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銅像の前で...
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拍手が鳴りやんだ後、王妃がキャスリンに話しかけてきた。
「そのドレスよく似合ってるわ」
王妃がキャスリンの着ているドレスを見ていった。
「スティーブ、お前の衣装もよく似合っているぞ」
王も息子であるスティーブの衣装を見て目を細めた。
「ありがとうございます」
キャスリンがスティーブのほうを見ると、スティーブがキャスリンにうなづいてから代表して王と王妃にお礼を言った。
王は満足そうな顔をした。広間にいる貴族たちも皆温かい目でキャスリン達を見ている。
「今回皆にここにきてもらったのは、庭園に造った銅像を見てもらいたいからだ」
そういうと、王は王妃の手を取りひな壇から降りてキャスリンとスティーブの前を通り歩いていく。広間からはそのまま庭に出ることができるようになっている。スティーブに促され、キャスリンも王と王妃の後ろを歩いていく。キャスリンが歩いていくと、見覚えのある景色が目に飛び込んできた。
「ねえスティーブ、この景色あの時のままだわ」
キャスリンがつい声を上げてしまった。横を歩いているスティーブは、キャスリンの声を聞いてキャスリンのほうを向いた。
「そうだね、あの頃のままだ」
王と王妃が歩いている方を見ると、噴水広場があった。あの噴水も見たことがあるとキャスリンは思った。王と王妃が噴水のそばで立ち止まった。そのそばには銅像が建っている。まだ幕がかけられているが、少し大きく感じた。
「今回の銅像は大きいのね」
キャスリンがそう感想を漏らすと、スティーブの顔が少し赤くなった。あれっと思った時、王が銅像の前に立ち周りを見渡した。キャスリンもそちらを見ると、キャスリン達の後ろには広間にいた貴族たちもいつの間にか後ろに控えていた。
王のそばにいた側近が、広間にいた者たち皆がこちらに集まっているのを確認して、王に耳打ちした。
王がそれを聞いて声を上げた。
「今日は、ここに建っている銅像を披露したいと思う。ここにある銅像は、今建っているものとは違い、我が皇国の発展に尽くした王子と天使の伝説をもとにして作ったものである。
今日はナクビル国からキャスリン嬢をお迎えしている。ここにいるものの中にも聞いたものもいるかと思うが、彼女はナクビル国で奇跡を起こした。彼女こそ天使の再来といわれている。今日キャスリン嬢を迎えられたことに感謝し、わが国のますますの発展を祈念する」
王はそういって、銅像の幕を引いた。現れたのは、キャスリンそっくりの像とスティーブそっくりの像が寄り添って天を仰いでいるものだった。もちろん体形も今のキャスリン達の姿で筋肉がふんだんに盛られているということはなかった。
「「「「「わあ~!」」」」」
自然に歓声が響き渡り拍手がおこった。その時だ。
突然銅像がまばゆいばかりに光り輝き、アシュイラ皇国の国花となっているアシュイラの花が空から降り注いできた。あまりの事にその場にいた皆が唖然とする中、キャスリンの頭の中で声がした。そしてつけている腕輪がいきなり光り始めた。
と同時にキャスリンがいた景色ががらっと変わった。突然真っ白な空間にキャスリンは立っていた。
すぐ目の前に一人の女性が立っている。黒髪に黒いまなざし。その女性が言葉を発した。
「今までありがとう。私、ある時アシュイラ皇国の悲劇を視てしまったの。いろいろやってみたけれど、未来は変えられなかったわ。
でもある日私自身におこる不思議なことを視たの。よくわからなかったけれど、とにかく未来を変えたくて不思議なことが起こった時まで戻ることにしたの。それは自分がここに来たばかりの過去だったわ。ただどうしてかわからないけど、今までの記憶がすべてなくなってしまったの。けれど自分の頭の中に誰かがいるのがわかったわ。最初その誰かと話をしたかったけれど、話ができなかったわよね。どうしてあなたが私に入ったのかわからないけれど、今思うと神様がきっと私たちを助けようとしてくれたのね」
そういってその女性は笑った。
「あとね、あなたが私の過去や私の人生を見たように私もあなたの過去を視ることができたの。そしてあなたが、私を助けようとしたり、私が悲しい時に歌を歌ってくれたりと慰めようとしてくれたことも知ってる。だから私もあなたを助けたいと思ったの」
キャスリンは、その女性の話を聞いてすべての謎が解けた気がした。
「あなたを助けようとしたことで、結果的にアシュイラ皇国も助かることになったの。本当にありがとう。あなたにはいろいろ苦しい思いをさせてしまってごめんなさい。でもこれからは今までの分、幸せになってね。ずっと見守っているわ」
そう女性がいったときその女性の横にもう一人男性が現れた。その男性はキャスリンを見てほほえんでくれ、女性と二人手を振ってくれた。
と同時に今までいた真っ白い世界から、また銅像の前に戻っている自分がいた。
「どうしたの?」
急にあたりをきょろきょろしだしたキャスリンを見て、横にいたスティーブはびっくりしたようだった。
「今彼女に会ったの」
