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学園編

覆面の方々

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 縄がとうとう千切れてくれた。縄がそれなりに太いものだったせいで時間がかかってしまった。魔法を使えないように魔法がかけられていたのは、どうやら腕を縛っていた方の縄だけみたいで、足の方は簡単に魔法で断ち切ることができた。

 どうやったら出れるかさえ分からないので、とりあえず動き回って何かないか探していると、床に扉のようなものを発見。他には何も出れるような扉なんかがなさそうだったから、ここがきっとこの部屋の出入り口。つまりここは、きっと屋根裏だ。

「うーん、出るか」

動かなければ始まらない。ネロやお母様、お父様たちにはここはきっと分からない。分かったとしても、それまでに時間がかかる。他人を待つのではなく、自分でどうにかして動いで逃げ出さないと、私の身がどうなるか分かったもんじゃない。

 魔法で、木のドアに強風を当てる。もともと劣化していたのか、すぐにバキバキといやな音を立ててドアは割れる。私はゆっくりと、体を風で若干浮かしながら下に降りた。

 降りたところにあった部屋から見る限り、ここは、貴族のお屋敷、というより、大きめの古びた富裕層の家って感じだ。貴族なら、位が低くてももう少しくらい豪華だと思う。屋根裏だけでなく、部屋も木で出来ていて、それも屋根裏と同じくらい脆そうだ。少し力を加えたら壊せそうなくらい。

 窓があったので、そこに駆け寄って外の様子を確認する。木、木、木。ここは森の奥のようで、目の前にはそれだけしかない。

「ま、一応やっとくか」

窓には鍵はかかっていなかったのですぐに開く。そこから少し身を乗り出し、手を伸ばす。そして、金色の光の柱を打ち上げた。救難信号として使われるものである。一番大きく、目立つようにするためにそれなりの魔力を使ったので、体力がごそっと削られたのが明らかに感じられた。誰かは気づいてくれるはず。できればそれが王宮に伝わってくれたらいいな。ネロや両親がきっと、私が攫われたことに関して動いてくれているはず。このことが伝われば、ここまで大きく打ち上げられるのは、王族やごく一部の公爵だけだから私だとすぐに察してくれるだろう。

 そろそろ部屋から出てみるか、とちょうど窓を閉めたとき、コツン、コツン、と足音が。……私を攫ったやつか。近づいてきた瞬間倒せるように、扉から少し離れて身構える。

 それからほどなくして、人が入ってきた。真っ白い布のようなものを全身に被っていて、顔は全く見えない。ただ、魔力が多くて強いことだけは感じ取れた。

「……逃げ出したのか。さすがは『聖女の癒し』持ちだな。魔力は封じていたはずなんだがな……」

どこからともなく、真っ白な布の中に手を突っ込んで、先程と同じ魔力を封じるための縄を取り出される。

「あなたが攫ったんですか。目的は?」

「ああ、目的は教えない。次は逃げ出さないよう、動きを完全に封じさせてもらう。何、殺すことはしないさ。変に抵抗すると、傷つけるかもしれないから動くなよ」

縄を持って、一歩一歩私に歩み寄って来る。

『フラッシュ』

目の前で光を放つ。ものすごく強いものだから、しばらくは目を潰せるはず。

 私は、さっきの窓から外に飛び降りた。

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