妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter2(蒼空編)

Chapter2-④【WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~】

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「そうか、土曜日から一泊がいいんだな。
分かった、その日程で手配しておく。
で、行ってみたい場所はないのか?」
結局、店では言えず、帰りのタクシーの中で伝えた。
「出来たら草津へ行きたいんだけど。
この間、テレビで湯もみを見て、やってみたいんだ。」
殊更、明るく振る舞う。
「草津なら、当てがある。
良い部屋が取れると思う。
期待していいぞ。」
「ありがとう…。」
本当は異動の事を聞きたいが、良心がそれを拒んだ。
『俺はこの先も、ずっとヒロムといたいんだ!』
 
「疲れた。」
これが草津旅行の正直な感想だ。
夕方に待ち合わせをして、旅館に着いたのは八時を過ぎていた。
事故渋滞に填まってしまったからだ。
部屋に入ると、既に食事の用意はされていた。
ヒロムとの泊まりは久し振りだ。
注がれたビールに少しだけ口を付ける。
暴れる股間を宥めながら、アルコールは控えた。
浴衣から覗く筋肉に無駄は一切ない。
付き合っているが、触れる事に躊躇いを覚える。
気高い肉体は眩し過ぎた。
淫らな行為を相容れない気がしたのだ。
ヒロムからのアクションを待つ。
いつもそうだ。
空になったコップにビールを注ぐ。
こちらから動くのはビール瓶を持つときだけだ。
赤く染まった筋肉が動くのをひたすら待った。
 
掌の中で射精する。
たかだか五分程度の行為だ。
「さあ、シャワー浴びてきちゃえよ。」
手を洗いにヒロムが立ち上がった。
部屋にあるかけ流しの風呂に目を向ける。
当然、二人で入ると思っていた。
『明日の朝に期待するか。』
 
「悪い、仕事の連絡が入った。
昼から出社しないとならないんだ。
社員が不祥事を起こしたらしい。
至急、メディア対策を講じる必要がありそうなんだ。
マジごめんな。
ヒュウガは残ってもいいけど、どうする?」
「一緒に帰るよ。
ここに独りでいても、する事ないし。
途中の駅で降ろして。」
独りで行くには湯もみはハードルが高過ぎた。
 
「じゃあ、仕事頑張って。」
ロータリーで別れを告げ、空を見上げる。
予定のなくなった休日に思い付く事は一つしかない。
しかしトレーニングウェアは持ってこなかった。
下着程度で筋トレ出来る所へ向かうしかなさそうだ。
『パンプアップした胸筋は旨そうだ。』
吹き込んだ風が耳元で囁いた。
 
食事を済ませ、人通りを逆行する。
陽は大分傾いたが、まだ充分に明るい。
すれ違う人の顔がはっきりと認識出来た。
発展場へ入るタイミングを計る。
堂々としてれば良さそうなものだが、どうしても気が引けてしまう。
先月、ソラと来たばかりだ。
そして明日も来る。
こんな面倒な思いをする位ならと、宿泊する事を思い立つ。
「宿泊したいのですが。」
「タイプAが空いてます。
宜しいですか?」
料金表を見ると、ダブルベッドの部屋だ。
独りで泊まるのだから、一番安いCの部屋が良かった。
二倍違う料金に気持ちが揺らぐ。
「他の部屋は?」
「連休なので、BとCは埋まっています。」
草津の宿泊代はヒロムが持ってくれた。
『どうせ浮いた金だ。』
無駄遣いを咎める自分に言い聞かせる。
「なら…、宿泊なしの料金でお願いします。」
染み付いた貧乏性が逆の答えを口から吐かせた。
 
(つづく)
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