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六章 探求の魔女アンタレス
127.孤独の魔女と妖女の微笑み
しおりを挟むカリストはこの長期休暇明けから精力的に動き出し、その勢力を拡大させて行っている、クライスさん率いるアコンプリス達によってもたらされた報告を エリス達はその後 視覚的に認識することとなる
「おいおいおい…」
「これは…」
対カリストへの対策をある程度固めたエリス達、とにかく今はカリストの動きを探ることにあると言う方向性で話は定まり さぁ今日から情報収集だと意気込んで学園に登校すると
そこには
「キャーーー!カリスト様ァーー!!」
「こちらに視線を!どうか!その慈悲深き瞳で汚らわしい我が身を浄化してくださいませ!!」
「カリスト様!バンザーイ!バンザーイ!」
校門の前 というか学園の周辺を埋め尽くさんばかりの女子生徒の群れを前にする、ワラワラと群がる亡者の如きそれは皆 ただ一点に向けて声援を送り万歳三唱を轟かせている
「子猫ちゃん達ぃ~?おはよう~?、今日も楽しい一日にしましょう~!」
カリストだ、無数の女達を侍らせて優雅にしゃなりしゃなりと歩きながら登校する、ただそれだけの動作に感激して気絶する女子さえ出る始末、すごいな なんか
「勢力伸ばしてるとは聞いてたが、ここまでか」
ラグナが苦笑いを浮かべながら口を割る、そうだ これはエリス達にも想定外だ、もうノーブルズだから人が寄ってくると言うレベルじゃない、これは明らかに異常だ
「長期休暇前から女は連れていたが、こんな人数では無かったはずだ…長期休暇中にも虜を増やしていたか、いや増えすぎだ…!」
「ガニメデがいなくなってより一層幅きかせてるって感じですね」
今や時代はカリストのものって感じだ、今はノーブルズでさえ カリストを抑えられる状態にはないだろう、もしカリストが本気を出せば 学園なんか簡単に乗っ取れるんじゃないか?
「こりゃカリストが軍勢作るまで、思ったより時間がなさそうだ…ん?」
「どうしました?ラグナ」
「…いや、エリス あれ見てみろ」
ふと、ラグナは目の前のカリストパレードから目を外し 少し離れたところを指差す、そこには二人の男女がおり…、なんだ?言い合いをしているのか?あまり良い雰囲気ではなさそうだ
「ま 待ってくれよ!エイミー!どこに行くんだ!」
「離してアントン、邪魔しないで!」
縋り付くように女子生徒に捕まる男…アントンと、それを振りほどこうと暴れる女…エイミーが言い合いをしている、剣呑だ 二人とも鬼気迫る形相で声を荒げている
「な なんでだよ!なんでだよ!、昨日までカリストなんかより僕の方が好きだって!、僕達愛し合ってるって言ってたじゃないか!」
「はぁ?、何言ってんの?、あんたなんかよりもカリスト様の方が百倍素晴らしいわ!、…あんたなんかもう邪魔でしかないの、恋人面しないで」
「ぼ 僕達付き合って…」
「そんなの知らない!」
どうやらアントンとエイミーは交際関係にある仲だったようだ、しかし アントンの様子を見るに、突如として恋人エイミーの様子が変化…、まるでエイミーはアントンへの愛を忘れたかのようにカリストを信奉し始めているのだ
それでもなお縋り付くアントンの元に…更に影が現れる
「ちょっとあなた?」
「あ!カリスト親衛隊の皆さん!」
「え?、親衛隊?…」
エイミーは顔を明るくする、カリスト親衛隊と呼ばれる存在が十数人と言う大群で現れ 瞬く間にアントンとエイミーを囲むのだ、異様なのはその姿…
カリスト命!と書かれた法被…カリスト親衛隊!と書かれた鉢巻…アイラブカリスト様と書かれたのぼりを背にした人間が十数人、これを異様と形容しなければ他の何をそう呼ぼうか
「な なんですか!今僕達は話し合っていて…」
「この学園の女子生徒は全員カリスト様の所有物なの…」
「カリスト様から持ち物を奪おうなんて…下郎が」
「これだから男は…、その汚らわしい手を…カリスト様の所有物である彼女から手を退けて」
「な 何を…」
冷たい視線 冷徹な言葉、投げかけられたアントンはただ呆然とするばかり、しかしすぐに悟る それは忠告でも警告でもなく、宣告であったこと…刑罰執行の宣告であったことを
「汚らわしい男は消えて!」
「な…ぐがぁっ!?」
