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【18】ドリームカムトゥルー
⑤
しおりを挟む寝癖をすっかり忘れていた澪は慌てて帽子をかぶり直した。
「あはははは」
どんなにお酒を飲んでも赤くなった事がないのに、帽子を被った澪の顔が赤くなっていく。それを見た和希と由唯は大笑いした。
横を見ると注文したもんじゃ焼きを持った店員が立っていた。
「あっ、すみません。ここに置いて下さい」
和希の隣の席の空いてるスペースに《牛すき焼きもんじゃ》を置いてもらった。
「じゃー、東京に住んでた俺が焼いたるわ~!」
「いいね~! 和希お願い」
「了解。先ずは生地を残して具だけ焼きますよ。っと……」
手順を思い出すように声を出しながら作り始める。お肉、野菜を2つのヘラで細かく切りながら焼いていく。だが、手際が悪い。切り方は雑でキャベツも散らばっている……。見かねた由唯が「替わるわー」とヘラを奪い取った。
「あれ? 何かおかしい?」
「ううん、私がやりたくなったから」
(手際が悪いから見てられへんって言いにくいわー)
由唯はお肉、キャベツを細かく切りながら素早く焼いていく。
「おーっ!」
和希と澪は由唯の手際のよさに驚いた。あっという間に具を焼き終わると、炒めた具の真ん中に穴を作るようにして生地を流し込んだ。『ジューッ』と生地の焼ける音がしたかと思うと、生地の具と混ぜ合わせていく。感心している間にもんじゃ焼きが完成した。
「出来たで~!」
「由唯やるやん! めっちゃ上手。会社やめてお店だす? 由唯がお店出したら夜ご飯毎日食べに行くわ。なぁ、和希」
「うんうん、行く行く!」
「あはははは、お店出すの真剣に考えたことあるわー」
「マジでー?」
「うん、マジで。でも、外部環境に影響されるし流行らんかったら借金だけ残るしなぁ……」
「そっかー。考えたことあるんやー? そーやな。飲食店も難しいよな……。よし食べようぜ」
ヘラでもんじゃ焼きを鉄板に押し付けて、ヘラにくっついたら口に放り込んで食べるのだが、なかなかうまくいかない。結局3人ともヘラですくうようにして食べた。
「はふはふ、熱っ、おいひぃーなぁ」
猫舌の和希は、焼きたてのもんじゃを口にいれるが、ビールで熱い口の中を冷ましている。
「あはははは、和希ビールの味しかしてないやろ?」
「ふぉんなことない。おいひぃーで」
「あははははは」
由唯と澪は大笑いした。
澪はスマホを取り出し写真を取り出した。和希と由唯も食べるのをしばし中断して澪が写真を取るのを見ていた。さすが手慣れたもので、迷いもなくいろんな角度や遠近法を用いて何枚も写真を取り続けた。
「澪、さすが手慣れてるなぁ」
和希は感心して話しかけると、澪は「うん」と言って写真を取り続けた。
由唯は澪の方へ少し顔を近づけて聞いた。
「ここはブログに載せれそう?」
「うん。他のメニューも食べてみないとわからんけど載せたいと思う。由唯は食べてみてどう思う?」
「うん。もんじゃ焼き久しぶりやから東京との味の違いは、わからんけど美味しいでー」
由唯の同意を得て澪はニコッとした。
「俺には聞かへんの?」
和希が人差し指を自分に向けて聞いた。
「和希は味音痴やん? 何でも美味しいって言うし 笑」
「あはははははは。確かにー」
由唯の突っ込みに澪は隣で大爆笑している。
和希は掌を天井に向け、両肩を少し上げて「はいはい」と苦笑いした。
写真を取り終わった澪は「OK! さぁー、食べよー‼︎」と言った。
追加で《明太もんじゃ》と和希はハイボール、由唯はプレーンチューハイ、澪は焼酎黒霧島のロックを注文した。
明太もんじゃは、明太子の辛さと甘いソースが絶妙にマッチしてクセになる美味しさだった。
お腹もいっぱいになった所で「そろそろお会計にしようかー」と和希が言うと由唯と2人で澪を見た。
視線を感じた澪はピン! ときて右手を挙げて「はーい。わかってまーす」と言って伝票を持って支払いに行った。
「ごちそうさまでーす」と和希と由唯は笑いながら席を立った。
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