水でも生きていけるらしいですよ」
「へぇー、そうなんですか!?」
澪がもうひと口食べようとした時、目の前の夜空に何かが走ったように見えた。
「あっ!」
「どうしました?」
「今、あの辺に流れ星が見えませんでした?」
澪が指差す夜空の方向に尾崎も視線を移したが、その場に光る星が見えるだけだった。
「気のせいかも……」澪が首を傾げると、
「きっと気のせいじゃないですよ。流れ星って一瞬ですもんね。昔、見えてる間に3回願い事したら叶うっていいましたけど、あんな一瞬では無理ですよね 笑」
「はい 笑。何をお願いしようかも咄嗟に思いつかないです…。尾崎さんだったら何お願いしますか?」
「そうですねー。『いい恋できますように』ですかね~ 笑」
「あははは、尾崎さんはどんなタイプの女性が好きなんですか?」
「僕は、価値観の同じ人がいいです。昔は見た目重視だったんですが、歳を重ねるにつれて変わりましたね 笑。これから一緒に歩んでいく人とは同じ価値観で、趣味が一緒の人がいいですね。同じことで笑いあえたら楽しいだろうなぁ。お互い応援し合える人がいいですね。そして、僕もお酒を一緒に飲んでくれる人は絶対条件です 笑」
「わかります! 価値観大事ですよねー」
「僕もこの歳だし、昔みたいに勢いだけで好きになったりしないようにブレーキを踏んでる気がします。でも、澪さんとのメールは楽しいし、この間お酒飲んだ時もそうでしたが、今日も全然気を使わなくて本当に楽しいです。もっと澪さんのこと知りたいなーと思いました」
「本当ですかー?」
(若い時にこんな事言われたら舞い上がっちゃうんだろーなぁ)と心で笑った。
「私も尾崎さんの事、もっと知りたいと思ってます」
尾崎が恋愛に慎重になってる事に誠実さを感じ、改めて紳士だなと感じた。
話はオマール海老のローストに戻った。
「尾崎さんお薦めのオマール海老のローストは本当に美味しかったです。タレントさんみたいにうまくレポート出来ないですが 笑」
最後のドルチェは、国産苺とホワイトチョコ・ピスタチオのトリコローレがやってきた。苺の隣にピンクの花びらが添えられ見てるだけでも楽しくなる。
「美味しそう。お皿もこのお花も可愛いですね。お腹いっぱいだけど全然食べれそうです 笑」
「ですよねー。僕もけっこうお腹いっぱいですがペロッといけそうです」
綺麗な夜景を前にしてこのままずっと話していたいと思いながら、最後のコーヒーを飲み終えると、尾崎が夜景の中にある観覧車を指差した。
「あの観覧車乗ったことありますか?」
澪も窓から下を覗いた。
「乗ったことないです。一度乗ってみたいと思ってたんですがなかなか乗る機会がなくて」
「じゃー、この後乗りに行きませんか?」
応援ありがとうございます!
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