蹴り飛ばされるアントン、一切の容赦なく蹴り抜かれエイミーの手を離しその場に倒れこむと同時に親衛隊が群がり、全員で次々と足を上げその体を踏みつけ蹴り上げる、リンチだリンチ
ひ弱な女の子の弱々しいキックじゃない、燃えた布を消化するが如く 全力のピストン、群がり叩き込む 男の体に、思わず目を背けたくなる惨状だ
「カリスト様が仰られるのよ!男なんかこの学園に必要ないと!」
「とっとと失せなさいよ!邪魔!邪魔!」
「や やめて…やめてくれ!、エイミー!エイミー助けてくれ!」
「……ぺっ!もう話しかけないで……、カリスト様ぁ~!」
蹴り回されボロ雑巾のようになりながらも、恋人に助けを求めるが 返ってくるのは言葉でもなければ愛でもない、決別を告げるように唾を吐き捨てエイミーはそそくさとカリストのパレードへと加わってしまう
「そんな…そんなぁっ!」
アントンは親衛隊に一頻りリンチを受け、鼻血を流しながら地面に倒れ伏し 涙を流しながらエイミーにそれでも縋り付こうとするが、もはやエイミーや親衛隊は足を止めるそぶりもない…
これがもし、カリストによって引き起こされた自体だと言うのなら…惨いな、ガニメデの時より酷いかもしれない
「…なんて酷い」
「恋人であれなんであれ関係なしか…、人間が一晩のうちにガラリと変わる、恐ろしい話だ」
エリスとメルクさんはその倒れふす男を見て眉をひそめる、多分だが これはこの場だけで起こった悲劇ではあるまい
男は奪われ傷つけられ追いやられ 女はその身やその心 全てを徴収される、悲痛は外へ快楽は内へ…まさしくカリストを中心とした苦と楽のスパイラルがこの学園で巻き起されていると言っても過言ではあるまい
「ってかデティ、さっきから口数くないけど どうした?」
そう言えば とラグナの言葉でふと思い出す、この学園に近づいてからデティの口数が少ないことに
見てみればデティは難しい顔をしてボケーっとしており…
「デティ?」
「ああうん、大丈夫…だけどちょっと酔っちゃって…」
「酔った?」
「あのカリストハーレムから吹き出る魔力が、全部気持ち悪いくらい同じで、…それがあっちこっちにいるもんだから 目が回っちゃって」
カリストに向けられた同じ感情 それから生じる魔力が溢れるこの学園、その心を感覚で感じてしまえるデティには、エリス達では感じようもない気持ち悪さを感じているのだろう
「大丈夫ですか?デティ」
「大丈夫大丈夫…すぐ慣れるから、でもこれからこれがひどくなると思うと憂鬱だなぁ」
「気持ち悪いなら教室まで負ぶってくぜ?」
「ありがとーラグナ~」
ヘロヘロ~とラグナに寄りかかるデティ、そうか デティにはエリス達に見ることのできない世界が見えているんだ、それは決して得な事ばかりじゃない、同じくらい不便なことも多いんだ、そこは気を使ってあげないといけないな
「よし、では授業を受けた後 昨日の話し合いの通りカリストの周辺の調査に当たるか?」
「そうだな、ただデティにはキツそうだから俺とメルクさん あとエリスだけで動こう」
「ごめんみんな~…すぐ慣れるから~」
ともあれやることは変わらない、あんな様を見せられたら尚のことこれを放置できない、取り敢えず なんとかカリストの動きを抑えられないか模索してみよう
………………………………………………………………
今日の授業は座学、昨日と同じで先輩達と同じ教室で授業を受けることになったのだが
「……ここもですか」
エリスは席に座りながら額を抑える、分かってはいたが…こうして目の当たりにすると頭痛がするな
「カリスト様ぁ…」
「こんな授業終わらせてカリスト様に会いに行きたいわぁ…」
「ああ、カリスト様 今何をされているのかしら」
顔を紅潮させてポヤポヤと空を見上げる女子生徒達が多数…、みんなカリスト命の鉢巻をしており、カリストの名を口にしてボーッとしている…異様な空気だ
しかも
「あぁ~!カリスト様!カリスト様!、わたくしの全財産を叩いてでも貴方に貢ぎたいですわぁ~!」
あの成金お嬢様のミリアもまた鉢巻を頭に巻いてクネクネと叫んでいる、彼女とは少なからず顔見知りだからこそ分かる
あの人は誰かに対して貢ぐタイプじゃないはずなのに…それがいつの間にかカリストの信奉者になっている、本当に人が変わったように熱狂している、ちょっと異様だ
他にも昨日エリス達と戦ったあの学年主席候補のホリーさんも静かに頭に鉢巻を巻いていることから、彼女もまた信奉者になっているんだろう…昨日はそんな素振り見せてなかったのに、たった一日で彼女も変わってしまった
