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【17】最強ブロガー
③
しおりを挟む2人を奥の席に「どうぞ」と手を差し出すと「いいよ。和希が奥に座り」と澪が言うと由唯と手前の席に座った。いいの? と、奥の席に座って店内を見回すと、店に入った時はよく見ていなかったが、19時にも関わらず既に満席の店内に(この店めっちゃ人気やなー)と驚いた。
店員が注文を聞きにきて、和希と澪は生ビール、由唯がジントニックを注文すると直ぐに運ばれてきて、お決まりの乾杯をした。
乾杯の後、前菜と生ハムを頼むと和希はドリンクのメニューを見ながら
「生ハムに合うお酒って何やろ?」
「ドライ生ハムならワインやけど、普通の生ハムなら何でも合うよ」
「ふーん。さすが食通の澪。何でも知ってるなー」と2人は感心した。澪は誉められるとまんざらでもない顔をした。
「和希、独身に戻った気分はどう?」
「あぁー。単身赴任やったから特に生活も変わらんし、何かが変わったって感覚はないかなー」
由唯の質問にいつもと変わらない口調で答えた。
「そぉ? 何かこの1週間元気ないように見えるけど?」
澪が言うと、うーんと一息吐いて、何て言ったらいいか……と、少し間をおき、
「元気がないわけではないねん。ちょっと財産分与の問題とかで考えることが多くて……」
「そっかー。そういう問題もあんねんなー。離婚してショックで元気がないんじゃないんやね?」
「うん。ショックとかじゃなく、ただ何となくぽっかり穴が空いた感はあるけどな。帰るとこがなくなったからな……」
ここで、前菜と生ハムがテーブルに並んだ。生ハムを口に入れた和希はおいしさに目を開き「これは美味しいなー。確かにビールにもワインにも何でも合いそうやな!」和希は呟いて食べた。
ビールを飲みながら和希はさっき見ていたブログを思い出した。
(澪もこんなにグルメでお酒に詳しいんだから、ブログやSNSで発信したらみんな読んでくれる人がいるんじゃないか?)と思った。確か以前に「生まれ変われるならどんな仕事したい?」と聞いた時、『世界のお酒を飲みながら旅をしてお酒の本を書きたい』と言っていたのを思い出した。
「和希お肉食べるやろ?」
「すみませーん、注文いいですか?」
「うん。食べるよ」
和希が返事をする前に澪は店員を呼んで注文を始めた。《国産フィレ牛サイコロステーキ》《チキンとキノコのバジルソースパスタ》2品と赤ワインを注文し、取り皿も3人分お願いした。
店内は相変わらずの満席で店員も忙しそうに料理を出したり、食べ終わったお皿を引き上げたりしている。
由唯はデザートのメニューを見ている。
「澪、前に人生やり直せるんやったら世界のお酒を飲み歩いてお酒の本出したいって言うてたやん? せっかくこんなにお酒や美味しい料理食べ歩いてるんやからSNSで発信したらええやん!」と和希が言った。
メニューを見ていた由唯も顔を上げて同調してきた。
「そやそや! 澪、私たちがお酒頼む時に色々教えてくれるみたいにSNSで発信したらええねん。絶対喜んで見てくれる人いっぱいおると思うよー」
そう言われた澪は一瞬固まった。
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