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キャスリンを見ることができた男の謎
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キャスリンがひとり叫びだしたので、スティーブはびっくりしてキャスリンの顔を覗き込んだ。犬だけど。
「ねえ私の姿はスティーブにしか見えないって言ったでしょ。だけど見える人がいたの、ひとり」
「誰なんですか?」
スティーブもずいぶん気になったようで思い切り前かがみになる。
キャスリンは男爵邸での事を話した。
「その人がアシュイラ皇国といったんですか?」
「そうよ。私のほうをじっと見ていったの。あの人魔力があるのね」
「そうですか...」
スティーブは何やら考え出した。スティーブがキャスリンの体をなでながら考え事を始めたので、キャスリンはつい気持ちよくてうとうとしてしまった。
「キャスリン様?」
自分の名前を呼ぶ声ではっとして起きた。
「この姿では寝癖とかつかなくていいですね」
スティーブがまだキャスリンを優しくなでながら言うのもだからついキャスリンも言い返した。
「スティーブが悪いのよ。気持ちいいんだもの」
「っすみません。触り心地がいいもので」
「もう~仕方ないわね。もう少しだけ触らせてあげるわ」
スティーブは犬の恰好をしてつんと言ったキャスリンがおかしかったのか横を向いて笑いをこらえていた。
「それよりスティーブ、何かわかったの?」
「私の想像にすぎませんが、もしかしたらその人はアシュイラ皇国出身の人かもしれません」
スティーブの告げた言葉にまさかと思ったが、確かにそうでなくてはなぜあの人に魔力があったのか説明がつかない気がする。
「生き残りがいたのかもしれません。父マークの話では私たちを逃がすために戦ってくれていたといっていましたが、運よく生き残った者がいたのかもしれません」
「そうかもね。マークに聞いてみようかしら。マークを連れていけばいいかも」
「そうですね。父も顔を見ればわかるかもしれません。でもキャスリン様そんなことまでできるんですか?」
スティーブはキャスリンの提案に驚いている。
「まあね、時間をさかのぼるのは大変だけど、移動だけならそんなに魔力も使わないし。今度やってみるわ」
「無理しないでくださいね」
「もちろんよ。また来るわ。そうだ、またこの花植えて」
そういってキャスリンはじっと目をつぶった。するとキャスリンの前に白い煙のようなものが出てきて、消えたと思ったら、ベッドの下に小さな黄色い花をつけた苗が一つあった。
「この花はね、アシュイラ皇国の国花にもなっている花なのよ。この花にキャスリン2号はずいぶん慰められたわ。スティーブにも癒しになるといいんだけど」
「かわいい花ですね。この花が...」
スティーブはベッドを降りて、花の苗を手に取った。
「じゃあね、スティーブ。また来るわ」
「お気を付けて」
スティーブの言葉に見送られてキャスリンは自分の魔法部屋に戻った。人間の姿に戻っていた。
時間はそうたっていなかった。スティーブはあれからちゃんと寝ただろうか。
キャスリンは急いで部屋を出た。マークを探す。
ちょうど執事であるマークは、兄のクロードと一緒にいた。
「マーク!ちょっと聞きたいのだけれど」
「どうなさいましたか?」
キャスリンはストラ男爵邸での話、そしてキャスリンを見た男の人の話をした。キャスリンは説明に夢中で気づかなかったが、マークの隣にいた兄クロードの顔がすごいことになっていた。
「ねえどう思う?マーク?」
キャスリンはマークを見ていたが、マークは何やら難しい顔をしていた。ずいぶん考え込んでいるようだ。そして急に寒気を感じた。強烈な視線を感じてそちらを見れば、兄のクロードの顔が鬼と化していた。
「キャスリン!いったい何やっていたんだ。危ないことはしない約束だろ!」
キャスリンはしゅんとした顔をして両手を胸の前で合わせて上目遣いにクロードを見た。なるべく瞬きをしないようにして目に涙をためる感じにと心の中で考えながら。
しばらく怒った顔でキャスリンを見ていたクロードだが、何やら思いっきり大きなため息を吐いた。
「もうしないでおくれ。キャスリンが心配なんだよ」
クロードはなぜかもう一度ため息を吐いて、そこにマークを置いたまま自分は用事があるのか離れていった。
キャスリンは去っていく兄クロードの後姿をほっとしながら見ていたが、そのすべてをマークに見られていた。
「お嬢様、いったいどこでそんなこと覚えたんですか?」
マークは呆れた顔でキャスリンを見ていた。
「これっ?前の人生でよくイソベラが、第二王子にやっていたの。その時にはあきれて見ていたんだけど、結構役に立つのね」
あっけらかんというキャスリンに微妙な顔をしたマークだった。
「で何か思い出した?」
「一人思い当たる男がいます。その男は薬師をしていたんですよね」
「たぶんそう。男の子が薬の事を言っていたし、部屋にも薬草がつるしてあったし」
「そうですか、その男の子はその男に似ていましたか?」
「うん、よく似ていたわ」
マークは何やら感情がこらえられないように顔がこわばっていた。
「そうですか。生きているものがいたんですね」
そうつぶやいたマークの顔には涙が流れていたのだった。
「ねえマーク。明日にでもその人のところに一緒に行きましょう?」