今この教室でカリストに夢中になっていない生徒はエリス達くらいなものだろう
「うぅ…紙の上に判子で写したみたいにみんなおんなじに魔力してるよぉ~」
そしてデティは気持ち悪そうに頭をクラクラさせている、しかしだから言ってエリスに出来ることはない、精々彼女の背中をさするくらいだ
「……カリストは私達を破滅させると同時にそのまま学園の主導権を握るつもりなのかもしれないな」
「いや、…果たしてそれだけで済むかな…」
うちの首脳陣も危機感をあらわにしている、ガニメデのように真正面からではなく じわじわと目の前の日常が変わっていく感覚、なんて恐ろしいんだ
「それにさなーんか、こうして支配されていく学園を見ると、カリストの狙いは学園を牛耳ることだけじゃない気がしてくるんだよな」
「どういう意味だ?」
「勢いがありすぎる、まるで何か…急いでいる印象を受けるんだ、はっきり言えば時間をかけりゃ支配なんか屁でもねぇだろうに、そこをせこせこ…まるで期日に追われる業者のようだ」
「何かの日に間に合わせようとしている?」
「分からん、そこも含めて調べてみよう、クライスなら何か知ってるかもだしな」
まだ確定的なことを何も言えないしなとラグナは言うが、ここにきて急に動き出したのには意味があるのは間違いない、休憩時間を使って調べてみようと思い至った瞬間 教室に先生が入っている…のだが
「まじですか…」
入ってきたのは女性教師…、その姿はカリスト親衛隊と同じもので、まさか 教師陣までカリストに掌握されているのか…
「では皆さん!今日も元気にカリスト様に感謝しながら授業を受けましょう!」
手で顔を叩き呆れる、バッチリ掌握されてら…、教師の号令にカリストの虜は雄叫びを上げ 男子生徒諸君はその異様に慄く、エリスもだ…これ本当にどうってしまうんだ、この学園は…
………………………………………………………………
「カリスト様!バンザーイ!」
「カリスト様!バンザーイ!」
「カリスト様!バンザーイ!」
学園の中から 外から、響く狂声 歓声…皆一様に同じ目をして、同じ顔をして、同じことを言う…、この歴史あるディオスクロア大学園が一夜のうちにガラリと様変わりし、気味の悪い宗教団体の巣窟のようになってしまった
「……はぁ」
学園の天辺に存在するノーブルズの聖域、その窓辺にてイオはその様を見てため息をつく、これで学園の秩序も何もない、いや 或いはこれこそが究極の秩序と言えるのか?、皆が妄信的に上を見て 敬愛だけを捧げる、反逆などはなく 同じものを見るからこそ争いものない
「気に入らなさそうだなイオ」
なんて、いつものように部屋の奥からアマルトの愉快そうな声が響く、彼はこの事態さえ楽しんでいるように見える
この事態はカリストにより巻き起された、詳しく言うなればアマルトが与えたカリストの力により巻き起された、大元を正せばこれはアマルトがやっているに等しい
…この力で 学園の女子は一致団結し一つの秩序を目指し強く纏まっている、反面男子生徒は酷い有様で、掃いて纏めて隅に追いやられる埃やチリのように学園の影に身を寄せ合い始めている
二分されている この学園は、その隔てりはいつか亀裂となり …割れる、真っ二つに この学園が
アマルトはそれを望んでいるのか?、その果てに秩序があるならいい…だが…
「気に入らないと言えば気に入らない、…女子生徒には秩序がもたらされるが男子は、この学園の半分はその恩恵に預かれない、学園を二分するのは正しいことなのか?」
「ぷっ…ははははは!、何言ってんだよイオ!、おいおいやめてくれよ、そりゃお前が今までやってきたこととなーんにも変わらないだろ?、秩序の為に生徒を切り捨てる、お前がやってきたことと何にも変わんないんだよこの状況は変わらない…だろ?」
痛いところをついてくるな、そうだ 私が今悩んでいるのはその事だ、私はこの学園から不純物を取り除き出来る限りこの学園の純粋化に励んできた、それこそが上に立つ人間の務めであると 無辜の者達を守るのが王であると、信じていた
だがこうして虐げられ奪われた人間を見て思う、…私の追い出した生徒も同じような目をしていたと
(私が退学にした生徒も、カリストに虐げられる生徒も…本質は同じ、…いや だが今更迷うわけにはいかない、ここで私が非を認めれば今までが過ちと認めたら…、私は今まで追い出してきた生徒にもこれから治めていく国民にも会わせる顔がない)
