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 それから春まで寒いはずの冬は、私にとって暖かく楽しい時間だった。
 ディランは優しいし、お父様は優しいし…
 ディランは、他所の子になったため執事ではなく、将来の婿養子に入る勉強のために逗留している事になっている。
ただ、勉強なんてもういらないと言うか、お父様より詳しいので、仕事を手伝って、暇な時間は私と過ごしてくれているのだ。

 今日も私は、ソファーに座るディランの膝の上に座らされて、後ろから抱きしめられている。

 一応、結婚までは清い関係でいるのが、ディランのこだわりなので、まだキスもしていないんだけど、過度のスキンシップは欠かさないようだ。

 まあ、自分の出生の事があるから、結婚まで待つというディランの気持ちはわかる。
わかるけど、スキンシップをお父様の前でも平気でするので恥ずかしい。

「ディランがここにいてくれるから、学園に行くのがなんだか嫌になって来ちゃった。」
「うん、そうだね。悪い虫がいっぱいいる学園に行かせる事もないんだとも思ったけれど、友人を作れる大切な時期でもあるから、今しかできない事を経験して欲しいかな。」
「卒業まで3年、待っててね。」
「俺は一生、シャーリーの幸せを見守るつもりだったくらいだから、3年くらい大丈夫だよ。」
「私が待てないかも。」
「王都に邸を買うつもりだから、休日にはそこで過ごして、長期休暇は、2人でここへ帰って来よう。」
「お父様の手伝いするんじゃないの?」
「そっちもあるけれど、自分でやってる事業の都合で王都に行く必要があるから、春以降は行ったり来たりになるよ。」

 執事の時にもいろいろと優秀な人だと思っていたけれど、私の婚約者様はやはり優秀なようです。
最近は私には怖くないけれど。

「シャーリー、話があるんだけど。」
「なあに?」

 私を抱きしめていた手を放し、ソファーの前に降ろされた。

「シャーロット。私の妻になってくれますか。」

 差し出したディランの手には、ディランの瞳と同じ緑色のエメラルドの指輪が乗っている。

「ディラン、ありがとう。よろしくお願いします。」
「はめていい?」
「はい。」
「学園での虫除けだから、外したらダメだよ。」
「はずすわけないわよ。」
「シャーリーはラゼット子爵の婚約者だって言いふらしていいから。そのうち夜会に一緒に行こうね。」
「いいの?」
「メガネはかけていくし、エバンスからラゼットに変わっているから、最初のうちは知り合いが寄ってきてうるさいかもしれないけれど、シャーリーは気にしなくていいから。」

 もうすぐ春、学園に入学したら、どんな事があるのかわからないけれど、ディランが私のことを支えてくれるからがんばれそうな気がする。
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