キャスリンにそういわれたマークは、あまりの驚きに流した涙も引っ込んでしまったようだった。
「ねえ私の姿はスティーブにしか見えないって言ったでしょ。だけど見える人がいたの、ひとり」
「誰なんですか?」
スティーブもずいぶん気になったようで思い切り前かがみになる。
キャスリンは男爵邸での事を話した。
「その人がアシュイラ皇国といったんですか?」
「そうよ。私のほうをじっと見ていったの。あの人魔力があるのね」
「そうですか...」
スティーブは何やら考え出した。スティーブがキャスリンの体をなでながら考え事を始めたので、キャスリンはつい気持ちよくてうとうとしてしまった。
「キャスリン様?」
自分の名前を呼ぶ声ではっとして起きた。
「この姿では寝癖とかつかなくていいですね」
スティーブがまだキャスリンを優しくなでながら言うのもだからついキャスリンも言い返した。
「スティーブが悪いのよ。気持ちいいんだもの」
「っすみません。触り心地がいいもので」
「もう~仕方ないわね。もう少しだけ触らせてあげるわ」
スティーブは犬の恰好をしてつんと言ったキャスリンがおかしかったのか横を向いて笑いをこらえていた。
「それよりスティーブ、何かわかったの?」
「私の想像にすぎませんが、もしかしたらその人はアシュイラ皇国出身の人かもしれません」
スティーブの告げた言葉にまさかと思ったが、確かにそうでなくてはなぜあの人に魔力があったのか説明がつかない気がする。
「生き残りがいたのかもしれません。父マークの話では私たちを逃がすために戦ってくれていたといっていましたが、運よく生き残った者がいたのかもしれません」
「そうかもね。マークに聞いてみようかしら。マークを連れていけばいいかも」
「そうですね。父も顔を見ればわかるかもしれません。でもキャスリン様そんなことまでできるんですか?」
スティーブはキャスリンの提案に驚いている。
「まあね、時間をさかのぼるのは大変だけど、移動だけならそんなに魔力も使わないし。今度やってみるわ」
「無理しないでくださいね」
「もちろんよ。また来るわ。そうだ、またこの花植えて」
そういってキャスリンはじっと目をつぶった。するとキャスリンの前に白い煙のようなものが出てきて、消えたと思ったら、ベッドの下に小さな黄色い花をつけた苗が一つあった。
「この花はね、アシュイラ皇国の国花にもなっている花なのよ。この花にキャスリン2号はずいぶん慰められたわ。スティーブにも癒しになるといいんだけど」
「かわいい花ですね。この花が...」
スティーブはベッドを降りて、花の苗を手に取った。
「じゃあね、スティーブ。また来るわ」
「お気を付けて」
スティーブの言葉に見送られてキャスリンは自分の魔法部屋に戻った。人間の姿に戻っていた。
時間はそうたっていなかった。スティーブはあれからちゃんと寝ただろうか。
キャスリンは急いで部屋を出た。マークを探す。
ちょうど執事であるマークは、兄のクロードと一緒にいた。
「マーク!ちょっと聞きたいのだけれど」
「どうなさいましたか?」
キャスリンはストラ男爵邸での話、そしてキャスリンを見た男の人の話をした。キャスリンは説明に夢中で気づかなかったが、マークの隣にいた兄クロードの顔がすごいことになっていた。
「ねえどう思う?マーク?」
キャスリンはマークを見ていたが、マークは何やら難しい顔をしていた。ずいぶん考え込んでいるようだ。そして急に寒気を感じた。強烈な視線を感じてそちらを見れば、兄のクロードの顔が鬼と化していた。
「キャスリン!いったい何やっていたんだ。危ないことはしない約束だろ!」
キャスリンはしゅんとした顔をして両手を胸の前で合わせて上目遣いにクロードを見た。なるべく瞬きをしないようにして目に涙をためる感じにと心の中で考えながら。
しばらく怒った顔でキャスリンを見ていたクロードだが、何やら思いっきり大きなため息を吐いた。
「もうしないでおくれ。キャスリンが心配なんだよ」
クロードはなぜかもう一度ため息を吐いて、そこにマークを置いたまま自分は用事があるのか離れていった。
キャスリンは去っていく兄クロードの後姿をほっとしながら見ていたが、そのすべてをマークに見られていた。
「お嬢様、いったいどこでそんなこと覚えたんですか?」
マークは呆れた顔でキャスリンを見ていた。
「これっ?前の人生でよくイソベラが、第二王子にやっていたの。その時にはあきれて見ていたんだけど、結構役に立つのね」
あっけらかんというキャスリンに微妙な顔をしたマークだった。
「で何か思い出した?」
「一人思い当たる男がいます。その男は薬師をしていたんですよね」
「たぶんそう。男の子が薬の事を言っていたし、部屋にも薬草がつるしてあったし」
「そうですか、その男の子はその男に似ていましたか?」
「うん、よく似ていたわ」
マークは何やら感情がこらえられないように顔がこわばっていた。
「そうですか。生きているものがいたんですね」
そうつぶやいたマークの顔には涙が流れていたのだった。
「ねえマーク。明日にでもその人のところに一緒に行きましょう?」
キャスリンにそういわれたマークは、あまりの驚きに流した涙も引っ込んでしまったようだった。
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