例えその行いが愚かでも、私は認めるわけにはいかないんだ 私だけは、私の道を信じるしかない
「アマルト…お前は何を見ているんだ、カリストのこの行い 明らかに暴走しているように見えるが」
「今までがしてないみたいな言い方はよそうぜ、…まぁ?カリストが仮に暴走してても俺達がどうこうって事は無いだろ?、あいつのやった事はあいつの責任 俺のじゃあない」
「それは…力を与えた者としてあまりに無責任じゃないのか!」
アマルトの飄々とした態度に、怒りが噴き出し 彼の目を睨みつけながら怒鳴りつける、…すると彼の顔色はみるみる変わり
「イオ……」
キョトンと不思議そうな顔をしている、私に怒鳴られると思わなかったか?、唯一の理解者と思っている男に、だがなアマルト お前は…お前はそれでいいのか、お前は学園理事長を継ぎたくないかもしれない、だが自暴自棄になって学園をかき乱す真似をして何になるんだ
これではお前の手の中に何も残らないぞ
「…別に、責任転嫁しようってんじゃねぇよ」
「分かっている、だがなアマルト…教えてくれ、お前はこの学園をどうしたいんだ、この学園に混沌をもたらしてお前はその先に何を見ている」
「…つまらねぇこと聞いてくれるなよ」
つまらなくない お前の将来に関する大切な話だ、目で強く訴えればアマルトは眼下の後継へと目を移し
「……こんな学園、無い方がいいんだ」
「滅多なことを言うな、この学園は我が国の叡智の殿堂であり、世界中の夢を持つ若者の最後の砦だ、ここで学皆夢を叶えようと…」
「こんな場所があるから叶わねぇ夢なんか見るんだよ全員、俺達の足元で足掻く生徒の一体どれだけが卒業後夢を叶えられる?、ここで学べばもしかしたら そう思わせるから夢を捨てられないんだよ、阿呆らしい」
「だが…!その夢を奪っていい権利など…」
「お前がそれを言うか?イオ」
「っ……!」
…たしかに私はもう既に百に至ろう生徒を退学にしてきた、彼らとてこの学園に夢を見て入学してきた、…だが それを奪ったのは他でも無い私
私も夢を奪っている側 壊している側 否定している側、…私にアマルトを責める権利はない
「上に立つ人間ってのはいつも人の夢を奪う、目的を笑い踏み躙る、俺達はそう言う人間なんだ 今更善人ぶるなよ」
「…………」
何も言い返せない、私のことを棚に上げて アマルトだけを糾弾することなど出来はしない…分かってるさ、そのくらい …私では なんともできないことくらい
「イチャイチャしてるとこ失礼?」
「お、カリストぉ」
ふと、背後から声がする…、艶やかな美声 カリストだ、彼女が一仕事終えて戻って来たようだ
「何をバカなことを…、それよりカリスト お前この学園の様はなんだ!」
「あら、エリス達の処分を任せると言ってくれたのは二人でしょ?、私のやり方に口 挟まないでくれる?」
「そうは言ったが、今学園はお前のせいで男子と女子で二分され混沌を極めている、このままでは学園が割れるぞ!」
「いいじゃない、元々男と女は神が別の存在として作った物、別の存在なのに一緒くたにする必要なんかないのよ、女はこちらへ男はあちらへ、それが日向か影かの差よ…」
「我々も…追いやるか」
「あら、イオ 不安なの?自分が迫害される側に回るって…あははは、惨めねぇ」
こいつは…、だが アマルトはそれさえも愉快そうに嗤うと
「いいぜカリスト、お前の好きにやりな 俺はお前に好きにさせるために呪術を教えたんだからな」
「ありがとうアマルト、男の中じゃ貴方が一番好きよ」
「そりゃ嬉しい、で?このまま女子軍団作り上げて…何すんだよ、数揃えても意味がねぇのはお前だって理解してんだろ?、今のままじゃあエリス達には傷一つ与えられないぜ」
結局 アマルトもカリストも、今はエリス達しか見てないんだ 争いの先に学園がどうなるか、気にしているのは私だけか…
まぁ、エリス達も放置出来ないのは分かる、元を正せば奴等が我等ノーブルズを刺激して争いの火種を撒いたのが原因なんだから
「そこら辺は安心して、これは飽くまで下準備…私は派手なのが好きなの、やるならド派手に、アイツらに人生最大の屈辱を味あわせ目の前に跪かせる、それにそうしなきゃ意味ないでしょ?私が勝者!奴等が敗者!そう知らしめないとノーブルズに開けられた穴は埋めようがないわ」