キャスリンのもとにひらひらとアシュイラの花が降ってきた。キャスリンはその花を掌で受け止めた。その花はキャスリンの掌できらきらと輝いていたのだった。
「そのドレスよく似合ってるわ」
王妃がキャスリンの着ているドレスを見ていった。
「スティーブ、お前の衣装もよく似合っているぞ」
王も息子であるスティーブの衣装を見て目を細めた。
「ありがとうございます」
キャスリンがスティーブのほうを見ると、スティーブがキャスリンにうなづいてから代表して王と王妃にお礼を言った。
王は満足そうな顔をした。広間にいる貴族たちも皆温かい目でキャスリン達を見ている。
「今回皆にここにきてもらったのは、庭園に造った銅像を見てもらいたいからだ」
そういうと、王は王妃の手を取りひな壇から降りてキャスリンとスティーブの前を通り歩いていく。広間からはそのまま庭に出ることができるようになっている。スティーブに促され、キャスリンも王と王妃の後ろを歩いていく。キャスリンが歩いていくと、見覚えのある景色が目に飛び込んできた。
「ねえスティーブ、この景色あの時のままだわ」
キャスリンがつい声を上げてしまった。横を歩いているスティーブは、キャスリンの声を聞いてキャスリンのほうを向いた。
「そうだね、あの頃のままだ」
王と王妃が歩いている方を見ると、噴水広場があった。あの噴水も見たことがあるとキャスリンは思った。王と王妃が噴水のそばで立ち止まった。そのそばには銅像が建っている。まだ幕がかけられているが、少し大きく感じた。
「今回の銅像は大きいのね」
キャスリンがそう感想を漏らすと、スティーブの顔が少し赤くなった。あれっと思った時、王が銅像の前に立ち周りを見渡した。キャスリンもそちらを見ると、キャスリン達の後ろには広間にいた貴族たちもいつの間にか後ろに控えていた。
王のそばにいた側近が、広間にいた者たち皆がこちらに集まっているのを確認して、王に耳打ちした。
王がそれを聞いて声を上げた。
「今日は、ここに建っている銅像を披露したいと思う。ここにある銅像は、今建っているものとは違い、我が皇国の発展に尽くした王子と天使の伝説をもとにして作ったものである。
今日はナクビル国からキャスリン嬢をお迎えしている。ここにいるものの中にも聞いたものもいるかと思うが、彼女はナクビル国で奇跡を起こした。彼女こそ天使の再来といわれている。今日キャスリン嬢を迎えられたことに感謝し、わが国のますますの発展を祈念する」
王はそういって、銅像の幕を引いた。現れたのは、キャスリンそっくりの像とスティーブそっくりの像が寄り添って天を仰いでいるものだった。もちろん体形も今のキャスリン達の姿で筋肉がふんだんに盛られているということはなかった。
「「「「「わあ~!」」」」」
自然に歓声が響き渡り拍手がおこった。その時だ。
突然銅像がまばゆいばかりに光り輝き、アシュイラ皇国の国花となっているアシュイラの花が空から降り注いできた。あまりの事にその場にいた皆が唖然とする中、キャスリンの頭の中で声がした。そしてつけている腕輪がいきなり光り始めた。
と同時にキャスリンがいた景色ががらっと変わった。突然真っ白な空間にキャスリンは立っていた。
すぐ目の前に一人の女性が立っている。黒髪に黒いまなざし。その女性が言葉を発した。
「今までありがとう。私、ある時アシュイラ皇国の悲劇を視てしまったの。いろいろやってみたけれど、未来は変えられなかったわ。
でもある日私自身におこる不思議なことを視たの。よくわからなかったけれど、とにかく未来を変えたくて不思議なことが起こった時まで戻ることにしたの。それは自分がここに来たばかりの過去だったわ。ただどうしてかわからないけど、今までの記憶がすべてなくなってしまったの。けれど自分の頭の中に誰かがいるのがわかったわ。最初その誰かと話をしたかったけれど、話ができなかったわよね。どうしてあなたが私に入ったのかわからないけれど、今思うと神様がきっと私たちを助けようとしてくれたのね」
そういってその女性は笑った。
「あとね、あなたが私の過去や私の人生を見たように私もあなたの過去を視ることができたの。そしてあなたが、私を助けようとしたり、私が悲しい時に歌を歌ってくれたりと慰めようとしてくれたことも知ってる。だから私もあなたを助けたいと思ったの」
キャスリンは、その女性の話を聞いてすべての謎が解けた気がした。
「あなたを助けようとしたことで、結果的にアシュイラ皇国も助かることになったの。本当にありがとう。あなたにはいろいろ苦しい思いをさせてしまってごめんなさい。でもこれからは今までの分、幸せになってね。ずっと見守っているわ」
そう女性がいったときその女性の横にもう一人男性が現れた。その男性はキャスリンを見てほほえんでくれ、女性と二人手を振ってくれた。
と同時に今までいた真っ白い世界から、また銅像の前に戻っている自分がいた。
「どうしたの?」
急にあたりをきょろきょろしだしたキャスリンを見て、横にいたスティーブはびっくりしたようだった。
「今彼女に会ったの」
キャスリンのもとにひらひらとアシュイラの花が降ってきた。キャスリンはその花を掌で受け止めた。その花はキャスリンの掌できらきらと輝いていたのだった。
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