晴れのち智くん

ももゆき

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くもり

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(やっぱ、俺のこと好きじゃん!)

ゲラゲラと大声で談笑しあう友人達への相槌もてきとうに済ましつつ、綾野統万あやのとうまは確信していた。

今し方、少し離れた席に座る男子、青木智あおきともと目が合い、またもや相手が赤面したからだ。
視線はすぐ逸らされてしまったものの、その横顔は確実に耳まで真っ赤に染まっている。
このような事が何度もあったし、統万は己の容姿に自信があった。

学年問わずから告白されるのは日常茶飯事。街を歩けばスカウトに声をかけられない日はない。一度試しで行ったレッスンが面倒だったので絶対所属はしないが。

男にはまだ告白された経験はないが、恋愛感情を向けらてもおかしくない容姿だと自負していたのだ。

しかし、統万の恋愛対象は女だ。
と思っていたが、まるで漫画のような見事な赤面を見てしまってからは、何だか青木のことが気になった。
気になって観察してるうちに、何だか可愛いと思えてきた。
観察して観察して観察してるうちに、何だか…

「おい統万!」

急に友人の多田に名前を呼ばれ我に帰る。「あ、ごめん何?」
「いや、だからさぁ、あのヤリマンのまなみが中学1年生までサンタ信じてたの意外だよなぁ!やべぇってピュアかよ!!」

「え。」

一瞬、あまりにも衝撃的で時が止まったかのように感じた。「うっざ」と、まなみが多田を殴り外野がそれを笑う喧騒の中、1人沈黙し思考をめぐらせ1つの答えに行き着く。

「やっぱサンタさんって居ないの?!」
統万は顔はいいが色々と残念な男であった。

「…はぁ?」

皆、冗談なのか本気なのか逡巡し少しの沈黙の後、多田が口を開いた。
「おま、おまえガチ?しかも、サンタ"さん"って…何歳だよ!普通その歳まで生きてたら周りからネタバレされたりで気づくだろ」
多田は呆れたらいいのやら笑ったらいいのやら、微妙な表情で指摘するが、「いや、あれはいい子にしてなかったからサンタさんが来なかったのを親が可哀想に思って『ホントはサンタは居ないのよ…』って言ってるって、お袋が言ってた!まって、どっちがホント?!何が真実?!」と1人パニックになる統万を見て呆れ返った。

「お前なぁ~…。天然というか馬鹿というか…。」多田に同調するように別の友人達も口々に統万をいじりだす。
「お前、ドラマとかアニメの事まるっと信じて頭ポンポンとか壁ドンすんなよ!サンタより引かれるぞ」
「え!!!」さらに統万に衝撃が走る。

「いやアレ駄目なの?!喜んでるように思えたけど、あれも演技ってこと?!こわ!」
頭を抱える統万に「怖いのはお前の頭だわ」っとバカ笑いする多田達の横から、まなみ達女子が割いる。

「え~でもさぁ~、統万くん程のイケメンからなら普通に嬉しいよ♡むしろ積極的にお願いしますっ♡」
「そうそう♡イケメンは何しても許されるの♡あんた達ブス男子の常識と同じと思わないでね~」まなみに賛同し女子達から次々フォローされ「ほらなー!嬉しいって!」と得意げになる統万をよそに、男子VS女子の言い合いが始まった。



(壁ドンとかされたら…智くんも嬉しいのかな…)
騒ぐ友人達から視線を青木に向け観察する。

やわらかそうな黒髪。白い肌に散るそばかす。
大人しそうなのに意外と豪快に笑う。
つり目だけど大きい目…
(あ、こっち見た。)
青木とふと目が合い、ハッとした顔ですぐさま顔を逸らされたが、赤面している様子が少し離れたここからでもよく分かる。
(真っ赤になってる…やっぱり俺の事好きだよね。てか、可愛いなぁ…何だか俺の方が…)

すき。
すきすきすきすき大好き。


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