ガニメデが敗れ ノーブルズの一角が崩された、不可侵と思われたノーブルズの領域が崩されたんだ、そのことで調子付く生徒は多くいる、『ああ、ノーブルズって倒せるんだ』そう思われては困るのだ
そうなれば学園内で反乱が起こるだけでない、今後の私の治世にも反発者を多く出すことになる、それは避けねばならない
「だから…一週間後、そこでド派手にお祭りをするわ」
「一週間後?、…ああ、例のアレか いいんじゃねぇの?上手くやれよ」
一週間後?…そう言えば一時間後には秋の収穫祭がこのヴィスペルティリオで行われるな、いや その祭りの中で…そうか、カリストはアレを活用するつもりなのか、だから女を…
「まぁ、任せるよ エリス達を破滅させられるならなんでもいい、奴等が敗北に塗れて横たわる姿が見られるならなんでもな」
「ええ、任せて頂戴、これ以上ないくらいの破滅を奴等に与えるわ、じゃ…私は下準備を続けるわね」
そういうとカリストは再び部屋を出ようとして 扉に手をかけた瞬間…アマルトが、口を開く
「なぁカリスト」
「ん?なぁに?」
「俺はお前に好きにさせている、その意味が分かるよな」
「…何が言いたいのかしら?」
「何ってそりゃ」
するとアマルトは歩み、カリストの目の前まで行くなり その体から…悍ましい迄の何かを溢れさせる、威圧 重圧 なんとでも言えるそれを解き放ち…
「好きにさせてんだ、しくじったら分かるよな」
「っ……、わ 分かってるわよ、そもそもしくじらないわ、私が本気を出せばあんな奴らそもそもイチコロなのよ、それを証明してあげるわ」
逃げるように扉を開け走り去るカリスト、…恫喝だ しくじればお前も今の立場を失うぞと、釘を刺した…呪いの釘を
そんなカリストの走り去る姿を見て、アマルトもまた一息…ため息をつくと
「本気を出せば…ねぇ、そりゃ本気を出したことのない人間のセリフだ、俺は嫌いだねぇ」
そう一言 誰に言うでもなく呟くと、彼はいつも通り部屋の奥…光届かぬ闇の中へ消える
アマルトにとっては このノーブルズもまた、友ではないのだ…自分の思惑を遂行するための手段 あるいは手駒、私さえも…
あの呪術を受け取って、彼の手駒と化した私達にはもう…アマルトは止められない
…………………………………………………………………
午前 午後の授業が終わり、学園は放課後に突入する…
赤らみ始める陽光が学園の内も外も照らし 赤くなり始めた廊下を見ていると、今日も終わりだな なんて感傷的になる時頃、エリス達は動きを強めるカリストの狙いを調査する為手分けをして彼女の取り巻きを調べることになった
カリストの軍団は巨大だ、カリストの周辺にいる大群には入りきらないほど彼女の虜は今この学園を席巻している、どこを歩いてもカリストの虜はいる 調べることに事欠きはしない
「…………」
だからほら、こうしてちょっと廊下を歩くだけで 見えてくる、カリスト親衛隊だ
カリストの名が刻まれたのぼりと法被を纏った集団、カリストの為に動き カリストの敵を排除する集団であり、彼女達はカリストの為 この学園内をパトロールしているのだ
差し詰めガニメデのジャスティスフォースのようだ、あれよりも横暴で恐ろしいが…
「おい!そこの男子!」
「え!?」
ふと見てみれば、カリスト親衛隊が近くを通りかかった男子生徒に声を荒げる、男子生徒の脇には本が挟まれており、授業終わりに学園に残って勉強しようとしていたところだろう、責められるべきところはどこにも無い、むしろ賞賛されるべき勤勉さだ…しかし
「この学園はカリスト様の物になるんだ!お前ら男子はとっとと出て行け!」
「で…出て行けって、勉強するのは別に構わないだろ…」
「ダメだ、カリスト様は汚らわしい男の存在が大嫌いなんだ、それが一秒でも長くこの学園に居座ることを許しはしない!、早く出て行け!」
そういうなり親衛隊は男子を囲み威圧し始める、大男が拳を握りしめ睨むよりも例えか弱いとは言え女の子とはいえ集団に敵意むき出しで囲まれる方が怖いこともある、ましてや親衛隊は親の仇でも睨むかのように敵意ビンビン 受け答えを間違えたらその瞬間掴みかかってきそうな雰囲気だ
「な なんで…」
「なんでも何も!早く!、さも無いと執行を…」
「や やめてくれ!あの人達は呼ばないでくれ!分かったから!もう帰るよ!」
執行、朝を見せたアレか…、もうあの惨劇は学園中に広まっているようだ
『カリストに逆らえばリンチを受ける』、例え男特有の力で群がる親衛隊を振り払っても次はそれ以上の数を揃えてくる、それを振り払っても次はもっと…まるでアリの大群のように群がってくるのだ
