わけあり乙女と純情山賊

猫又

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友の死

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 リリカはまたため息をついた。城に入ったものの、まだスリーキングの一人、キングゴードンの顔さえ見ていないのだ。第一台所から出る暇がない。毎日の兵隊達との戦いで剣は自分の手に合うようになってきた。技量も上がったと思う。だが……
「あーあ、何やってるんだろう。こんな事ならガイツのとこにいたらよかったな」
「ガイツって誰? もしかして、リリカの好きな人?」
 サーラがするどく突っ込んだ。
「へ? うーん、どうかな。そうね、好きな人かな。生まれて初めて親切にしてくれた人よ」
「へえ。どんな人?」
「どんなって、とっても強くて格好いい人……かな」
「照れてる」
「何言ってんの!」
 二人の娘はきゃっきゃと笑い合った。

 次の日、リリカが寝ぼけ眼で台所にやってくると、女達が輪になって集まっていた。
「どうしたの?」
「リリカ、あんたの友達……死んだわよ」
 女達の中でリーダー格の女が言った。
「死んだ?」
 リリカは慌てて輪の中を覗きこんだ。
「サーラ!」
 床にサーラが倒れていた。顔は醜くはれあがり、衣服は乱れて、身体中に傷やアザがある。
 そして、サーラの首に締められた跡があった。
「サーラ! だ、誰がこんな事を!」
「分からないわ……でも、随分と抵抗したんじゃないかしら……だから」
「……ひどい……サーラ……」
 リリカはサーラの死体にすがりついて泣いた。
「許さない……絶対に許さないから!」
 
 ある日、一人の兵隊がリリカに言い寄ってきた。
 リリカはその男に聞いた。
「サーラを殺した奴を知ってる?」
「ああ知ってるとも」
「教えて」
 男はしばらく考えていたが、
「いいとも、だが、ただじゃ駄目だな」
「いいわ。教えてくれたら、あんたの女になってあげる」
 リリカはその男に色気のある瞳で言った。
「本当だな?」
「本当よ。でも教えてくれたら、よ」
「いいだろう。だが、そいつを知ってどうするつもりだ?」
「そんな事はあんたに関係ないわ」
「そりゃ、そうだ。いいか、聞いて驚くなよ。あの娘を殺したのは……お頭さあ」
「……お頭って……」
「キングゴードンのお頭さ。たまたま居合わせた奴の話じゃ、お頭はちょっとアレでね。生娘がお好みで、またやり方が残虐なのさ……あの娘も、酷いもんだったらしいぜ」
 男はひゃっひゃっと笑った。
 キングゴードンが! サーラまでも手にかけたのだ。居合わせたのが自分だったら!
 リリカは唇をかみ締めた。
「よお、教えてやったんだからよ」
 男がリリカの肩に手を回した。
「いいわ、でも、あたし、外でやるのが好みなの。裏庭へ行きましょうよ」
 リリカはふふふと笑って男を誘い出した。
 間抜けな顔で男がリリカについてくる。
 リリカは人影のない裏庭の木陰で、男を切り捨てた。
 男はぎゃっと小さく叫んだが、やがて息絶えた。
 リリカは顔色も変えずに剣の血のりを拭くと、死体をそのままにして去った。
 兵隊同士のいざこざは日常茶飯事である。喧嘩から殺し合いになり、死体が転がっている事も珍しくないのだ。
「サーラ、あんたの敵は必ず取るからね……」
 だが、ギングゴードンを必ず殺す、と思い詰めていたリリカに信じられない噂が耳に入った。
 キングゴードンは城にはいない。
「そんな……」
 噂では軍隊にいる事に飽きたキングゴードンが部下を連れて出奔したというのである。
 元々、ガイツからの追跡を逃れようとしたキングゴードンの計略だったらしい。
 リリカにそれを語った女は幹部の女となっていた者で、彼女もこの後、キングゴードンを追う為にここから出ると言った。
「どうして?」
「城の下働きなんて性に合ってないのさ。ここで男に抱かれてりゃ、金になったから我慢してたんだけどね」
「追いかけるの?」
「そうするつもりさ。こうなって気がついたけど、結構マジで惚れてたんだよ」
 女は笑ってリリカに別れを告げた。
 そして、リリカもまた城を出た。半年も働いて、敵の顔さえ見ていない。サーラの敵もまだだった。リリカは自分のふがいなさを悔やんだ。だが、いい点もあった。
 キングゴードンの今の勢力は弱い。スリーキングと名乗っていたころの三分の一の手勢しかいないのだ。人数にして、五十人くらいのものだろうか。
「今度こそ!」
 リリカは街娘の衣装を脱ぎ捨てた。半年で貯めた金で馬を買い戻す。
 全財産を馬の背に乗せて、リリカはまた旅に出た。
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