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Act.2 魔獣討伐の現場で子供を拾った話

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 ご一家の朝食が終わると、すぐに御館様、ゲオルギオス様は騎士団の隊服にお召し替えになった。
 当然、騎士団にも籍を置いている親父たちも支給の隊服に着替える。
 クリストファー様と俺も例外ではない。
 クリストファー様は魔道士隊の小隊長服に、俺は第一部隊の隊服だ。
 騎士団の屯所は屋敷の敷地内にあるが、本邸からは徒歩で10分ほどかかる。今回は移動時間短縮の馬移動だ。
 ……しかし、どうしても目の前の金髪が気になってしまう。

「……クリストファー様、馬、乗れますよね?」
「ん? うん」
「なら、なんで毎回俺と相乗りなさるんですか……?」

 緊急事態でもない限り、クリストファー様は大抵こうして俺と相乗りなさってしまう。せっかくご自分の馬がいるっていうのに。

「だってぇ~、堂々とディランとくっつける機会なんだよ~? 逃す手ないじゃん!」

 ……分かる。お顔を覗き込まなくても分かる。
 絶対、ものすごい神々しい笑顔でおっしゃっているに違いない。

「ご自身の馬に嫌われても知りませんよ!」
「大丈夫大丈夫! あの子には、俺とディランのデートなんだって毎回言い聞かせてるから!」

 それで納得する馬も凄いな。
 ……まあ、相乗りを許す御館様も、絆されて乗せてしまう俺も俺なんだが。
 ため息をついていると、騎士団の屯所が見えてきた。俺は手綱を握り直す。
 乗ってきた馬を厩に預け、俺とクリストファー様は揃って会議室に入る。

 会議室は、壁際に書記のための記載板があり、その前に円卓が置かれている。
 クリストファー様は自分に宛がわれた席につき、俺はその後ろに待機だ。
 俺たちが着いたときには既に団長であらせられる御館様、第一部隊隊長ゲオルギオス様、第一部隊副長ナイレン殿、魔道士隊隊長ルーイ殿、副長エウラリア様、医療魔道士隊隊長エウフェミア様がいらっしゃった。

 エウフェミア様とエウラリア様は双子で、クリストファー様の実の姉君方でいらっしゃる。
 奥様譲りの容姿と金髪、能力をお持ちで、エウフェミア様はまっすぐな髪、エウラリア様はウェーブがかった髪をなされている。
 エウフェミア様はナイレン殿に、エウラリア様はルーイ殿にそれぞれ嫁がれ、グルシエスの屋敷からは離れて生活なされておられるのだ。
 なので、俺が二人のお姿を拝見したのは本当に久しぶりのことだ。

 ナイレン殿はゲオルギオス様と親父が学園在籍中にその才能を見いだされ、卒業後はまっすぐここに就職なさった。
 モスグリーンの短髪で涼しげな風貌、いつも背中に長弓を背負っておられる。

 ルーイ殿は魔道士隊のローブのフードを目深に被り、猫背が特徴の方だ。
 神々しい美貌に囲まれてるとそのうちジュワァと溶けてしまうかもしれない……、と魔道士隊の方々に話して、深い賛同を得られていた。
 確かに、眩しすぎて目が潰れてしまうのでは? と俺も思うことは多々あるが、溶けはしないだろう、人間だし……と思うのだが。
 ちなみに、自己評価は不細工とのことだが、そんなことはない。たまにビシッと正装されている姿は夜天の髪と目もあいまり、闇夜の妖精のようなたたずまいだ。きつめの三白眼ではあるが。

 ご夫婦方から俺とクリストファー様に卒業の祝辞をいただいたりしているうちに、第二部隊隊長デイヴィッド様、副長ジャック殿、カルムが会議室に来た。

 デイヴィッド様は御館様のご次男で、敷地内の別邸にてご家族でお住まいになっている。
 ただ御館様の意向で、かなりの頻度で昼食や晩餐を本邸でお召し上がりだ。
 容姿は少し髪色と目の色が薄い御館様、といった感じだ。十分過ぎるほどの巨躯をお持ちで、筋骨隆々であられる。
 その上、大木のごとき鉄鞭やらウォーハンマーやらを、まるで羽根細工かの如くブンブンと振り回せる膂力をお持ちだ。

 ジャック殿は元々流しの傭兵であったが、我らが騎士団を気に入って入隊した方だ。
 元は別の領出身とのことで、ハイマー領にはない珍味の知識が豊富で酒にもお強い。
 焦げ茶の髪と左頬の傷、どことなく狐っぽい細目がトレードマークだ。

 会議は大体このメンバーで行われることが多い。どうやら、今日もそうであるらしい。
 グルシエス家の方々や部隊幹部の方々が円卓に着き、護衛の執事やメイドが自らの仕える主の背後の壁際に立つ。
 定刻となった10の刻、参加者それぞれに資料が配られ、ハイマー辺境領騎士団定例会議が始まった。
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