数 それはどんな握り拳より恐ろしいのだ、カリストはそれを揃えている…カリストという旗印がある限り人は幾らでも集まってくるんだから
それを分かっているから男子達も彼女達を前にしたら逃げるのだ、尻尾を巻いて…
「全く、男子とはなんともしぶとい、こうして自警をしなければすぐに蔓延る」
「まぁまぁ、それも一週間後までですよ」
ん?、…男子が去った後 話し込む親衛隊の声が聞こえてくる、一週間後…何があるんだ?、もっと詳しく聞かせて聞かせて
「ああ、収穫祭の…」
「そうそう、この街一番の美人を決めるコンテスト『エウプロシュネ』…あれを利用すればカリスト様はこの国を掌握できる、それまでの辛抱よ」
美人を決めるコンテスト?…エウプロシュネ…、何やら気になるワードが出てきたがちょっと待て、この国を掌握する?え?何?カリストの狙いはこの国を掌握すること?、いや違う 掌握しエリス達を叩き潰すのだ、学園内にとどまらず この国の全てを使って 数の暴力で
さ 流石に不味く無いか?何をするかは分からないが、もし本当にカリストがこの国を支配下に置けば…一つの魔女大国の全てをエリス達は相手にすることになる、流石に勝てない ヤバい、ラグナに報告しないと
「カリスト…なんてことをしようとしているんですか、貴方は…」
「確かにぃ、魔女を差し置いてこの国の支配を目論むなん随分気骨がありますねぇ」
「……ん?」
ふと、エリスの独り言に返答が返ってくる、何事とゆっくりと背後を見れば
「やぁ、いつぞやぶりぃ」
「エドワルド先輩?」
糸目の狐みたいな先輩、魔術科最強と名高きエリスの先輩 エドワルド・ヴァラーハミヒラがいつのまにかエリスの背後を取って微笑んでいる、…全く気配がしなかった…
「おや、驚かないんだねぇ」
「まぁ、今別のことで驚いて最中でしたので」
「カリストの大国征服計画だろう?、僕も驚いたよぉ~ 彼女野心深い性格だと思っていたが、ノーブルズさえも出し抜きこの国の支配権を握ろうとしているなんてねぇ」
随分呑気だ、この人にとっても他人事でも無いだろうに、いや そう思っても表には出さないんだろう、この人は多分そういう人だ、よく知らないけど
「それもこれも君達がノーブルズを刺激したから、君達が大人しく従ってればノーブルズも大人しかったのにねぇ」
「エリス達が現れなくても彼等は一般の生徒を虐げていましたよ」
「そうだねぇ、君達が現れなくてもノーブルズは邪智暴虐の限りを尽くしていたよぉ?、…その支配体制が気に入らないから君達は決起してるんだよねぇ」
「え…ええ」
この人の語り口は気味が悪い、何を考えているか分からないから、まるで暗闇を進むような妙な怖さがある、現にその薄く開かれた糸目はまるでエリスを舐めるかのように見つめている、嫌な人に絡らまれたな
「ふぅん…まぁいいや、僕には関係ないしねぇ…それよりさぁ?、君達責任とってカリストを止めてくれるんだよね?」
「そのつもりです、この事態の責任がエリス達にあるのは変わりませんので」
「ならさぁ…」
ズイ と一つ、エドワルドはエリスに顔を近づけ 糸目をギロリと開き、金の目でエリスを睨み付けると
「一つ 協力してあげようか?」
「協力?…エドワルド先輩が?」
「ああ、と言っても情報提供だけだけどねぇ…」
情報提供…、正直ありがたい けれどどうしてか、この人が言うと悪魔の取引にしか思えない、後から何か とんでもない見返りを要求してきそうな…
「ああ、見返りはいらないよぉ~?、強いて言うならカリストの失脚かなぁ、僕も今肩身が狭くって仕方ないんだぁ、男だからね」
「本当ですか?」
「本当本当、僕嘘ついたことないんだから…で?、受けるの?受けないの?、情報提供」
…信用はあんまり出来ないが、今はカケラでも情報が欲しい、何せカリストはこの国を武器にしようとしているんだ、しかも一週間後 時間も何も無い
「分かりました、お願いできますか?」
「おーぅけぇ~?、…いいかい?よく聞きなさい?カリストの保有戦力さ、彼女の戦力は学園の剣術科や魔術科だけじゃない、学園外の冒険者…しかも対紛争専門の女冒険者も自らの手駒にしているんだ」
対紛争専門冒険者、その名にはエリスも覚えがあった
それはアルクカースで出会った三羽烏…、最初見たときは間抜けだと思ったが 思えば彼らは凄まじく強かった、何せあのアルクカースで戦力として数えられるくらいの人間なんだから
