50 / 76
決戦への備え
連合艦隊司令長官たる小沢治三郎
しおりを挟む
先に示した3個の航空艦隊に小沢の名前が無かったのはもちろん理由がある。
それはポートモレスビーから機体補充に帰投した1943年7月の事だった。
「君にGFの長官をやってもらうことにした!」
司令部に呼び出されて何事かと思っていると開口一番にそう山本に言われた。
「…いきなりですね…」
「次の内閣で首相が東条さんから米内さんに代わることになった。よって本格的な終戦準備が始まることになる。私はその内閣で海軍大臣を務めることが決まった。だから、次は君がやれ」
この工作は大東亜戦争が始まって以来続けられていたことだった。
東条ではおそらく対米講和が無しえないと考えた木戸幸作は米内光政を首相に担ぎ上げ、本格的に対米講和を行おうと考えた。
そして政治工作を行った末、ついに東条の退陣と米内の再登板が決まったのだった。
ただ、米内だけでは陸軍をいなせるかは未知数だ。
そこで政治力に長ける山本に白羽の矢が立ったのだった。
「ですが良いのですか?私は中将であり大将は何人もおられますが…」
連合艦隊司令長官は慣習的に大将が就任することになっていた。
「分かっている…だから君は今から大将だ!」
なんとも強引だが、山本は自身の後釜を小沢以外考えることが出来なかった。
(それに、小沢はかなり戦功をあげている…誰も文句は言わんだろう)
打算も含みながらもこうして小沢は第二十八代連合艦隊司令長官となった。
連合艦隊の顔である長官が変わったため、参謀長も変更されることになった。
それが大西瀧次郎中将である。
彼は生粋の航空屋で山本と共に航空主兵主義に邁進した人物だった。
航空参謀はそのまま樋端久利生少将が務める。
また、新しく創設された情報参謀には中島親孝少将が着任し連合艦隊の面々は固まった。
「連合艦隊司令部はハワイ・真珠湾に置く」
初めての会議で小沢は開口一番に行った。
通常なら前線に司令部が出る等持っての他である。
だが、今の連合艦隊首脳部は大西を筆頭に血の気が多かった。
「是非そうしましょう!」
全会一致で連合艦隊司令部は真珠湾に置かれることになった。
日本海軍ではこうして着々と決戦に向けての準備が行われていた。
これには当然理由があある。
いくつもの情報筋からアメリカ海軍が月間正規空母、月間軽空母、週刊護衛空母など大戦力をそろえていると伝えられていた。
そして1944年の夏ごろには”日本海軍の総戦力を超える”という予想が出されていた。
と言うことは後1年もないことになる。
そのためにこうして備えを行っていたのだった。
それはポートモレスビーから機体補充に帰投した1943年7月の事だった。
「君にGFの長官をやってもらうことにした!」
司令部に呼び出されて何事かと思っていると開口一番にそう山本に言われた。
「…いきなりですね…」
「次の内閣で首相が東条さんから米内さんに代わることになった。よって本格的な終戦準備が始まることになる。私はその内閣で海軍大臣を務めることが決まった。だから、次は君がやれ」
この工作は大東亜戦争が始まって以来続けられていたことだった。
東条ではおそらく対米講和が無しえないと考えた木戸幸作は米内光政を首相に担ぎ上げ、本格的に対米講和を行おうと考えた。
そして政治工作を行った末、ついに東条の退陣と米内の再登板が決まったのだった。
ただ、米内だけでは陸軍をいなせるかは未知数だ。
そこで政治力に長ける山本に白羽の矢が立ったのだった。
「ですが良いのですか?私は中将であり大将は何人もおられますが…」
連合艦隊司令長官は慣習的に大将が就任することになっていた。
「分かっている…だから君は今から大将だ!」
なんとも強引だが、山本は自身の後釜を小沢以外考えることが出来なかった。
(それに、小沢はかなり戦功をあげている…誰も文句は言わんだろう)
打算も含みながらもこうして小沢は第二十八代連合艦隊司令長官となった。
連合艦隊の顔である長官が変わったため、参謀長も変更されることになった。
それが大西瀧次郎中将である。
彼は生粋の航空屋で山本と共に航空主兵主義に邁進した人物だった。
航空参謀はそのまま樋端久利生少将が務める。
また、新しく創設された情報参謀には中島親孝少将が着任し連合艦隊の面々は固まった。
「連合艦隊司令部はハワイ・真珠湾に置く」
初めての会議で小沢は開口一番に行った。
通常なら前線に司令部が出る等持っての他である。
だが、今の連合艦隊首脳部は大西を筆頭に血の気が多かった。
「是非そうしましょう!」
全会一致で連合艦隊司令部は真珠湾に置かれることになった。
日本海軍ではこうして着々と決戦に向けての準備が行われていた。
これには当然理由があある。
いくつもの情報筋からアメリカ海軍が月間正規空母、月間軽空母、週刊護衛空母など大戦力をそろえていると伝えられていた。
そして1944年の夏ごろには”日本海軍の総戦力を超える”という予想が出されていた。
と言うことは後1年もないことになる。
そのためにこうして備えを行っていたのだった。
17
あなたにおすすめの小説
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
異聞坊ノ岬沖海戦 此れは特攻作戦に非ず
みにみ
歴史・時代
1945年4月 米軍が沖縄へと上陸 日吉台は菊水一号作戦発令
第一航空戦隊旗艦大和率いる第二艦隊は全兵力をもって
これを迎撃せんとす 基地航空隊との協力を持ってこれを撃滅せよ
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
【架空戦記】炎立つ真珠湾
糸冬
歴史・時代
一九四一年十二月八日。
日本海軍による真珠湾攻撃は成功裡に終わった。
さらなる戦果を求めて第二次攻撃を求める声に対し、南雲忠一司令は、歴史を覆す決断を下す。
「吉と出れば天啓、凶と出れば悪魔のささやき」と内心で呟きつつ……。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる