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転生編
家庭教師ができました
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「ふふっ、じゃあルートヴェング様の元へ向かいましょうか」
お母様は私がネロが自分の家庭教師だということに喜んでいるのを察したらしい。にやにやとさも楽しそうに笑いながら私を立ち上がらせてくれた。……女の勘って怖いな。
「失礼いたします。初めまして、私、ミカエル・フィレネーゼと申します。よろしくお願いいたします、ルートヴェング様」
昨日会ったので本当は初めましてでは無いのだが、初めて会った場所が場所なため、初めましてと挨拶をしておく。それを彼も察したようで、
「初めまして、こちらこそよろしくお願いします」
とイケメンな笑みで返してくれた。流石推し。そうやって空気を読めるところ好き。愛してる。それにもしあの時道に迷ってしまったってことがお母様かお父様にバレたら、軽く説教されただろう。後で思い出したのだが、あの薔薇の庭園のような所はルートヴェング家が所有し、管理している所だった。後にゲーム内でミカエルが迷い込み、彼の兄であるサイラス・ルートヴェングと出会いイベントを起こしていたはずの場所である。兎に角、もしあそこに入ったことがバレたらやんわりと、しかし心にぐさりと刺さる言葉で母に怒られること確定なのだ。ルートヴェングに付け込まれる可能性のある要素を作ってはならないと。全く、貴族というものは恐ろしい。
「今回は引き受けてくださってありがとう。ミカエルちゃんをお願いするわね」
そう言ったお母様の方をちらりと見ると、先程のにやにやした笑いを貴族的微笑に変えていた。見事なものである。そしてお母様は部屋を出て行った。
「一応防音魔法をかけてあるから普通に話して。敬語を使われると変な気分になるし。呼び方もルートヴェング様じゃなくてネロで」
彼のことだから素で言っているのだろう。でも推しの名前を実際に呼び捨てるとなると照れる。正直言うと私は彼に|本気で恋(リアコ)していたのだから。彼がゲームで出てきた瞬間叫んだし、髪を触るといったちょっとした動作で悶えていた。
「じゃ、じゃあ私もミカエルって呼んでほしいです」
場の雰囲気に便乗しておく。断られたら断られたでいい。もし呼んでもらえたらこの人生悔いなしと言ってもいいくらいだ。
「勿論いいよ。ミカエル、ね?」
ね?と彼は首をかしげた。……可愛すぎかよ。普通の中学生男子がやっていたら気持ち悪いとしか言いようがないが、彼がやっていたら非常に可愛い動作へと変わるのだ。破壊力抜群。これだけでゲームのラスボス倒せるんじゃと思う。
「うん。ネロ。これからよろしくね」
改めてもう一度言う。彼も笑ってよろしくと返してくれた。好き。そんな私の幸せで満ち溢れた気分は数秒後に打ち砕かれることとなった。大好きな彼の手で。
「妹が出来たみたいで嬉しいよ」
つまり私は、彼にとって妹的存在で女性として、恋愛対象として見られていないということなのだ。……悲しい。これは彼を諦めろという神からの思し召しなのだろうか。……そうなんだったら、うん、諦めよう。
なんて思うほど私はさっぱりしたいい性格をしていないのだ。恋愛対象として見られていないなら見られるように努力すればいい。そこまで考えて気づいた。……私、頑張ることが少しばかり多くは無いでしょうか。ヒロインとしての運命回避、魔法のお勉強、貴族教育、そして恋愛対象として見られるための努力。こんなに出来るのだろうか、と少し気が遠くなる。……と、とにかく頑張るしかない。私はテーブルクロスの陰でぐっと拳を握りしめた。
お母様は私がネロが自分の家庭教師だということに喜んでいるのを察したらしい。にやにやとさも楽しそうに笑いながら私を立ち上がらせてくれた。……女の勘って怖いな。
「失礼いたします。初めまして、私、ミカエル・フィレネーゼと申します。よろしくお願いいたします、ルートヴェング様」
昨日会ったので本当は初めましてでは無いのだが、初めて会った場所が場所なため、初めましてと挨拶をしておく。それを彼も察したようで、
「初めまして、こちらこそよろしくお願いします」
とイケメンな笑みで返してくれた。流石推し。そうやって空気を読めるところ好き。愛してる。それにもしあの時道に迷ってしまったってことがお母様かお父様にバレたら、軽く説教されただろう。後で思い出したのだが、あの薔薇の庭園のような所はルートヴェング家が所有し、管理している所だった。後にゲーム内でミカエルが迷い込み、彼の兄であるサイラス・ルートヴェングと出会いイベントを起こしていたはずの場所である。兎に角、もしあそこに入ったことがバレたらやんわりと、しかし心にぐさりと刺さる言葉で母に怒られること確定なのだ。ルートヴェングに付け込まれる可能性のある要素を作ってはならないと。全く、貴族というものは恐ろしい。
「今回は引き受けてくださってありがとう。ミカエルちゃんをお願いするわね」
そう言ったお母様の方をちらりと見ると、先程のにやにやした笑いを貴族的微笑に変えていた。見事なものである。そしてお母様は部屋を出て行った。
「一応防音魔法をかけてあるから普通に話して。敬語を使われると変な気分になるし。呼び方もルートヴェング様じゃなくてネロで」
彼のことだから素で言っているのだろう。でも推しの名前を実際に呼び捨てるとなると照れる。正直言うと私は彼に|本気で恋(リアコ)していたのだから。彼がゲームで出てきた瞬間叫んだし、髪を触るといったちょっとした動作で悶えていた。
「じゃ、じゃあ私もミカエルって呼んでほしいです」
場の雰囲気に便乗しておく。断られたら断られたでいい。もし呼んでもらえたらこの人生悔いなしと言ってもいいくらいだ。
「勿論いいよ。ミカエル、ね?」
ね?と彼は首をかしげた。……可愛すぎかよ。普通の中学生男子がやっていたら気持ち悪いとしか言いようがないが、彼がやっていたら非常に可愛い動作へと変わるのだ。破壊力抜群。これだけでゲームのラスボス倒せるんじゃと思う。
「うん。ネロ。これからよろしくね」
改めてもう一度言う。彼も笑ってよろしくと返してくれた。好き。そんな私の幸せで満ち溢れた気分は数秒後に打ち砕かれることとなった。大好きな彼の手で。
「妹が出来たみたいで嬉しいよ」
つまり私は、彼にとって妹的存在で女性として、恋愛対象として見られていないということなのだ。……悲しい。これは彼を諦めろという神からの思し召しなのだろうか。……そうなんだったら、うん、諦めよう。
なんて思うほど私はさっぱりしたいい性格をしていないのだ。恋愛対象として見られていないなら見られるように努力すればいい。そこまで考えて気づいた。……私、頑張ることが少しばかり多くは無いでしょうか。ヒロインとしての運命回避、魔法のお勉強、貴族教育、そして恋愛対象として見られるための努力。こんなに出来るのだろうか、と少し気が遠くなる。……と、とにかく頑張るしかない。私はテーブルクロスの陰でぐっと拳を握りしめた。
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