不意を打ってエリスも倒せたが、逆に不意を突かれていたら分からない…そんな奴らを軍隊のように揃えているなら、ちょっとまずいかもしれない
「カリストは…この国を支配しようとしているんですか?、そんな軍隊を作って」
「あんな物騒な人間引き入れておいてパジャマパーティつもりでしたはないだろうねぇ」
だろうねー?エリスもそう思いますよ、…この一件 もしかしたらエリスが思ってるよりも恐ろしい話なのかもしれないな、エリス達とノーブルズ その対立構造さえ凌駕するほどの…
「ありがとうございます、エドワルド先輩」
「いやいや、いいんだよぉ~可愛い後輩のためだからねぇ、そうだ 序でにカリストのアジトの場所も教えよう、ほら…これ」
というとエドワルド先輩は生徒手帳の地図を破り、エリスに渡してくる…学園の一角に 赤く丸をつけられた部分がある、おそらくここがカリストのアジトか
……うん?、この地図少しおかしくないか?、エリスの記憶を頼りに思い出すが、うん この地図変だ…、まさか偽の情報じゃ…これは鵜呑みにしない方が良さそうだな
「何から何まで…」
「いいっていいって、これで僕のこと少しは信頼してくれたかな?…」
そういうこと言われると余計信用しづらい…、でもエドワルド先輩から受けたこの情報はエリス達では調べようもない情報、それを教えてくれた彼には恩がある、信用しよう
「はい、信用します」
「なっははははは、そうかいそうかい…君は可愛いねぇ」
「エドワルド先輩!」
すると、エリスとエドワルド先輩の話を遮るように声がする、第三者の声だ…しかも聞き覚えのある、最近聞かない声…
「おやおや、どうしたんだいアレクセイ君 そんなに慌てて」
「アレクセイさん?」
アレクセイさんだ、最近見かけない彼が何やら慌てて駆けてくるんだ、どうしたんだろう というか、授業中もあんまり関わってこないから、最近話す機会が滅法減って…エドワルド先輩と知り合いなのか?
「ああ、エリス君…ごめんね?エドワルド先輩に変なことされてない?」
「いえ、大丈夫ですけど…アレクセイ エドワルド先輩と知り合いなんですか?」
「ああ、この間言った知り合いっていうのはこの人のことだよ、学園に来なくなった僕を心配してくれて、それでね」
そうか、アレクセイさんの友達とはエドワルド先輩のことだったのか、確かに学園の中でも有数の実力者であるエドワルド先輩についていれば彼も心配はないだろう、それに魔術師マニアである彼にとってエドワルド先輩は垂涎ものの相手であることだろう
しかし、この胡散臭い人が他人の心配とは、エリスが思ってるよりもいい人なのか?この人
「そうだったんですね…」
「うん、それよりエドワルド先輩!今日は僕と用事があるって言ったじゃないですか!、今カリストの親衛隊がうろついてて、僕一人じゃ身動き取れないんですよ」
「ああ、忘れてたよ ごめんねぇアレクセイ君、じゃあ行こうか、可愛い後輩を待たせるのは良くないからねぇ、それじゃ エリス君?健闘を祈るよぉ~?」
アレクセイさんに責められ、エドワルド先輩は笑い いつものように軽く帽子をあげてエリスに別れを告げる、本当に知り合い…いや友達なんだ、あの二人
…なんか、妬けてしまうな エリスとアレクセイさんが友達でなくなった訳じゃあないけどさ、アレクセイさんはエリスよりも親しい友達を見つけたんだな、まぁ エリスでは彼を守れないから…いいんだけどさ、それでも…ねぇ?
「…帰りますか、この情報をみんなに共有しないと」
立ち去る二人の背中を見て、エリスはエドワルド先輩からもらった地図を握り締め 帰路につく、今はカリストだ 一週間後の収穫祭までに何か手を考えないと、もうカウンターも何も言ってる場合じゃない
………………………………………………………………
「男子は出て行け!、これはカリスト様からの命令だ!」
「ひぃぃ!、な なんなんだよ!お前らぁっ!」
カリスト親衛隊により追い払われる男子生徒、その無様な逃げ腰を見て笑うカリスト親衛隊…、見ていて胸糞が悪い 生徒達には貴賎も上も下もないはずだろう、これがカリストの手で引き起こされているなら、やはり我等が止めなければ
そんな様を見ながらメルクリウスは目を細める、この学園に来てからというもの ノーブルズ達の悪逆は目に余る、デルセクトでもあの手の貴族はいるが…それでもまだ大人しい、何故か?
