小沢機動部隊

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決戦への備え

陣風一一型

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ポートモレスビーへ帰投した第三航空艦隊は補給を終えると今度は真珠湾へ出立した。
実は、既に大本営や連合艦隊司令部はアメリカ軍との決戦の時期を予想していた。
そのために、重要な戦力である第三航空艦隊を小沢はすぐに真珠湾に呼び戻したのである。
なぜ予想できたのかと言うと、彼の国が民主主義国家だからである。
アメリカの国力は日本の10倍とも言われる。
だからアメリカが艦隊整備に時間をかければ日本は必敗だ。
ただ、現実はそうではない。
アメリカ世論は負け続きの太平洋戦線に嫌気が差しており、ルーズベルト大統領への求心力は低下していた。
1944年の秋には大統領選挙が控えており、対立候補となる公算が高いトマス・デューイは”即時の対日戦線の停戦”を叫んでいた。
これに世論は強く迎合し、ルーズベルト大統領のその地位を揺るがしていた。
そのため、ルーズベルト大統領は異例の四選を勝ち取るためにも”大統領選挙までにデューイを黙らせるほどの大戦果”を上げなければならなかった。
これは大本営なども重々承知しており、”アメリカは1944年の中旬辺りに反抗作戦を仕掛けてくるに違いない!”と考えていた。
そして、その反抗作戦の場は間違いなくハワイである。
南太平洋やインド洋と言うことも考えられるが、南太平洋にはめぼしい戦略目標が無く、インド洋に関してはインドネシアを占領するにしても大統領選挙までには到底間に合わない。
だから、孤島であるため日本軍の増援が来にくく、それでいて重要な拠点であるハワイが攻撃されるというのが大本営の考えだった。
連合艦隊司令部も同様の見解を示していた。


1944年3月14日。
真珠湾に帰還した山口に休みは無かった。
新型艦上戦闘機を受領したからである。


陣風一一型
最高速度:時速653㎞
武装:20㎜機銃6挺
翼面荷重:155㎏/㎡
プロペラ:直径3.42mが3枚
搭乗数:1人
搭載能力:250㎏爆弾1発
航続距離:時速450㎞で1400海里
全長:10.55m
全幅:12.5m(折り畳み時5.57m)


三菱の烈風との模擬空戦で完勝を収めた本機は紫電改二の進化版とも言える機体だった。
紫電改の長所である翼構造や自動空戦フラップはもちろんの事、20㎜6挺の大火力。
加えて長大な航続距離を実現した。
2200馬力に強化された誉エンジンを搭載したからこそこの高性能を叩き出せたのだが、川西の技術陣の努力が8割だった。
「新型機はかなり使いやすそうだな」
山口の問いかけに源田は笑顔で応える。
「はい、これは傑作機です」
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