チョコレート・ハウス

猫又

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みどりちゃん2

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 美里は気の弱い人間だったので、本気で心配して、本気で自分が悪かったと思っていた。
 だから待ち伏せされていじめられても、黙ってうつむいていただけだった。
 夕暮れのトンネルの中、いつも酸っぱいような臭いのするみどりちゃんが真っ黒な手で美里の髪の毛を引っ張るのも、破れた運動靴で美里の足を蹴るのも黙って耐えていた。
 ただ、「犬のうんこ食べろ」と言われ、木の枝にささった糞を差しだされた時だけは頭がかっとなって何も分からなくなった。
 その枝を奪い取って、みどりちゃんの目に突き刺すのに三十秒もかからなかっただろう。
 みどりちゃんは美里をいじめるのに一人を選んだ。悪ガキみんなにいじめの楽しみを提供する場合もあったが、美里の時はひとりでいじめを堪能した。そんな時だけは手下をだれも連れてこない。最初から最後まで心ゆくまでゆっくりと美里をいじめるのだ。
 目を突き刺すとみどりちゃんは絶叫をあげたが、誰も駆けつけなかった。
 そこはいつもみどりちゃんが美里をいじめるのに使っていたさびれた神社のお堂の裏だったからだ。美里はみどりちゃんの体を突き飛ばして転ばせた。みどりちゃんは泣きながら目を押さえていた。木の枝の威力に驚いた美里がそれを取り除いてやると、つぶれてへしゃげた目玉が半分出てきた。このままにしておいたらもっと酷いことになる、と美里は思った。
 これを理由にまた明日からいじめられるという事実だ。
 なので蹲っているみどりちゃんの後頭部を石で何度も殴打した。
 みどりちゃんの小さい頭はこなごなになり、意外と簡単に割れるんだなと思った。
 白い骨がちらっと見えたが、汚い茶色いものがどろっと出てきたのでやめた。服が汚れると怒られると思った。
 うつぶせに倒れているみどりちゃんのスカートをめくってパンツをずらしておいてから、美里は家に帰った。糞のついた枝は捨てたが石は持って帰って、勉強机に飾った。
 みどりちゃんはすぐに発見された。 
 みどりちゃんが住む地域には朝から晩まで酒屋の店先で飲んだくれているおっさんや、赤茶けたパーマをだらしなくかきむしりながら大勢いる子供をしかりつける母親達がたくさんいた。働いてない両親を持つ子供がたくさんいて、年中お腹をすかせては同級生にたかるか、隣町の店先から盗みを繰り返していた。そんな地域だから大人でも子供でも不審者や浮浪者は大勢いた。地域の中、全員がアリバイなどないに等しく、結局、みどりちゃんを殺したのは変質者という事になったが、誰も逮捕者は出なかった。
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