律する上の人間がいるからだ、上が目を光らせるから王族も貴族も好き勝手出来ない…、だがこの学園にはそういう人間がいない、律する筈のイオも教師もこの暴虐を無視している だからこの暴走はエスカレートする、どこかで誰かがブレーキをかけないと これはもっと酷くなる
だから我等は戦うのだ、力なき民の為に…
「しかし、どう止めたものか…何か良い手があれば良いのだが」
止めようにも 力では止められない、今のところ内の司令塔であるラグナが必死に手を考えてはいるが、その間にもこうして被害者が生まれている、何か すぐにでも打てる手は…
「…私一人が勝手に暴走するわけにはいかんな、とりあえず今日のところは帰るか」
メルクリウスは一人ため息をつく、学園の廊下を歩く…今日はラグナが料理番だったな、あんまり待たせるのも可哀想だ 、情報共有も兼ねて今日は退散する
そう、踵を返した瞬間…目に入る、人の壁…最近見慣れたカリスト親衛隊が大挙してこちらに向かって歩いてくる、通り抜ける事が出来ない程の大群…それが廊下を占領しているのだ
「…迷惑な、大勢で歩くなら一列に並べ」
あんな大勢で横並びに歩いたら廊下を渡れないだろう、いくら放課後で人がいないからって そのくらいのマナーは守ってほしいものだが、…仕方ない 引き返して別の道を渡るか…
「あら、もう帰っちゃうの?」
「ッッー!?」
突如 耳に息を吹きかけられ、気味の悪い感触に飛び退く、何者か!
「もう、そんなに拒絶しないでよ」
「カリスト…!」
カリストだ、それが私の背後を取り もう と身をくねらせている、…カリストの背後には同じく親衛隊の壁、前も後ろも親衛隊に囲まれた…逃げ場がない
「どういうつもりだ?、貴様の配下で周りを囲んで…私はこれから家に帰るんだ、道を開けてくれ」
「ああそうなの?じゃあどうぞ…って、帰すわけないでしょ?用があるからこうして現れたわけだし」
だろくな、でなけれなこの人数を集めて私を包囲したりはしない、つまり 仕掛けてきた…ということか、私が一人であることを見計らって…
ナメられたものだ、この程度の人数…敵でもない、そう目を鋭く尖らせ 手に魔力を集め、錬金術の用意をする…何をしてきてもいいように
「言っておくが、襲ってくるなら容赦はせんぞ」
「あらこわぁい、貴方の強さは知ってるわ?祖国じゃあ犯罪組織相手に大立ち回りした猛者ですものね、私の子猫ちゃんをどれだけ集めても…貴方には敵わない、そんなこと分かってるわよ」
「なら大人しく道を開けろ…手加減はするが、怪我をさせない保証はない」
「…ふふふ、メルクリウス 貴方本当に美人ね、美しいわ 貴方ほど美しい子は、ウチの子猫ちゃんにもいない、学園随一の美貌…、たまらないわ」
ペロリ と舌なめずりをするカリストのその仕草に、思わず胸が高鳴るのを感じる、…こいつは はっきり言えば絶世の美女と言ってもいい、傾国さえなし得る美貌明眸 それがキラリと輝きを持ちながら笑うのだ
他の女子生徒もうっとりと頬を赤く染める、その気持ちも分からないでもない…こうして敵対していなければ、私もその美貌を褒め称えていたところだ
だが、こいつはあの学園の災禍を作り出した張本人であり、エリスを虐げたノーブルズの一員、気を許すわけにはいかない
「…そこを退け、カリスト」
「そう言わないで、仲良くしましょう?メルク…私は貴方と仲良くなりたいの、貴方は汚らわしい男とは違う、特別な子…ほら そんな物騒な構えなんて解いて…」
そう…カリストの玉の音のような声が耳を突くと、力が抜ける…魔力が上手く操れない、敵対したこの女を警戒する構えも解け 敵意さえ蕩けていく、マズい…マズいと分かっているのに、心中に生まれた恋慕にも似た気持ちが私を絆していく
ヤバい…私が予想していたよりもこの女は危険だ、に 逃げなくては…
「やめろ…寄るな!」
「ふふふ、そんな言って でも…心じゃあ私を求めてる、素直になりましょうメルク、ねぇ?」
「う…ぁ…!」
抱き寄せられる カリストに、抵抗が出来ない 押し退けようとしても、手が上手く動かないどころか寧ろ抱き寄せるカリストの腰を取ってしまう…、その美しい顔が 私のすぐ側に…妖しく輝くその目が…私の目を見て…あ…あぁ
「ほら、素直になって…貴方も私の子猫ちゃんになりなさい…ほら」
「や…やめ…ろ…」
カリストの目がより一層強く輝く、光は私の目を通じて 奥深くに入り込み、心に突き刺さる、突き刺さったそれはじわじわと私を満たして 溶かして…私が、私が私で無くなる…
恐ろしいのに…こんなにも恐ろしいのに、なんて…満たされて…
「貴方はもう…、私には逆らえない…、私の親衛隊に加えてあげるわ、貴方の手で アイツらを潰しなさい…」
「カリスト…さ…ま……」
耳元で囁かれる言葉は、まるで引かれる幕…私の視界を遮り 意識を掴み…
私は…私は…カリスト…様の、…カリスト様の………
「ふふふ、まず…一人目…」
カリストは手を離し、目の前で蕩ける一人の女を見てほくそ笑む、逆らうなんて最初からさせない、この子には舞台に上がってもらう、私の忠実な手駒として…ね?
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